愛なれば 剣突く手も 揺れぬほど 愛するものと 言ふこてふらん
風もなき 暗き月夜に 心澄み 大猿の尾を 抜くこてふらん
愛と死の 溶けて流れる 水を飲み つぼみを割りて 咲くこてふらん
はかなきと 思ふなかれと 花は言ふ 世を浄めむと 為すものなれば
墨染の ゆふべを知るは 人心 花の心は 暗きあけぼの
たまかぎる ほのかに燃ゆる ともしびの 明日を思ひて まなこを閉ぢぬ
走り来て 走り来てなほ 走り来て 夢の中にぞ 君はやすらへ
春萌ゆる 花は神代の たよりもて 次になす夢 人に語らむ
ゆふやみの 風よしづかに 身をゆりて 赤き実の落つ 夜をなすかな
絶望よ 宴をはりて 人の世に 新たなるもの 来しと歌へよ
あかつきの 星落とさむと のぼる火を 消せる嵐を 呼ぶこてふらん