嘘ついて上手に愛の真似をして世間をだます凡庸の猿 大火
美しきものになりたやいつはりの旗を振りてはあやかしの影 夢詩香
天つ日の影を浴みてはかくれなきまことを知りて引き潮の夢 夢詩香
目も見えぬ赤子に金を与えてはひと世の夢を地獄に流す 大火
浅茅生の小野のかたへにひとり立ちしづかに光るゆふづつを見る
ひとりゆくはるけき道に月は照り苦しみおほき世をふりかへる
ねの方にうごかぬ星をあふぎみておのが心に光を移す
夏草の深きまよひの世にありて心の星にしたがひてゆく
たんぽぽのてんてんともる野をゆきてふときく風の音に驚く
ありとある人のすべてはよきものと涼しき神の風はささやく
うつそみの人を恨みて世をなげきおのれをくづす人の苦しさ
よきものをよきものとみて道をゆく人を喜ぶたんぽぽの群れ
ひともとの花踏むこともなきてゆくことかたき世をひとりゆく君
君の目にすむかなしみをとふこともならずかへししむなしきゑまひ
月影をあみて心を忘れ去りうすびかりする珠となりたき
春あさきころにであひしその花にすくひの夢をかたりし君よ
春は来てあなさくらぎの照り映えてふるさとを見るあけぼのの空
白雲の白きにまがふうすべにのさかりの春にあまつ日の照る
みみなぐささにはのすみにのび出でてちひさくしろき星光かな
光降る春のしじまにまどろみのあはき夢見したまゆらの恋
愛情のふりをしていふ空言の空のやかんのごとくつめたき
やさしさは自分を守るためのうそばれたらこまるほんねのほんね
患者より大事な医者のメンツかな誤診ごまかす小技は名医
本当のことを言われて馬鹿になりだれかのせいにして逃げる人
ぬばたまの夜空の星をみがきみてひとりの部屋にともしてみたり
奥山の石工の胸に咲く百合の深き眠りをとほく見る人
さくら花さかりの春にあふれ咲き光も風も心にぞとく
何を見てわづかにゑまふ昼の月
すみれ草あをきいさめをうたひつつみちのべにさくしづかなる風
病棟の窓に見る山朝来る
いざよひて窓に明るき夜半の月
うそばかりついておのれにかへる時たれをうらむか凡庸の人
おのが身の馬鹿さ加減もわからずてたまる借金苦しかりけれ
子育ての苦きをたへてくれるのは親ばかりとぞおもふべきなる
出ぬ月を待たむここちも月夜かな
面倒な仕事は全部ひとまかせいばってりゃいいバカ殿社長
約束の鍵はまはりて馬鹿どもの塔はくづれて現象の波
銀鈴の声を鳴きては人の世のまことをたのむいのりなるかな
野にありてむらさき光るあやめ草風を呼びつつしづかにうたふ
いそのかみふる霧雨に音もなくかすかにぬるる君のかなしみ
春は来てとけて消えぬるうすらひの中より出づるためいきの風
くるほしき罪の闇夜を背に塗りて夜明けの色におびゆる心
やさしさのふりをしてやるごまかしの自分に語るいひわけの山
えらさうなやつは無能な馬鹿ばかり強く出なくちゃさぼりがばれる
いはを打つ波のごとくにくりかへしいひてかひなきちとせのためし
空晴れて山はゆるぎて水は散り花はさわぎて春となりぬる
ためいきを積みてはかりてひとつぶのしらたまほどの重みをつくる
根が伸びて高くなりたる浮草の根もなきうそのくるしかりけれ
馬鹿どもの力関係くそにカビ生えぬ山にも無理やり生える
巻紙や死人の口を拭き清めよけいなことはいはざれといふ
馬鹿女男だませの心もてなにかは馬鹿を無垢とあざむく
人を食ひ我が身をしきといふほどに汚れゆく身の苦しかりけれ
いづれにかきみがゑまひのかなしきをせむるすべなきよき世となさむ
花嵐春の川水深けれどくれなゐの野に玉見出さむ
われならぬものとなりはてたまちはふ神も知らざるものとなりけり
くれなゐをわづかにふくむうす月の春にまよひてまぼろしの恋