雑談ですが、新潟市でやっているサーカスを見てきた。
---
それは木下大サーカス。
数年前にも新潟市に来た時に、川上は見に行ったことがある。
華麗なる独身時代だ。と言っても、一人で行ったのだが。
きょうはそれ以来で軽く8年から7年ぶりくらいだろうか。
「世界3大サーカスの一つ」だと、場内アナウンスのお姉さんが
言っていた。しかし、他の二つは一体どこなんだ!?
キグレとボリショイ?いや、NHKで年末にはもっと
派手なサーカスの番組をやってたりするが。
---
サーカスというと綱渡りなどのアクロバティックな数々の演技と、
ライオンなどの猛獣ショー、空中ブランコなどが思い浮かぶ。
もう一つ、最近は安田大サーカス。これはちょっと違うか。
この木下大サーカスでもやはりこれらの技が次々と繰り広げ
られて、圧倒された。「すっげーなぁ…」「ふわーすごい」と
何度あっぽん口を開いたまま拍手をしていたことか。
しかし、今回最大の発見だったのは、華麗に軽々と繰り広げ
られているかのごとく思われていたこれらの芸や演技は、
実はぎりぎりの線で命がけで行われているということ。
文字通り、決死のチャレンジなのだ。
---
綱渡りの女の人。文字通りの「綱渡り」なチャレンジを
していて、現に難しい技の時には1回転落した。
否、2回転落した。
綱の高さは地上2mほどかも知れないが、一歩間違えれば
これだって大怪我につなが。大怪我をすれば、サーカス人と
しての生命を絶たれかねない。
足や腹の筋肉はプルプルして、ぎりぎりのバランスを保って
いる。そして、顔の表情も完全にぎりぎり。バランスを
取るために持っている素敵な日傘の柄も折れそうなほど
力が入っている。
転落した時の表情が薄いピンクの傘の布越しに見えた。
「ふぅっ!」と口をとがらせて、明らかに自分に対して
苛立っている。こわい。
---
華麗に動物を操る猛獣ショー。ライオンやトラなどの
肉食の猛獣が、鞭さばき一つでイヌやネコのように
後ろ足で立つ「ちんちん」のポーズ。すっかり調教師の
思い通りに動いている。
…と思っていたが、これも違った。
調教師達は男女二人の外国人だった。男の人はブルース・
ウィリスそっくりで、女の人は「フランスのなんとか地方」
で生まれ育ったと紹介されていた。それは女の人は
フランス人らしくきれいだし、「へーそうなんだ…」とは
思うが、このライオン達を前にした状況で、「何地方」とか
関係あるのか?と不思議に思う。
で、彼らが2本の鞭で動物を操るのだが、1本は長い杖。
ステッキと言ってもいい。もう一つは長いロープが先端に
ついた棒。いわゆる鞭だろうか。
ライオン達が「ちんちん」のようなポーズをするのは、
この2種類の鞭の内、長いロープがついた方を頭上で
グルグル回される時。
ネコ科の動物ゆえか?動くものは気になるらしく、それが
素早く頭の上を旋回しているために、イライラするから、
威嚇するためにおそらく「ガオーッ!なにすんじゃこらー!」
って勢いで立ち上がっているのだろう。
実際、ライオンはちんちんをしている時は、すべて
例外なく口を開き「ガオー!!ガー!!」などと、怒って
吠えていたようだった。
結果、さすがの百獣の王ライオンも、調教師の鞭の前では、
まったく牙をむくことなど出来ないのだった。
「ちんちん」やトラの頭を飛び越すジャンプなどをしたあとに
小さな銀色の踏み台の上に、そそくさと戻る百獣の王の姿は
どこかもの悲しいのだが、全体的にライオンは怒りっぱなしの
雰囲気だった。
これに対してトラは、「まぁ、俺たちはそんなに怒っちゃいないけど、
でも、隙があれば俺も食っちゃうかもね」的な静かな怒りを
沸々と漂わせているのだ。
調教師は、かつて川上が見に行った時は、ライオンと
真剣勝負をして戦っていたのを覚えている。色の白いはずの
外国人の調教師が顔を真っ赤にして、ステッキの方の鞭で
ライオンの口をガンガンこれで突っついて黙らせていた。
もはや華麗な動物さばきどころではなく、ライオン対
おじさんのショーだった。
すでに20代後半だった川上でも、
「あの人が食べられちゃったらどうするんだ?!」
「他にライオンを手なづけられる人いるんだろうな?!おい!」
と、かなり真剣に不安を感じたのを覚えている。
---
一本の細長い板を二人の男が肩で支えて、その板の上で
女性がジャンプして2回転?宙返りなどをするアクロバット。
男達の肩に乗った板の上で女性が軽々とジャンプする様は、
まるでトランポリンの様だが、板の幅は15cmほど。
着地するにもいちいち平均台みたいな幅に飛び降りるのだ。
ついに大技の3回転?宙返りをした時に、細い方の男が
肩から板を落としてしまった。女性の着地の激しい衝撃に
絶えかねたのだろう。
女性は、一瞬顔をしかめ、細い方の男になにやら言って、
再びの挑戦。「ダメ出し」だったのか?
