白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第47局

2017年07月07日 20時49分06秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
明日は武蔵小杉の永代塾囲碁サロンにて指導碁を行います。
ご都合の合う方はぜひお越しください。
対局の棋譜をその場でお渡しするサービスも行っています。

さて、本日はMasterと檀嘯七段(中国)の対局をご紹介します。
檀九段は今年国際棋戦の春蘭杯で優勝しています。



1図(テーマ図)
黒1のノゾキ!
Masterの打った手の中でも、1、2を争うぐらい印象的な一手です。
このシリーズでもようやくご紹介することができます。

黒1は白2とつながれて大悪手、というのが大半の棋士の感覚でしょう。
弱点のあった白△2子が強化されたことは、明らかに白にとってプラスです。
それに対して黒1の石は、果たして黒にプラスをもたらしてくれるでしょうか?

過去にも棋士がこのノゾキ打つことはありましたが、それは具体的に役立つ見通しがあってのことです。
実戦の場合、この後強く黒Aとでも打つのであれば、戦いになった時にノゾキが何かしら役に立ちそうな気もしますし、理解はできるのですが・・・。





2図(実戦)
実戦は平凡に黒1、3でした。
白4、6とツケ切って戦いになりましたが、距離が遠いので黒△が戦いに参加しそうには見えません。





3図(実戦)
後に黒1と打った場面です。
黒△を打っておいたことは、結果的にプラスに働いているでしょうか?
黒AやBの手が打ちにくくなっているので、どちらかと言えばマイナスに見えるのですが・・・。





4図(参考図)
左下白の構えに対しては黒1が1つの急所で、好点です。
後に黒Aと根拠を奪う狙いがあるからです。
しかし、もし白Bに石があると、黒Aには白Cとツケられ、ぴったり止まってしまいます。
つまり、テーマ図のノゾキは本図黒1の価値を大幅に下げてしまうのです。

そんなノゾキを打つ理由は、Masterによるシミュレーションでの勝率が高いからです。
では、何故勝率が高くなるのでしょうか?
私の仮説はこうです。

「左上との関係上、黒1やその周辺に黒が打つことになると、勝率が下がりやすい。
ノゾキによってこれらの手が候補手になる可能性が低くなり、結果的に勝率が上がる。」


あくまで私の想像によるものですが、そういうことだと仮定すれば納得はできます。
選択肢を減らしてしまうのは、碁の真理からすれば損でしょう。
しかし、神ならぬ者同士の勝負としてみるとどうでしょうか?

「普通の手を打てば良いのに、変な所が気になって打ってしまった」
「選択肢が多過ぎ、迷った挙句悪手を打ってしまった」
こういったことは、多くの方が経験されているでしょう。
そして、AIでも同様の現象が起こり得るのではないでしょうか?

私の仮説が正しいかどうかはさておき・・・。
テーマ図のノゾキは、皆様にはおすすめしません。