けだるい雰囲気が病みつきになってまいそうなうな「ハリウッド★ホンコン/香港有個荷里活/Hollywood Hong-Kong」は「メイド・イン・ホンコン」のフルーツ・チャン監督「娼婦三部作」の2作目。
タイトルときれいなヒロイン・周迅(ジョウ・シュン)のパッケージに騙されたエログロバイオレンス映画だったが、独特の怪しい雰囲気、おバカな登場人物、狙いすましたキモさに何か惹かれた。
この混沌とした煩雑とした倦怠感漂う作品に惹きつけられたのは何故か?日本での公開は2003年7月12日だったが、地元香港では2001年公開。そう、オレが香港に住んでいた時期だ。オレが住んでいた頃の香港の匂いが感じ取れる作品でただならぬ郷愁感と愛着のある作品でもあったからだ。そして、とてもヘンで、パンチのある映画だった。
香港のとある下町、豚肉屋の巨漢一家と上海から来た娼婦の女の子の交流を…というよりは娼婦に翻弄される人々を描いた作品。貧しいながら平穏な生活をしていた男たちは、その少女によって人生を狂わされ…“汚い”香港のダーティな魅力が満載。
香港都市部にぽつんと取り残された下町・大磡村(ダイホム村)は、国の再開発計画のあおりを受け、取り壊される運命にあった。(大磡村後方にある赤茶の建物が作品タイトル(意訳すると香港にあるハリウッド)に紐づくショッピングモールの「PLAZA HOLLWOOD/荷里活廣場」)
【高層マンションの五つの塔とアジアらしい猥雑な雰囲気漂う村のロケーションが素晴らしい!】
しかし、この町で焼き豚屋を切り盛りする父親と息子二人のチュウ一家の生活は、忙しくも活気に満ちている。
そんなある日、一家の前に上海から来た美少女トントン(ジョウ・シュン)が現れる。
高層マンションが立ち並ぶいわゆる『ハリウッド地区』に住む彼女には、無垢な笑顔とは裏腹の、危険でなぞめいた一面があった…。
娼婦であるヒロインは男にオーラルセックスをした直後に一家の末っ子の男の子と無邪気にショッピングモールを走り回る。彼女の悪辣さや性的な奔放さを否定も肯定もせず、その奔放さとイノセンスとをごく自然に同居させているのが印象的だった。
フルーツ・チャン監督のセンスが炸裂していて、カメラワークの才気も抜群。猥雑で野蛮なエネルギーが渦巻く中で、煌めく何かが輝いている。どんなに展開がダークになっても、何故かその煌めきと可愛らしさは喪われないのが不思議。
2つの相反するものの「バランス」によって世の中が動いているという伝統的な「陰陽」思想が息づいていた。グロさとほのぼのさ、金持ちと貧乏、伝統的な風景とハイテクな機器、娼婦と少年、そうしたものが渾然一体になっているのがフルーツ・チャンの思う現代の「香港」かもしれない。
欲望をさらけ出して貪る。焼豚を頬張り、セックスしたり、人を利用して陥れたり、制裁を加えて復讐したり。食欲に性欲、金銭欲に支配欲…
人間の行為って傍目から見れば、ブタが餌を貪ってるかのように見苦しい。そんな人間の見苦しさを、我々は映画という境界の外から傍観する。まるでそれって、劇中に出てくる超高層ホテルから麓のスラム街を見下ろすかのようでもあった。
大陸から来た売春婦、ケツ持ちのヤクザ、スラムに住む人々、大陸からやってきたもぐりの医者、そして間違われて左手を落とされた入れ墨の男。みんな程よく狂っていて2003年のどうなるか分からないという香港を生きてゆくにはこれくらいの生きる意志がないとやっていけないという力を感じた。皆の狂気が生活の延長に立ってるのがすごい。
香港人の為の、香港が好きな人の為の映画だと思う。
周迅(ジョウ・シュン/Zhōu Xùn) - 一顆茘枝三把火(情熱のライチ)
余談だが…ロケ地の大磡村(ダイホム村)は再開発に伴って退去が進んでいたが、完了したのは2001年らしいから、オレが住んでいたときはまだ僅かながらも残っていた筈だ。訪れることなく香港を離れてしまったのは無念…。
【追記】村のチンピラは娼婦であったヒロインと情事を重ねたが、後ほど性的暴行を犯したとして慰謝料を請求されるが、それを拒否。そのため取立て屋に襲われ右腕を切り落とされ、しかも直前に人間違いで襲われていた別の男の左腕をつけられてしまう。これは、マジ、トラウマになりそうなぐらいグロかったわ…。