「今度は成功してくれよ。また気まずいところ見たくないし…」
という妙な一体感のような空気が会場全体を覆っていた。
すると、今度はみごとに大成功。
成功した時の表情は、これ以上ないというくらい輝いているのだ。
---
なんてすごい商売だろう。常に自分の限界と背中合わせに仕事を
しているのだ。それも、限界を超えてしまったら、死や大怪我が
隣り合わせというとんでもない商売だ。
ちょっと身の軽い子はよく「サーカス入ればいい」とか、一輪車に
乗れるようになった子に「木下大サーカス入るか!?」などと
冗談で言っていたが、サーカスは冗談やなんかではとても出来ない。
アクロバットや空中ブランコの人達も、皆オリンピック選手の
ような見事な体型で、腕の力も筋力もきっと体操選手並か、
それ以上のものなのだろう。いや、オリンピック選手で
サーカスに転向する人もいると妻が言っていたが、本当に
そうなのだろうか。でも、なんでそんなの知ってるの?
いや、それはともかく。まぁ、そのくらいのレベルじゃないと
とてもではないが無理だろう。
そして、それくらいの人達をしても、尚かつ、筋肉プルプルで
ギリギリの線まで努力しないと人々の喝采を浴びることは
出来ないのが、サーカスなのだ。
点数もつかないし、メダルもないし、栄誉も与えられないが、
技と力の限界に挑戦し続けるというのがサーカスだと知った。
---
そして、またもう一つ驚いたのは、見事に計算されて、
演出されたステージの構成。
子どものころから大好きだったピエロのショーというものが、
実は、場面転換・道具の出し入れのためのつなぎのショーだと
いうのは、つい最近知ったのだが、これも素晴らしい。
ステージそのものは暗転しておいて、大きな道具を入れ替えて、
作業が進む。その作業からお客さんの目をそらすように、
ピエロは客席で、通路で、楽しいショーを演じている。
当たり前だと思います?当たり前かも知れないけど、
待つっていうのは人間結構苦痛なもの。でも、その待つ時間を
そのまま楽しい時間に変えてしまっているのだから、逆転の
発想というか、逆転ではないか?ともかくうまいのだ。
この発想とテクニックは、どこかで使えるかもと、仕事がらみで
すぐ考えてしまった。
まぁ、無理か。
---
思いがけずサーカスの賛美のような文になってしまったが、
もうちょっと面白く書くつもりだったのです。
要するに、意外とギリギリの線で頑張ってるのね!っていうこと。
サーカスっていうと、余裕の演技を忍者のようにやってるんじゃ
ないかって思われるけど、思いっきりそれは間違いで、どの演技も
ギリギリのチャレンジで行われているってこと。
リアルなもの、生なもの、一次的な情報に触れたことのない
子ども達にはもちろん、大人達にもおすすめです。
ビデオやテレビや、人の話や、映画や漫画ではない、
ことによれば息づかいや、汗・体温・振動さえも感じられる
近い距離で、生身の人間が、真剣勝負で体を張って、文字通り
「命がけ」の演技をする姿ってのも、一度は見てみても
損はないかと思います。サーカスで、命がけでなにかをする
人達の凄みを感じるのもいい社会勉強だと思ったのでした。
まだ見ていない人は、ぜひおすすめなので、行ってみて
ください。ただし、ひどく混雑するので、覚悟がいります。
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ガンバロウ長岡!!!
