夜の
アンモナイトの中に
月を隠し
誰も知らない白い浜辺で
静かな歌を
歌わせた
遠く離れてしまった
人々の心のために
月は美しい声で歌った
今でも
愛していると
誰も知らない
その歌は
浜辺の砂に染み込み
波にさらわれて
海に広がった
砂浜で
不思議な貝を拾ったら
耳にあててみるといい
かすかな
ためいきのような
愛の歌が
聞こえるから
月の光を
ひとすじひとすじ
丁寧に編んで
小さな銀色の蝶々を
つくりました
遠い忘却の野を漂う
あなたの魂に
光を届けるために
暖かな東の風に乗り
蝶々は飛んでゆく
寂しさを忘れるために
石をかじるあなたの元に
静かに流れてゆく
墨のような闇の中に
ひとひらの光の蝶々を見たら
思い出してください
あなたが背中に置き忘れた
あなた自身のことを
どこまで行けば
この闇は終わるのか
いつになれば
この嵐はやむのか
生きることは地獄だ
釘の混じる
泥の奔流の中を
俺は傷だらけになりながら
歩いている
沈黙の嘲笑を
空に結び
俺はすべてを愚弄している
こんな世界は馬鹿だ
何をやっても
屑になるだけだ
ちきしょうめ
いつか
痛烈な捨て台詞を残して
出て行ってやる
この闇も
この嵐も
すべて超越して
俺は全世界を
吐き捨ててやる