折角の出張先だが朝の体内目覚まし時計は変えようが無い。
いつもと同じ時間に目が覚めてしまう。
そこで異郷の繁華街で過ごした夜の余韻が少しずつ薄れていく中、カーテンの隙間から多くの視線が飛び込んできた。
湾にそびえる桜島を一望できる観覧車・・・載ってみる価値は十分にあると思う。しかし残念ながら天気は大荒れで時折激しく雨風が窓にぶつかっている。
やがて携帯に緊急メールで市内危険個所からの避難勧告が届く。
しかし県外から来た者にとって、どこが安全で、どこに居てはいけないのか、行ってはいけないのか皆目見当がつかない。
だが今後さらに事態が悪化した場合には、すべてがダメということだってあり得る。
ということで、かの『大脱走』でスティーブ・マックウィーン演じるヒルツ大尉が国境に張り巡らせた鉄条網をバイクで颯爽と飛び越えたように、愛車で梅雨前線をブッチギル作戦を決行する。
映画では助走が足りずに転倒、ヒルツ大尉は18回目の収容所送りとなったがワタシは雨、風、霧のなかを走り抜け何とか無事に帰り着いた。
いや、本当はこの緊張感をヒルツは楽しんでいたのかもしれない。他の脱走者のなかには成功した者もいれば命を落とす者もいた。それを18回も繰り返すとは運がいいのか悪いのか?
残念ながらワタシは一度の脱出劇で成功してしまった。このチャンスはもう無いかもしれない。しかし二度はしたくないと思う。だって本当に疲れたから・・・
拝