ガンバロウ育英!!!
by 川上
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それは木下大サーカス。
数年前にも新潟市に来た時に、川上は見に行ったことがある。
華麗なる独身時代だ。と言っても、一人で行ったのだが。
きょうはそれ以来で軽く8年から7年ぶりくらいだろうか。
「世界3大サーカスの一つ」だと、場内アナウンスのお姉さんが
言っていた。しかし、他の二つは一体どこなんだ!?
キグレとボリショイ?いや、NHKで年末にはもっと
派手なサーカスの番組をやってたりするが。
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サーカスというと綱渡りなどのアクロバティックな数々の演技と、
ライオンなどの猛獣ショー、空中ブランコなどが思い浮かぶ。
もう一つ、最近は安田大サーカス。これはちょっと違うか。
この木下大サーカスでもやはりこれらの技が次々と繰り広げ
られて、圧倒された。「すっげーなぁ…」「ふわーすごい」と
何度あっぽん口を開いたまま拍手をしていたことか。
しかし、今回最大の発見だったのは、華麗に軽々と繰り広げ
られているかのごとく思われていたこれらの芸や演技は、
実はぎりぎりの線で命がけで行われているということ。
文字通り、決死のチャレンジなのだ。
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綱渡りの女の人。文字通りの「綱渡り」なチャレンジを
していて、現に難しい技の時には1回転落した。
否、2回転落した。
綱の高さは地上2mほどかも知れないが、一歩間違えれば
これだって大怪我につなが。大怪我をすれば、サーカス人と
しての生命を絶たれかねない。
足や腹の筋肉はプルプルして、ぎりぎりのバランスを保って
いる。そして、顔の表情も完全にぎりぎり。バランスを
取るために持っている素敵な日傘の柄も折れそうなほど
力が入っている。
転落した時の表情が薄いピンクの傘の布越しに見えた。
「ふぅっ!」と口をとがらせて、明らかに自分に対して
苛立っている。こわい。
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華麗に動物を操る猛獣ショー。ライオンやトラなどの
肉食の猛獣が、鞭さばき一つでイヌやネコのように
後ろ足で立つ「ちんちん」のポーズ。すっかり調教師の
思い通りに動いている。
…と思っていたが、これも違った。
調教師達は男女二人の外国人だった。男の人はブルース・
ウィリスそっくりで、女の人は「フランスのなんとか地方」
で生まれ育ったと紹介されていた。それは女の人は
フランス人らしくきれいだし、「へーそうなんだ…」とは
思うが、このライオン達を前にした状況で、「何地方」とか
関係あるのか?と不思議に思う。
で、彼らが2本の鞭で動物を操るのだが、1本は長い杖。
ステッキと言ってもいい。もう一つは長いロープが先端に
ついた棒。いわゆる鞭だろうか。
ライオン達が「ちんちん」のようなポーズをするのは、
この2種類の鞭の内、長いロープがついた方を頭上で
グルグル回される時。
ネコ科の動物ゆえか?動くものは気になるらしく、それが
素早く頭の上を旋回しているために、イライラするから、
威嚇するためにおそらく「ガオーッ!なにすんじゃこらー!」
って勢いで立ち上がっているのだろう。
実際、ライオンはちんちんをしている時は、すべて
例外なく口を開き「ガオー!!ガー!!」などと、怒って
吠えていたようだった。
結果、さすがの百獣の王ライオンも、調教師の鞭の前では、
まったく牙をむくことなど出来ないのだった。
「ちんちん」やトラの頭を飛び越すジャンプなどをしたあとに
小さな銀色の踏み台の上に、そそくさと戻る百獣の王の姿は
どこかもの悲しいのだが、全体的にライオンは怒りっぱなしの
雰囲気だった。
これに対してトラは、「まぁ、俺たちはそんなに怒っちゃいないけど、
でも、隙があれば俺も食っちゃうかもね」的な静かな怒りを
沸々と漂わせているのだ。
調教師は、かつて川上が見に行った時は、ライオンと
真剣勝負をして戦っていたのを覚えている。色の白いはずの
外国人の調教師が顔を真っ赤にして、ステッキの方の鞭で
ライオンの口をガンガンこれで突っついて黙らせていた。
もはや華麗な動物さばきどころではなく、ライオン対
おじさんのショーだった。
すでに20代後半だった川上でも、
「あの人が食べられちゃったらどうするんだ?!」
「他にライオンを手なづけられる人いるんだろうな?!おい!」
と、かなり真剣に不安を感じたのを覚えている。
---
一本の細長い板を二人の男が肩で支えて、その板の上で
女性がジャンプして2回転?宙返りなどをするアクロバット。
男達の肩に乗った板の上で女性が軽々とジャンプする様は、
まるでトランポリンの様だが、板の幅は15cmほど。
着地するにもいちいち平均台みたいな幅に飛び降りるのだ。
ついに大技の3回転?宙返りをした時に、細い方の男が
肩から板を落としてしまった。女性の着地の激しい衝撃に
絶えかねたのだろう。
女性は、一瞬顔をしかめ、細い方の男になにやら言って、
再びの挑戦。「ダメ出し」だったのか?
