自己満足的電脳空間

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オープナーは球界の常識になるか?

2019-02-21 00:05:00 | 野球、その他スポーツの話
近代野球における投手のポジションは大まかに「スターター」「セットアッパー」「クローザー」と分類できるが昨年から新たなポジションが加わった。それが「オープナー」。2018年のMLBは大谷翔平とオープナーの年だったとまで形容された。そのオープナーはNPBでも普及するのだろうか?

オープナー(Opener)は、本来リリーフ起用される投手が先発登板し、1,2回の短いイニングを投げたのち本来の先発投手をロングリリーフとして継投する起用法、及びこの際先発したリリーフ投手指す。この戦術は、2018年のMLBでタンパベイ・レイズが初めて本格的に採用し、以降他のチームにも広まっていった。

タンパベイ・レイズは2018年シーズンにオープナーを実験的に採用し、5月19日のロサンゼルス・エンゼルス戦で初めてそれを実行した。その試合でオープナーとして起用された投手はクローザーのセルジオ・ロモ(現MIA)だった。

#54 セルジオ・ロモ

ロモは5月22日と23日にもオープナーとして起用されたが、6月にはクローザーに戻った。しかし、その後もレイズはライン・スタネックやハンター・ウッドなどをオープナーとして起用し、この戦術を採用し続けた。

#55 ライン・スタネック

レイズはオープナーの採用後に平均防御率が減少し、5月19日以降の防御率3.50はリーグ2位の数値であった。オフに主力が抜けたことで、開幕前には苦戦が予想されたチームの最終成績は90勝72敗と大きく勝ち越し、ワイルドカード争いでは3位だった。レイズはマイナーリーグの傘下チームでもオープナーを採用した。

この戦術は他球団にも広まり、6月にはロサンゼルス・ドジャースが先発陣が相次いで怪我をしたため、スコット・アレクサンダーをオープナーとして起用した。その後ミネソタ・ツインズ、オークランド・アスレチックス、そしてテキサス・レンジャーズも9月にオープナーを採用した。9月にアスレチックスがオープナーを実行した9試合(内8試合はリアム・ヘンドリックスがオープナーとして務めた)では、 4勝5敗・防御率1.86を記録した。

#31 リアム・ヘンドリックス

さらにアスレチックスはワイルドカードゲームでもオープナーを採用した。ミルウォーキー・ブルワーズもプレーオフでオープナーを採用した。NLCSの第5戦では先発のウェイド・マイリーが打者1人を抑えて交代し、打者1人で交代した先発投手はMLBプレーオフ史上2人目のことだった。

【利点】
戦術的な利点は、剛速球を投げることのできるリリーフ投手が、初回に当たる上位打順の強力な打者と対戦できることである。その上位打線を抑えれば、次の投手は打力の落ちる下位打線から始めることができる。また、打者は対戦を重ねるごとに球に慣れてくるので、本来の先発投手と上位打線の対戦を減らすことで被打率を低く抑える可能性が高まる。

財務的な観点からは、先発投手に比べて年俸の低い契約を結んでいるリリーフ投手をより多く活用することで投手陣にかけるサラリーを抑えることができる。

【問題点】
この戦術は先発投手の足りない球団がとるいわば苦肉の策で、依然として実力のある先発投手がいる場合には従来通りの継投策の方が優れている。また、先発した投手には勝利・セーブ・ホールド等が記録されず、評価が難しくなり、年俸の低いリリーフ投手の酷使につながることも懸念される。

常に球界の常識を打ち破るような新しいアイデアが続出するMLBには驚かされる。近年では2番にクラッチヒッターを添える、更に遡れば各々打者に対し守備位置を変更するシフト。そもそも投手に関してもスターターが完投という常識に分業制を取り入れたのもMLBだった。

安易なルール変更は反対だが「弱者の戦術」から生まれる奇抜な戦術、更には合理的な戦術としてのセイバーメトリクスは違った角度から野球が見れて非常に学ぶべきところが多い。

NPBでも北海道日本ハムの栗山監督はオープナー導入に少なくても否定的な意見ではないことが報道されている。導入されたら、昔から大反対だった予告先発も形骸化されるだろう。1992年ヤクルトの野村監督が仕掛けた先発・乱橋投手のような奇襲(野村監督曰く弱者の戦術)もオープナーを利用することで2番手投手(本来はスターター)が誰になるかわからず可能になるだろう。