河野薫
戦後の日本の版画家らしい。
戦後の一時期、日本の芸術家はよくこういう表現をした。
人間を引きずり回す魔の行為をした人間が自分であるということを認めざるを得ない時、男の精神は時にこういう退行を望むようになる。
男である自分というものが、あまりにも痛いのだ。耐えられないほど汚い。ゆえに自分を男らしく表現することができない。
女のように美しくなりたいと思う。だが、本当に女になってしまえば、自分の男が壊れる。そうなるのを防ぐために、芸術家の精神はこのように、硬く目を閉じた幼女の形を、極端に省略された線で描くのである。
これは男の精神の極限の姿なのだ。
大和魂と言って、日本人が誇ってきた日本男児の雄々しさは、この頃から、堕落していくことを、高度に成長した暴虐の中に、肯定していくようになるのである。