「今度は成功してくれよ。また気まずいところ見たくないし…」
という妙な一体感のような空気が会場全体を覆っていた。
すると、今度はみごとに大成功。
成功した時の表情は、これ以上ないというくらい輝いているのだ。
---
なんてすごい商売だろう。常に自分の限界と背中合わせに仕事を
しているのだ。それも、限界を超えてしまったら、死や大怪我が
隣り合わせというとんでもない商売だ。
ちょっと身の軽い子はよく「サーカス入ればいい」とか、一輪車に
乗れるようになった子に「木下大サーカス入るか!?」などと
冗談で言っていたが、サーカスは冗談やなんかではとても出来ない。
アクロバットや空中ブランコの人達も、皆オリンピック選手の
ような見事な体型で、腕の力も筋力もきっと体操選手並か、
それ以上のものなのだろう。いや、オリンピック選手で
サーカスに転向する人もいると妻が言っていたが、本当に
そうなのだろうか。でも、なんでそんなの知ってるの?
いや、それはともかく。まぁ、そのくらいのレベルじゃないと
とてもではないが無理だろう。
そして、それくらいの人達をしても、尚かつ、筋肉プルプルで
ギリギリの線まで努力しないと人々の喝采を浴びることは
出来ないのが、サーカスなのだ。
点数もつかないし、メダルもないし、栄誉も与えられないが、
技と力の限界に挑戦し続けるというのがサーカスだと知った。
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そして、またもう一つ驚いたのは、見事に計算されて、
演出されたステージの構成。
子どものころから大好きだったピエロのショーというものが、
実は、場面転換・道具の出し入れのためのつなぎのショーだと
いうのは、つい最近知ったのだが、これも素晴らしい。
ステージそのものは暗転しておいて、大きな道具を入れ替えて、
作業が進む。その作業からお客さんの目をそらすように、
ピエロは客席で、通路で、楽しいショーを演じている。
当たり前だと思います?当たり前かも知れないけど、
待つっていうのは人間結構苦痛なもの。でも、その待つ時間を
そのまま楽しい時間に変えてしまっているのだから、逆転の
発想というか、逆転ではないか?ともかくうまいのだ。
この発想とテクニックは、どこかで使えるかもと、仕事がらみで
すぐ考えてしまった。
まぁ、無理か。
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思いがけずサーカスの賛美のような文になってしまったが、
もうちょっと面白く書くつもりだったのです。
要するに、意外とギリギリの線で頑張ってるのね!っていうこと。
サーカスっていうと、余裕の演技を忍者のようにやってるんじゃ
ないかって思われるけど、思いっきりそれは間違いで、どの演技も
ギリギリのチャレンジで行われているってこと。
リアルなもの、生なもの、一次的な情報に触れたことのない
子ども達にはもちろん、大人達にもおすすめです。
ビデオやテレビや、人の話や、映画や漫画ではない、
ことによれば息づかいや、汗・体温・振動さえも感じられる
近い距離で、生身の人間が、真剣勝負で体を張って、文字通り
「命がけ」の演技をする姿ってのも、一度は見てみても
損はないかと思います。サーカスで、命がけでなにかをする
人達の凄みを感じるのもいい社会勉強だと思ったのでした。
まだ見ていない人は、ぜひおすすめなので、行ってみて
ください。ただし、ひどく混雑するので、覚悟がいります。
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ガンバロウ長岡!!!
ガンバロウ育英!!!
by 川上