(グロテスクな画像のため閲覧注意。拡大しての閲覧に関しては自己責任にてお願いします)
タイトルときれいなヒロイン・周迅(ジョウ・シュン)のパッケージに騙されたエログロバイオレンス映画だったが、独特の怪しい雰囲気、おバカな登場人物、狙いすましたキモさに何か惹かれた。
●日本公開時のキービジュアル
●香港公開時のキービジュアル
●香港公開時のキービジュアル
この混沌とした煩雑とした倦怠感漂う作品に惹きつけられたのは何故か?日本での公開は2003年7月12日だったが、地元香港では2001年公開。そう、オレが香港に住んでいた時期だ。オレが住んでいた頃の香港の匂いが感じ取れる作品でただならぬ郷愁感と愛着のある作品でもあったからだ。そして、とてもヘンで、パンチのある映画だった。
香港のとある下町、豚肉屋の巨漢一家と上海から来た娼婦の女の子の交流を…というよりは娼婦に翻弄される人々を描いた作品。貧しいながら平穏な生活をしていた男たちは、その少女によって人生を狂わされ…“汚い”香港のダーティな魅力が満載。
香港都市部にぽつんと取り残された下町・大磡村(ダイホム村)は、国の再開発計画のあおりを受け、取り壊される運命にあった。(大磡村後方にある赤茶の建物が作品タイトル(意訳すると香港にあるハリウッド)に紐づくショッピングモールの「PLAZA HOLLWOOD/荷里活廣場」)
【高層マンションの五つの塔とアジアらしい猥雑な雰囲気漂う村のロケーションが素晴らしい!】
しかし、この町で焼き豚屋を切り盛りする父親と息子二人のチュウ一家の生活は、忙しくも活気に満ちている。
そんなある日、一家の前に上海から来た美少女トントン(ジョウ・シュン)が現れる。
高層マンションが立ち並ぶいわゆる『ハリウッド地区』に住む彼女には、無垢な笑顔とは裏腹の、危険でなぞめいた一面があった…。
娼婦であるヒロインは男にオーラルセックスをした直後に一家の末っ子の男の子と無邪気にショッピングモールを走り回る。彼女の悪辣さや性的な奔放さを否定も肯定もせず、その奔放さとイノセンスとをごく自然に同居させているのが印象的だった。
フルーツ・チャン監督のセンスが炸裂していて、カメラワークの才気も抜群。猥雑で野蛮なエネルギーが渦巻く中で、煌めく何かが輝いている。どんなに展開がダークになっても、何故かその煌めきと可愛らしさは喪われないのが不思議。
2つの相反するものの「バランス」によって世の中が動いているという伝統的な「陰陽」思想が息づいていた。グロさとほのぼのさ、金持ちと貧乏、伝統的な風景とハイテクな機器、娼婦と少年、そうしたものが渾然一体になっているのがフルーツ・チャンの思う現代の「香港」かもしれない。
欲望をさらけ出して貪る。焼豚を頬張り、セックスしたり、人を利用して陥れたり、制裁を加えて復讐したり。食欲に性欲、金銭欲に支配欲…
人間の行為って傍目から見れば、ブタが餌を貪ってるかのように見苦しい。そんな人間の見苦しさを、我々は映画という境界の外から傍観する。まるでそれって、劇中に出てくる超高層ホテルから麓のスラム街を見下ろすかのようでもあった。
大陸から来た売春婦、ケツ持ちのヤクザ、スラムに住む人々、大陸からやってきたもぐりの医者、そして間違われて左手を落とされた入れ墨の男。みんな程よく狂っていて2003年のどうなるか分からないという香港を生きてゆくにはこれくらいの生きる意志がないとやっていけないという力を感じた。皆の狂気が生活の延長に立ってるのがすごい。
香港人の為の、香港が好きな人の為の映画だと思う。
周迅(ジョウ・シュン/Zhōu Xùn) - 一顆茘枝三把火(情熱のライチ)
余談だが…ロケ地の大磡村(ダイホム村)は再開発に伴って退去が進んでいたが、完了したのは2001年らしいから、オレが住んでいたときはまだ僅かながらも残っていた筈だ。訪れることなく香港を離れてしまったのは無念…。
【追記】村のチンピラは娼婦であったヒロインと情事を重ねたが、後ほど性的暴行を犯したとして慰謝料を請求されるが、それを拒否。そのため取立て屋に襲われ右腕を切り落とされ、しかも直前に人間違いで襲われていた別の男の左腕をつけられてしまう。これは、マジ、トラウマになりそうなぐらいグロかったわ…。
(グロテスクな画像のため閲覧注意。拡大しての閲覧に関しては自己責任にてお願いします)