白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第12局

2017年02月03日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
今月で、当ブログは開設以来10ヵ月が経過しました。
昨日までに投稿した記事は319本、使った画像は3249枚!
当初はここまで頑張る予定ではなかったのですが、皆様からの反響が予想外に大きく、それが大きなモチベーションになっています。
来場者数も、のべ40万人を超えました。
皆様、本当にありがとうございます。

さて、本日もMasterの棋譜をご紹介します。
題材を考える時間が無い時は、とりあえずMasterネタに走ってしまう今日この頃です。



1図(実戦)
黒は柳秀沆五段(韓国)です。
黒1、3はプロの実戦によく現れる手段ですが、この場合はどうでしょうか。
Aなど、広い所に向かう方が自然に見えます。





2図(実戦)
黒は右下隅を確保し、絶対に死なない強い石になりました。
しかし、元々黒△は堅い構えであり、強い石をさらに強くした結果になっています。
あまり効率が良いとは言えないでしょう。

ここでMasterは、まず白1といつもの手から、白3、5を利かしました。
黒の小ゲイマ締まりは堅い構えであり、そこをさらに固めても惜しくないとみています。
白1、3、5の石は外側にあるので、将来何かしらの役に立ちます。

さて、ここで再び白に手番が回りました。
下辺一帯の白模様が白の最大の財産なので、ここを大事にする手を打つべき場面です。
白Aなど、隅をがっちり固める手も目に付きますが・・・。





3図(実戦)
実戦は、ふんわりと白1!
厚みを囲うなという格言がありますが、模様と厚みは違います。
右下の白は、黒Aの急所やBの打ち込みを狙われており、まだ薄いのです。
薄い白模様を囲う白1は、理に適っています。
打たれてみれば当然の一手ですが、当然の手を毎回逃さずに打つ事は大変なのです。





4図(実戦)
依然として黒1の急所は残っていますが、1手備えた後なら白2で大丈夫とみています。
そして黒5の打ち込みに回られましたが、白6から攻める事ができます。





5図(変化図)
正直に黒1と伸びれば、このような進行になりそうです。
黒が一生懸命逃げている間に、周辺の白地がどんどん増えていきます。
これは黒最悪の展開です。





6図(実戦)
そこで実戦は、黒1以下で捌きを求めました。
黒13までと隅で生きる事ができましたが、白は先手で黒を閉じ込めたので不満が無いでしょう。





7図(実戦)
そして白は、残された大場である上辺へ向かいました。
白7までとなった結果は、地を稼いだだけではなく、自然と黒△が弱くなっています。
黒は6、8と、左辺を広げて対抗する構えですが・・・。





8図(実戦)
白1がいかにもピッタリの踏み込みです。
白AやBで黒を分断する手を狙っていますし、背後に白△があるので、自身の退路は確保できています。
また、戦いになれば、下辺一帯の白が勢力として働いて来ます。
白の優位が目に見えて来ました。





9図(実戦)
その後、こんな局面になりました。
白△と打った所ですが、ここで黒△、黒〇、黒✖と、生きていない集団が3つもあります。
黒は収拾が付かない状況になってしまいました。
Masterは接近戦も正確なのです。

通常、棋士同士の対局は山あり谷ありです。
例え見た目は一方的でも、チャンスはどこかに転がっているものなのです。
しかし、Masterと打つ棋士は、平地と谷しか歩けていないように見えます。
勝ち負けよりも、この点が衝撃的です。