安芸高田市、吉田町の山と空
父がグループホームに入所して、約ひと月が過ぎました。
こんにちは。
常若美人道を提唱しているカラーコンサルタントの琴崎京子でございます。
この記事は、面会に行った時のことを書いています。
全部で3500字くらいあります。。。長くて ごめんなさい。
親の認知症で困っておられる方の なにかの参考になれば幸いです。
面会を断られました
父がどう過ごしているのか心配で、妹と一緒に面会に行くことにしました。
私は介護や看護、老人ホームの事情には まったく疎いのですが、妹はケアマネージャーの仕事をしているので、認知症のことや老人ホームなどの施設のことにも精通しています。
妹はグループホームに、前もって面会の申し出をしたようですが、断られたとのことでした。
それについて、このような不満を口にしていました。
「現在では、コロナがまだ終息していないといっても、広島市内では、ビニールシートを間に挟んだりして、面会は許されるようになった。
それなのに、ここではどうして父に合わせてもらえないのか!?」
グループホーム側の対応が 腑に落ちないようでした。
断られたけど とりあえず、行ってみよう!
私はまだ一度もグループホーム楽々苑に行ったことがないので、たとえ面会が許されなくても スタッフの方にご挨拶に行きたいと思いました。
9月の入所の日は 新型コロナの感染予防のために、付き添いを妹と私の息子に任せたきりでした。
とりあえず、会えなくても行ってみようと、妹を誘って、美土里町まで行ってみることにしました。
美土里町は 安芸高田市から車で約20分くらい走ったところにある、山間の小さな町で、限りなく島根県堺へ近いところです。
なだらかな山に囲まれた、緑が美しい町。
楽々苑は、静かで落ち着いた場所に建てられた コの字型の平屋の建物でした。
建物の入り口まで、ホームのお世話をしてくださっているカワノブさんが出てこられ、そこでお話をしました。
カワノブさんは65歳を過ぎた 小柄な女性です。
しかし、体は筋肉質でがっちりしておられます。
看護師を引退された後、誰かのお役に立てればと思い、グループホームのスタッフになられたそうです。
ステキなのは その声で、まるで女子プロレスラーの北斗晶さんみたいです。
北斗さんを ぐっと縮めた感じで、優しくて、強そうです。
ミニ北斗さんではなくて、カワノブさんが言われることには・・・
面会お断りの 本当の理由
「今日面会できないのは、コロナのせいじゃなくて、あなたのお父さんの 『家に帰りたい病』が発病するかもしれないからです」
「家に帰りたい病が発病したら、そのあとが大変なんですよ。
外に出て歩き回ったり、落ち着かせるために精神安定剤を飲ませることになったり、お父さんも職員も 平静に戻るまでに、すごい労力を使うのですよ。」と言われました。
入所して一ヶ月という時期は 非常に微妙な時期で、入所者は施設に慣れつつあるけど、何か一つのきっかけで、また入所時の状態に逆戻りしてしまうかもしれない可能性をはらんでいるということでした。
さらに、数日前の 父の様子を話してくださいました。
つい先日、雨のひどかった日に、安芸高田市の政治に関するTVのニュースを見て、父がひどく興奮したのだそうです。
古くからの友人である市会議員さんを助けるために、家に帰ると言い張り、誰がなだめても興奮が収まらなかったということです。
安芸高田市では いまだに河合議員の選挙違反に関わった人たちの問題が片付いていません。
雨の中を、家に帰ると言って、ひたすら歩き回る父に カワノブさんは傘をさしかけて、小一時間、いっしょに外を歩いてくださったとのこと。
疲れて足が止まったところで、施設に電話して車で迎えに来てもらったのですよ。という話を聞いて、ただただ頭が下がりました。
「今はまだ会わないで、そっとしておいてほしい。」
その言葉は、カワノブさんの心の底から出た言葉でした。
お会いした直後から ずっと気になっていたのですが、カワノブさんの腕には 生々しい傷がありました。
左腕に えぐられたような跡があるのです。
会話の途切れた間合いで、どうされたのですか?とお聞きしたら、昨日、入所したおばあさんに引っかかれたということでした。
皮膚を破り、身に食い込むような、かなり深い傷でした。
家に帰りたい病にかかっている人は、渾身の力で抵抗されることがあるそうです。
このようなことは、決して珍しいことではないと おっしゃっていました。
腕を引くと、もっと傷が広がるから しばらくそのままにしておいたのよと軽く流しておられましたが、カワノブさんを拝みたいような気持になりました。
私と妹は 家に帰りたいのは父だけだと思い、他の皆さんも同じように帰りたい思いがあることを忘れていました。
私の父だけが特別でなく、グループホームに入所されている人は みんなそれぞれに自分の歴史がありたくさんの思い出を持っておられます。
長年住み慣れた家を離れることは、その思い出を断ち切るということです。
認知症になり、いろいろなことを忘れていくので、なおさら、家の中に残っている思い出に、しがみつきたいのは当然のことでしょう。
しかし、在宅することが難しいから、家族の者たちは、より人間らしい生活ができるように、グループホームに入れていただく決断をしたのです。
切ないことではあるけれど、それを乗り越えて、ホームを安住の地と思えるようにならないと、本人も家族にも心の平和はおとずれません。
絶対に、父に合わせてもらうように頼むと言っていた妹も 面会できない理由に納得したようです。
カワノブさんの 粋な計らい
妹は私と違って お父さん子です。
父とは何かとウマが合い、この数年もしょっちゅう行き来して、病院通いにも付き添っており、父も妹を頼りにしておりました。
その分、妹は思い入れが強くなり、父の心中を考えすぎて、寂しくなってしまうのでしょう。
それを察したカワノブさんの計らいで、父が談話室でくつろいでいる後ろ姿を見せていただきました。
私と妹は 探検隊と化し、談話室に隣接する後ろの部屋の、掃き出し窓からそっと入って、父の様子を伺いました。
テレビを見ている後ろ姿の、頬の辺りが見えました。
見れたのはほんの数秒でしたが、穏やかで、楽しそうな気配が漂っておりました。
美土里町は 標高の高いところにある山間の町なので、気温も低く、冬になると雪が降り積もります。
そうなると外部からは、気軽に行きにくくなります。
一冬かけて 父の家に帰りたい病が収まってくれればよいのですが。
温かくなる頃には、新型コロナも終息し、家族皆で面会し、近くの温泉にでも行けるようになることを祈っております。
88歳の父が、この冬を元気に乗り切れますように。
ではまたね
ごきげんよう
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