どんなにかお前が
欲しかったことだろう
虫のように純粋で
あさはかに過ぎたお前
低スペックな夢を見て
安物の玩具を欲しがった
安易さの結果はいつも
手にしたものの壊れ易さにあった
指先はいつも
食べ残したもので濡れていて
時折はもっと
嫌な湿気に汚れることもあった
わけの判らない歌を歌って
あたりの鼓膜に嫌な種を植え
発射しようとしてるみたいに
大きく目を剥いてどこかを見てた
どこにも逃げ出さないように特別に作られた窓から
海のような湖を見下ろし
俺たちには決して知ることの出来ないことがらを
確かにお前は刻み付けていたのだろう
欠損は
早い終わりを意味する
それが欲しいようで欲しくないようで
俺には笑うことも泣くこともままならなかった
目を放した隙に
何かを喉に詰まらせたお前は
異様なほどに静かにこときれていた
あまりに術のない取引に
ふらりと手を染めてしまったんだ
まだあたたかだったのに
もう何も出来なかった
まだその身体は
確かにあたたかだったのに
今度こそ逃げられなくなったね
お前にはこの石は重すぎる
今頃なにを見ているんだい
湿った土の匂いはお前を嬉しくさせるかい
先にそこに逝った誰かの魂は
お前と寛大につきあってくれるかい
俺たちには
あれ以上なんともやりようがなかったんだ
強い風が吹く十月
意思のある牧師はお前の墓石に神の言葉を囁いた
お前があっちで
それを理解出来るような何かを見つけているといいのに
彼の首に掛かるクロスのチェーンが
音も無く風に揺れた
愛しているよ
とても愛している
そんなこと到底
口にする資格は無いって
そんな風に思っていただけなんだ
欲しいものはあるかい
何だって持ってくるよ
この土の上でよければ
手の届かない場所でよければ
湖は
ずっとお前のそばにあるよ
あの時と同じ何かが
ねえ
その目にはまだ見えているのかい
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