Joy Yoga

中東イスラエルでの暮らしの中で、ヨガを通して出会う出来事あるいは想いなど。

リヴィング・ヨガ YOGAのある生活 クリスティ・ターリントン著

2012-01-17 17:37:03 | 本の紹介
前回の記事「ブームの側面」で、視覚に訴えるイメージによって一般に固定された概念のために、かえってヨガから遠ざかる人が出て来てしまうといった旨のことを書きました。
にもかかわらず、今日ご紹介する本は視覚にビシバシ訴えてくる美しい写真が満載です。

【表紙】この透明感溢れる佇まいと慈愛に溢れた眼差しが"本物"を感じさせます。



著者はスーパーモデルの一人として名高いクリスティ・ターリントン。ご存知の方も多いのでは。
本書の中で著者自らが熟練したアーサナの数々を披露していますから、手にした人は思わずうっとり眺めてしまうことでしょう。

本書では、ヨガをしていて出会うほぼ全ての基礎的なキーワードについて触れることができます。
ヨガの起源、ヨガの種類、アーサナ、呼吸、瞑想、アーユルヴェーダ、チャクラの他に、コミュニティや信仰、祈りなど、初心者向けのヨガ本では取り扱わないようなコンテンツも含まれています。
本書の中で彼女はクリスチャンとしての立場を明確にしてはいるものの、彼女の経験を通して描かれる「ヨガというものが日常にどのように絡んでくるのか」という点については、あなた自身の日常に重ねてもそれほど乖離したものにはならないでしょう。むしろ、宗教的な立場に関して寛容なのりしろが残されているので、彼女の経験をご自分に当てはめて想像するのも比較的容易いのではないかと思います。

著者についても少し触れておきましょう。
著者のクリスティは80年代から第一線で活躍している世界的なスーパーモデル。ところがスーパーモデルという職業柄、生活そのものは人一倍多忙で不摂生なものでした。スーパーモデルとしてのキャリアを築く傍らで、様々なきっかけが重なり、自らの心身の健康について考えるようになります。
7年越しの禁煙を皮切りに過酷なステージモデルという立場からも退き、とにかく自分のライフスタイルをリセットするために様々な変化を取り入れていきます。そんな折に出会ったひとつがヨガでした。それが1988年のこと。まだヨガがブームへの助走を始めるか始めないかという時代の出来事です。
以来、彼女はアシュタンガ・ヨガ、アイアンガー・ヨガ、クンダリーニ・ヨガと代表的なヨガのうち3つの体系を経験しています。実際にインドのアシュラムにも赴いたりして、さらに一歩踏み込んでヨガを理解しようとしている姿勢が伺えます。

単なるワークアウトのひとつとしてメニューに取り入れているセレブとははっきりと一線を画しているのが清々しいほどに伝わってくる。「見せる」ことを生業としている人なのに、何故か彼女のアーサナの写真を見ても「見せびらかされている感じ」というのが全くしない。それほど彼女のヨガに対するスタンスは謙虚です。
著者の独自の視点や体験談を交えつつも単なる自己アピールでは終わらずに、確かな知識に基づいてヨガに関するいろはを幅広く網羅している点は、かなり評価できるのではないかと私自身は考えています。

今回ご紹介するにあたって一通り目を通してみたのですが、相当熱心に勉強したんだろうなというのがすごく分かりました。
私自身が以前よりは学びを深めたので、彼女の真摯な学びと理解、そして丁寧且つブレのない解説を入手当時よりもきちんと評価できるようになったということなのかもしれません。

今どきヨガの入門書はいくらでも存在しますが、ヨガを始めたばかりの友人や興味を持っていそうな友人に私はこの本を薦めています。
基礎はもちろんのこと、「ヨガをやっているとこういうことを学ぶようになるんだなぁ」という次のステップへの道標的なことがここかしこに含まれているのが魅力。大判でお値段もやや張りますが、似たり寄ったりのものを何冊も買うより結果的にはお買い得になるんじゃないかなと見込んでいます。
あと、ヨガをある程度経験している人にとっても「おさらいがよくまとめられている本」として活用できそうです。


最後に彼女自身の言葉を本書から抜粋しておきます。
私が皆さんに本書をオススメしたい理由がおわかりいただけるかと思います。(これを元に前回の記事を書いたんじゃないかと思われるくらい似たようなことをクリスティが語っています。が、当時の私はそうした問題意識も持てないほどメディアに惑わされた初心者でした。)

私がこの本を書こうと決めたのは、ここ最近のヨガ・ブームがきっかけでした。かつての私のように、過剰な情報に圧倒されたり、あるいはヨガに対して誤解してしまう状況を避けるために、私が何か役に立つことはできないかと思ったのです。ヨガの身体的効果(私たち西洋人にはこれについて典型的な強迫観念があります)だけが強調されたり、あるいは「有名人が薦めているもの」としてメディアが取り上げ注目されていますが、それはかなり間違った方向であると感じているのです。
〔中略:ヨガの人気が急激に高まったことで適切な指導体制が確立されにくくなったことを述べて〕
私の願いは、この本がそんな皆さんの疑問を適切な情報源へとつなぐ架け橋となること、また私の日々の生活にとってヨガがどれほど大きな影響を与えているかということを一例としてしっていただけることです。
〔中略:本書の執筆にあたり改めて理解を深め、同時にさらなる学びの必要性を感じたと述べて〕
私もまだ歩みの途中であり、決して皆さんに教えるという立場にはありません。ですが本書を通して、私が体験から学んだヨガを分かち合うことができればと思います。
(『リヴィング・ヨガ 』「今なぜヨガなのか?」の章より)


私がこのブログを書き始めたのも、たぶんこんな思いからなのかもしれない。

ナマステ&シャローム
Nozomi

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2 コメント

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Unknown (Rika)
2012-03-08 09:19:17
Nozomiさん
TomoさんのFBリンクからとんできました。
素敵なブログですね。

私もこの本持ってます!日本語版出る前だったからずいぶん前に購入しました。
Nozomiさんが書いてることとまったく同じことを考えていたのでコメントしたくなりました!

現代の物質社会(ヨガサイドからは否定の対象になりがちですが)と、ヨガの教えをうまくつなぐ仕事をしている人がすごく好きです。
“いまの暮らし”にいかせなくて、なんのための教え???って感じです。
やっぱり一流の人は、生き方そのものが魅力的ですね。
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☆ Rikaさん ☆ (Nozomi)
2012-03-08 17:22:31
Rikaさん、ありがとうございます。

私の師匠がよく言います。
「アシュラムあたりでヨギに囲まれながら心の平安を保つのは簡単。そこから元の生活の場に戻ったとき、目の前の現実に落胆するのか、あるいはヨガの学びを活かすのか。ヨギとしての資質を問われるのはその時だ。」

クリスティはその問いに真摯に向き合った人なのだろうなと思います。
そんなわけで私も強烈なリアリティーを持つイスラエルで泣き笑いしながら試行錯誤しております。
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