傘は要らない
曇天には俺が出しそびれた悲鳴が充満していた、古いダウン・ブルースのリズムで年老いた魚の...
なにかが寝床にやって来る
無数の甲虫が這いずり回り鋭い牙をカスタネットのように鳴らしながら俺の皮膚を食い破り体内に侵入する、乱雑に食い荒らすせいで俺はまるで使い込まれて捨てられたズタ袋のように大小様々な無数...
These are better days.
振動を伴う、低い響き、脳髄の共振が、俺の体温をおかしくする、すべてを投げ出して横たわる...
寝苦しい夜は牙を研ぐのに向いている
狂った夜は俺を、悪夢に誘おうとする、俺は唇を嚙んで、流れた血の味で正気を取り戻す、出口...
印に縛られて動けなくなっちゃったりしても駄目
強奪者の化石を壁に張り付けたあとはエアガンで気の済むまで撃った、もっともそこそこ値の張...
風が俺を撫でようとするときに友達と居てしまっては
狂った時計はそのままに、どうせ完璧な時間など無い、賞味期限の切れたレトルトを平らげて、終わりかけている繁華街へ繰り出す、夜に少し雨が降って、アーケードは埃臭い臭いがする、自転車の数...
その腹にはいったいどんな言葉が記されているのだろう
高波にさらわれた昨日までの俺が海のどこかで腐乱している、上空に見えた幻の飛行船の横っ腹...
路地に滲む夢
昨日誰かと電話で話した気がするけどそれが誰だったかなんてもう思い出せない、たぶん身内の死に関することだった気がする、台風が通り過ぎて夏が少し項垂れた午後、歯医者の椅子に横たわりポカ...
いつのまにか滲んだ血でさえ流したあとには忘れている
捻れながら転がり落ち、原形を留めぬほどになった今日の自我を、洗面台で沿った髭と一緒に水...
腹を決めろよ、もしもその先に行きたいのならば
静かに剥げ落ちていく現実はリアルとはまた違う、思想が現実に根差していることはリアリズム...