石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」会合を開催

2013-09-16 23:00:23 | 活動レポート

少し報告が遅くなりましたが、9月13日(金)に、「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会(通称、中川勉強会)」の会合を開催しました。この勉強会、これまでにも何度かこのブログで紹介をしていますが、電子書籍の流通促進と海賊版対策の強化のために、著作権法上の出版者に対する権利付与のあり方について、多くの関係者の参加を得ながら議論を重ねてきている重要な場となっています。
 

 
この日の勉強会は、今年4月以来の開催となりましたが、この間、この問題に関して文化庁の審議会が検討を開始したり、超党派の国会議員連盟を立ち上げたりするなど、いくつか重要な動きがありました。そして、その文化庁の審議会で、出版者への権利付与のあり方に関する「中間取りめとめ案」が9月5日(木)に論議、確認されたことを受けて、その内容について検討するために集まったのが今回の会合です。

ここで、今一度、なぜこの問題への対応が重要なのかについて、簡単に説明しておきます。

現行の著作権法上、著作者と出版者との契約によって成立する「出版権」制度は、紙媒体の出版物を出版することのみを対象としています。つまり、電子書籍は対象となっていないのです。今のままでは、出版者が電子出版を行うための権利を得て、自ら権利者として主体的に配信事業者(プラットフォーマー)等と契約交渉を行ったり、海賊版に対して権利を行使したりすることができないわけですね。

これがなぜ問題かと言うと、そこに「中抜き」の問題が生じてしまうからです。

私たちユーザー(読者)の側から見ると、印刷された紙の書籍であれ、電子書籍であれ、目にするのは著者の作品の最終形であって、そこに至るまでのプロセスは目に見えません。しかし実際には、私たちが手にする最終形の出版物が出来上がるまでには、出版者(をはじめとする多くの関係者)の多大なる労力と、リスクテイク(売れるか売れないか分からない本を出版するリスク)が関わっているわけです。

著者が書いた(描いた)ものが、そのまま私たちに届くわけではないのですね。

当然、出版者は、そうして市場に流通させた書籍の売り上げで、投資を回収して利益を得て、それによってまた新たな出版物を世に出すわけです。世の中には、数多く売れてたくさん利益が出る本ばかりでなく、あまり数は売れないけれど、少数の読者が待ち望んでいる本もあるわけで、総体として出版者が利益を確保することで、印刷・出版文化が成り立っているのです。つまり、私たち読者(国民)にも大きなメリットがあるわけです。

ところが、今、電子書籍が流通し始めたことで、この仕組みが揺らいできているのです。

具体例で考えてみましょう。出版者は、これまで通り、著者の作品を手間暇かけて完成品に仕上げて、出版物として売り出します。ところが、その出版物がそのまま電子書籍化されて、アマゾンや楽天のようなプラットフォーマーのオンライン書店でも売りに出されたとします。さて、どういうことが起こるでしょうか?

これまでであれば、書店で紙の書籍として売れていたのが10,000冊としましょう。そして例えば、その10%、1,000冊が、あるプラットフォーマーの電子書店で販売されたとしましょうか。そうすると、これまで通りのコストをかけて紙の出版物を制作した出版者の利益は減少して、その出版物の創造(やリスクテイク)には何ら関与しなかったプラットフォーマーは、その出版物の電子版を流通(公衆送信)させただけで、利益を得ることになります。

そして、もし近い将来、その10%が、20%、40%と拡大していったらどうなるでしょうか? その時に、果たして出版者はどうなるでしょう? いや、出版という大切な行為自体がどうなってしまうでしょう?

繰り返しますが、これをユーザーの側から見ると、電子書籍という新たな選択肢の追加と利便性の高まり、そしてそれが料金の低廉化を伴うものであればなおさら、諸手を挙げて歓迎すべき話に聞こえるかも知れません。しかし、そのやり方次第では、「出版者」、ひいては「出版行為」の存続を危うくし、ひいては、書籍文化そのものの発展を阻害することにもなりかねないのです。

そのために、これまで著作権法上で認められていなかった、出版者に対する権利付与のあり方について早急に答えを出し、著作権法の改正を行う必要があるわけです。

と、解説が長くなってしまったので、今日はこの辺りでとどめておきますが、ではどのような形で出版者に権利を付与するかという点については、複雑な利害の絡んだ話で、なかなか簡単に結論が出せるものではありません。だからこそ、この中川勉強会でも1年半かけて検討をしてきましたし、文化庁の審議会でも、半年以上かけて議論を進めているわけです。

この日の中川勉強会でも、出席者からは方向性の異なる意見が出されました。しかし、私個人としては、1つの方向性が導き出せたような手応えを感じています。あとは、最終的な結論をその方向に持って行けるかどうか、ですね。次は、議連の役員会を開催する予定ですが、何とかいい方向で決着できるよう、対応を進めていきたいと思います!