稲城の図書館サポーターみんなのとしょかん Neo

東京都稲城市で「市民の力になる図書館」の発展をめざして活動している市民グループです。

『ふたごのでんしゃ』と日野市の図書館 ~地域文庫のうねり

2024-09-05 07:05:32 | 稲城の図書館史

昭和44年(1969)12月に刊行された『ふたごのでんしゃ』。
作者は渡辺茂男さん、挿画は堀内誠一さんです。
渡辺さんは第二次大戦後の日本の図書館を牽引し、児童文学の世界でも名作を発表、海外の児童書翻訳も手掛けた多才な方です。
我が家でも『しょうぼうじどうしゃじぷた』や『もりのへなそうる』、『エルマーのぼうけん』シリーズなど息子たちは夢中で読んでいました。

手許にある『ふたごのでんしゃ』は2004年刊行本では第62刷!
電車好きの子どもたちに愛される定番本のひとつです。
このおはなしは、稲城のご近所、日野市の実話に基づいたお話しです。

昭和33年(1958)豊田駅にほど近い場所に巨大な団地、多摩平団地が日本住宅公団により建設されました。
街を丸ごとひとつ造成する大規模開発でした。
団地建設前は3万人だった人口は、翌34年10月に3万8千人となり、その後も毎年4,5千人づつ増加していきました。
稲城と同様、日野市にも図書館がありませんでしたが、新しく住民となった人々を中心に図書館設置を求める声が高まります。
特に多摩平団地では、入居した家族の子どもたちのために児童図書館が求められました。
そこで、当時の日野市長有山さんの発案で、廃車になった都電の車両2台を改装し、昭和41年(1966)8月多摩平児童図書館を開館させたのです。

*「みんなのふるさとこぼれ話49 電車図書館」日野市公式ホームページ
より転載

この試みは、日本全国の児童図書館を求める人々に勇気を与えます。
稲城市に住む筧中さんも刺激をうけ、児童図書館研究会員として具体的な活動を開始し、地域文庫を誕生させていったのです。
そのあゆみが以前ご紹介した『いなぎ子ども文庫のあゆみ』につづられています。

その後電車図書館は老朽化、昭和46年(1971)4月新たに多摩平児童図書館が設置されました。
稲城市立図書館開館はその2年後、昭和48年(1973)6月のことでした。
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図書館がなかった頃 ~稲城の地域文庫

2024-08-24 12:13:36 | 稲城の図書館史

2024-06-08に投稿した「稲城市立中央図書館15周年記念誌が出ていた!」で記念誌の内容を御紹介しました。

それをきっかけに稲城の図書館の歴史に興味がわいて、冒頭の冊子を図書館からお借りしました。
「いなぎ子ども文庫のあゆみ」
いなぎ子ども文庫連絡会/編 -- 稲城 いなぎ子ども文庫連絡会 -- 1978 -- K01

稲城に図書館ができたのは、今から半世紀前の昭和48年(1973)。
稲城市役所の隣にある中央文化センター3階に開館しました。
今の第一図書館です。

それ以前に稲城で図書館的な活動をしていたのは、地域で活動していた「子ども文庫」でした。

最初にできたのが「たんぽぽ文庫」です。
昭和46年(1971)5月、児童図書館研究会に所属していた筧中花子さんが核となって東長沼に開設されました。
身近に「子どもの図書館」がほしいという願いから同年2月に「稲城町子ども図書館を育てる会」結成し、
わずか3か月で文庫開設というのですから、その熱意と努力には驚かされます。
その熱は燎原の火のように広がり、翌47年6月矢野口に「杉の子文庫」、12月に平尾団地に「ひまわり文庫」が誕生しました。

48年に市立図書館が開館しても、遠い地区の子どもたちは気軽に行くことができません。
子ども文庫の存在は重要でした。
その後も大丸の「いなぎ団地子ども文庫」(昭和48年11月開設)、「押立杉の子文庫」(昭和50年10月開設)、大丸「どんぐり文庫」(昭和51年7月開設)と拡がりを見せる一方、図書館の分館や配本所が開設するにしたがって矢野口の杉の子文庫や、平尾のひまわり文庫は役目を終えます。
<『稲城市立図書館開館20周年記念誌 資料編』掲載の地域文庫>
昭和52年 うさこちゃんぶんこ
昭和53年 こだぬき文庫 わかくさ文庫 ひまわり家庭文庫
昭和54年 坂浜アカシヤ文庫 わんぱく文庫
昭和58年 百村たんぽぽ文庫
昭和59年 こぐま文庫

こうした活動に参加したり体験した方々のあゆみと体験談などがまとめられているのが今回紹介した「いなぎ子ども文庫のあゆみ」です。

現在稲城市立図書館の協議会に、地域文庫の代表者が参画しているのは、稲城の図書館が文庫活動を背景に整備されたという歴史があるからなのですね。

現在稲城市内の地域文庫は以下の4団体となりました。
(*稲城市立図書館ホームページ
  • 長峰おひさま文庫
  • 平尾親子読書会 風の子
  • ぶどう文庫
  • 絵本の会 くるりくら(若葉台ワルツの杜)

当時に比べると、稲城市の子どもたちが本に親しめる環境は、各学校図書館を始め飛躍的に充実しています。
子どものためにと充実してきた稲城の図書館の歴史を改めて実感しました。

実はこれ以前の歴史もあるのですが、それはまたの機会にご紹介しましょう
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稲城市立中央図書館15周年記念誌が出ていた!

2024-06-08 20:36:38 | 稲城の図書館史

稲城市立図書館の歴史を知りたいと思って図書館の本を検索していたら、「稲城市立中央図書館15周年記念誌」というものを発見しました。
発行は2023年2月27日です。
一昨年活発に15周年記念イベントが開催されていたのを覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
そうした記念事業を<どのように計画したのか>、<どんな事業を行ったのか>、から始まり、記念式典の次第や発表資料、noteに掲載された記事一覧、中央図書館の歩みなどが画像と共にコンパクトにまとめられています。
何より良かった点は、図書館運営を受託している「いなぎ図書館サービス株式会社」の方々の声が載せられている点です。
編集発行が同社なので、当たり前と言っては何ですが、なかなか運営されている方々からのお声を聞く機会がないので、とても新鮮でしたし、何より次の15年に続くよい冊子だと感じました。
市民の声も拾えるともっと良かったですね!
稲城の図書館史を知る上で欠かせない一冊となることでしょう。
レファレンスコーナーに配架されていますので、見かけたらぜひ一度手に取ってご覧ください。
(あ、今管理者が借りてます!)

書誌を載せておきますね。
稲城市立中央図書館 15周年記念誌
いなぎ図書館サービス/編集 -- 稲城市企画部企画政策課 -- 2023.2 -- K01
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