このところの陽気で待望の花を咲かせてくれた…
手を掛ければ良いというものでは無いのは十分承知しているが
何がしか苦労が報われた気がする。
初夏の日差しが少しずつ勢いづくこの時期は野菜の成長が著しく
早朝の巡回(といっても回るほどもないが…)が楽しみなる。
しかしやがて病害虫が小躍りする梅雨の時期が近付いているのも現実だ。
まだ成熟には程遠い果実が高温多湿のなか幼虫たちの餌食となる。
そして僅かながらのお零れを人間様が頂戴するのだ。
というか、その代価としては余りにもミスボラシイ成果を
じつは疑問に思いながら万象の神々に感謝の意を表して恭しく戴く。
もちろん当家のムスメどもはそんなワタシの気持ちなど察する筈もなく
キラキラと朝露にかがやく大地の贈り物を…
決して見てくれがイイとは呼べないかもしれない結晶などには見向きもしないだろう。
薄い襖一枚で仕切られた隣の病室から夜な夜な聞こえてくる何かをすり潰す音。
ガラリと開けば確かめることができるがそんな不粋な真似は出来ず
しかし気が変に成りそうなほどに気になる「変な音」
ところが隣の者はワタシが皮で剃刀を磨く音を
「きっと体操する音だ。元気な証拠だ…」と羨ましがっていたという。
そして隣の音は患者の脚を冷やすために看護婦が胡瓜を摩り下ろす音だった。
夏目漱石 短編「変な音」より
周りが気になる。眼に見えなければ尚のこと気になる。
何を思い、何を考え、何をしようというのか…わからない。
いや自分のことさえ分からなくなる時がある。
もっと気持ちを大きく持って毎日を楽しくできたらいいのだが…
もうすぐ梅雨が来る。
拝