ヨム・キプール

昨日は年に一度の大贖罪の日、ヨム・キプールでした。
前日の日没時から翌日の日没後までのおよそ26時間、飲まず食わずで神の赦しを乞うユダヤ教徒にとっては非常に大切な一日です。

飲まず食わずだけならともかく、この日は他にも様々なことが禁じられているので、時間が過ぎるのがそれはそれはもう恐ろしいくらいゆっくり。

具体的にどんなことが禁じられているかというと・・・
・商談や金銭のやりとりなどを含めた一切の経済活動
・肉体労働
・火気の使用
・乗り物の運転や乗車
・テレビ、ラジオ、パソコンなどの電気製品の使用
・電話
・照明の点灯、消灯
・シャワー、入浴
・性行為
・楽器の演奏
・描画、執筆
・化粧

本当はたぶんもっとあると思いますが、私が今思いつくだけでもこれだけあります。
この中に「これさえやっていれば一日くらい飲まず食わずでも平気だろう」と思うものがある人、残念でした。
ちなみに私はヨガもやりませんでした。というよりも、そんな余力は微塵もありませんでした。
こうなると、できることを挙げた方が早いかもしれないません。

できること
・シナゴーグでの祈祷
・読書
・おしゃべり
・軽い散歩
・トランプや双六のようなゲーム
・睡眠

なんだかまるで中世の休日のようですね。

信仰心とは別に私も日本に住んでいる時からかれこれ15年くらい実践していますが、慣れるまでに相当かかりました。
三度の食事を時計に合わせて摂っているような生活をしていると、当然、時計を見るだけでなんとなくお腹が減ってくる感覚に襲われるので、食べられないストレスがものすごかったです。

ヨガを始めてからは、練習前には食べないことと「お腹が空いたら食べる」ようになったこととで、空腹持続時間がはるかに伸びて断食も楽になりました。歳をとって食欲が減ったこともあるはずです。それと、同時期にイスラエルに移り住んだので、この日は世の中が止まってしまったような不思議な静寂を楽しむ年に一度の機会だと思えば、意外とすんなり受け入れられるものです。

いつも車の往来が激しい通りに一台の車も見かけない。高速道路さえも緊急車両がたまに通るだけで、あとはガラガラ。その代わり、この日を待ってましたとばかりに自転車に乗った子供たちが我が物顔でサイクリングを楽しんでいます。これはなかなか微笑ましい光景です。


ユダヤ教徒は世界中にいます。アメリカにはイスラエル国内の３倍にものぼる数のユダヤ教徒がいるらしいけれど、ヨム・キプールの不思議な世界を体験できるのはたぶん世界でもここイスラエルだけでしょう。本当はその不思議な世界をお見せしたいのですが、写真撮影も禁じられているのであしからず。


今年は事前の水分補給が足りなかったようで、頭がずっしり重い一日でした。
この日のために読むのを我慢していた本もたいして読めず、横になっている時間が多かった。それ以外は子供たちとおしゃべりをしたり、ゲームをしたりして過ごしました。とりわけ長男との音楽の話は盛り上がりました。
あれもこれもできないづくしの中で家族のコミュニケーションの時間は確実に増えるのもこの日の利点です。


どんなに慣れたと言っても、断食が明ける前の３～４時間は精神鍛錬。
終わりが近づくにつれ最初の気合いが弛み、精神的に折れそうになりますが、実際に肉体的にもそろそろ限界。いくら時計を眺めても一向に針が進んでいないかのような錯覚を覚える時間帯です。

だんだんと頭痛が増し、断食初挑戦の長男も「ねぇ、まだ？」としつこくなってきて、「あー、もうムリ。寝る！」
そう言って、私は最後の精神鍛錬は睡眠に捧げました。

前の日には「明日はじっくり内省しよう」などと思っていたけれど、今年も結局ダラダラと終えたヨム・キプール。
それでも26時間の断食明けに飲む最初のミントティーは格別に美味しかったです。
長男は初挑戦にもかかわらず、まさかの敢行。その後は食べ盛りらしい食べっぷりを披露してくれました。




ナマステ＆シャローム
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