白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第48局

2017年07月10日 23時29分52秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
やさしく語る 布石の原則」初校ゲラのチェックはなんとか終わりました。
しかし、完璧にチェックしたつもりでも、誤植は必ず残ります。
恐ろしいですね。

さて、本日はMasterと朴廷桓九段の対局です。
朴九段は、これが最多となる5回目の対局でしたが、残念ながら一矢報いる事はできませんでした。



1図(テーマ図)
朴九段の黒番、黒△と開いた場面です。
ここで多くのプロの選択は、白A周辺か、白B周辺でしょう。
しかし、この局面はどこかで見たような・・・?





2図(実戦)
出ました、白1~5!
第22局と同一局面でしたが、やはり同じ打ち方をしましたね。
しかし、本因坊道策先生に敬意を表し、これはMaster流とは呼ばないことにします(笑)。

さて、陳耀燁九段は白Aとハネましたが、その結果は今一つとみたのでしょう。
実戦は・・・。





3図(実戦)
黒1の方にハネて行きました。
すると白2、4と利きを作っておいて、白6と押さえました。
黒Aと切ると白Bで両当たりなので、黒はすぐに切ることができません。
上手いものです。





4図(実戦)
もちろん、朴九段もこの進行は想定していたでしょう。
黒1と伸び、白2を待ってから黒3の切り!

しかし、白4とハネられて、
黒△は空き三角の上にダメ詰まりです。
およそ碁の形の中で最悪の部類と言って良いでしょう(笑)。
黒は潰れても文句が言えない状況にも見えますが、黒Aと下がって戦えると言っています。
事前に研究していたのでしょうね。





5図(実戦)
際どい戦いを経て、白△と抱えたところで一段落です。
この結果白〇はほぼ取られた形になりましたが、その代わり白は左上隅で生き、左辺にも展開することになりました。
左上黒が絶対に死なない強大な厚みになったことは黒にとって大きなプラスで、良い勝負に見えます。

しかし、黒は厚みの活用法が難しいのです。
左上や右上の白は生きていますし、左下や右下の白もよほどのことが無い限り攻めは狙えそうにありません。
一番弱いのは左辺白ですが、左下黒とどちらが弱いのか分かりません。

となると、上辺の模様化を広げるしかありませんが、左辺を白に割られているため、あまり大きくなりそうにありません。
黒にとってぴったりした手が無い状況になっていますが、こうなるとコミの負担がのしかかります。
どうやら、既にMasterにしてやられている感もあります。
とはいえ、実際に打ってみなければ分からないのが人間ですが・・・。

Masterは分かってしまうのですね
格好良い手は出ましたが、それ自体よりも判断力の方が驚異的です。