家族そろって失踪してから三年七ヶ月、いなくなった息子の夢を見
た。
元嫁は子連れの金持ちと結婚して大きな家に住んでいた。
名鉄電車の何という駅か分からない駅だったけれど、その近所に家
はあった。
そして元嫁と話しているうちに長男と次男が返ってきた。
娘は留守だった。
長男は中学生になっていて「おとうさーん!会いたかったー」と言
ってしがみついて泣いた。
元気で心の優しい子だ。
しばらく話をして、私は帰らなくてはならないことになった。
その家の使用人みたいな人間に連れられていく息子は私が見えなく
なるまで泣きながらこちらをみていた。
「電話番号は分かるんだろ?」
「うん」
「寂しくなったら電話しておいで」
「わかった」
これが最後の言葉である。
息子たちが連れて行かれると、仕方なく私は駅を目指して歩き出し
たところで目が覚めた。
もうダメなのかもしれない。
でもかわいくて仕方のない息子たちや娘を、忘れることは出来ない。
今日はこのまま寝込みそうである。