犬ってみんなうれしいとシッポを振るものだと思っていた。
勝手に。
おれこなんか尻尾が飛んでいきそうなくらい振る。
喜怒哀楽の表現についてはかなり激しいタイプだ。
この顔は絶対笑ってるよね、という顔をするしね。
ところがおじいわん。
こんすけさんは全く尻尾を振らない。
いや振ることは振るのだが、
ハイテンションマックスの散歩のときだけである。
笑顔もみたことがない。
寝てるときに口角が上がって「にま~」
と笑って見えることがあるけど、
あれきっと違うんだろうな。
尻尾を振らない「嬉しい」表現って、
ほかにもいろいろあるらしいのだが、
ジャンプするとか体当たりするとか、
いわゆる「ヒコーキ耳」になるとか、
そういうことらしいのだが、それもない。
まったくアクションがないかというと、
実はそうでもなくて、ものすごーく地味ーなんだが、
・見る
・近くに座る
・あたまをくっつけてくる
・足元にまとわりつく
・私の足の甲部分に乗る(立つ座る両方アリ)
最後のはなんだかよくわからないのだが、
足元にまとわりついた揚句、乗る、というのがパターン。
でもこれだけだと、はたして、甘えてるんだか、
うれしいんだか、ほんとのところは、わからないな。
ぶんぶんしっぽを振ってくれたらいいなあ、
と思うことはあるけど、今みたいに、
なんだかよくわからないけど、そうなのかなあ?
という状態は、小学生とか、中学生の、
あわーい恋のような具合で、なんとも甘酸っぱい。
いや、ちょっと違う。
ここまで書いて、ああ、と、思い出したことがあった。
去年の今日、亡くなった老猫が、こんなふうにしたのだ。
足元にすりよって、足の甲に乗るっていうのを。
その子は猫にしておくのが勿体ないような犬顔で、
性格も猫らしくないというか、犬みたいなところがあった。
野性味に欠けるというのか、人クサイというかね。
初めてこんちゃんを見て、うちで最後まで面倒見よう、
と思ったときのきっかけというか心のフックにひっかかったのは、
あの子(猫だけど)と顔が似てるなあ、雰囲気が似てるなあ、って、感じたことだった。
…もしかして中に入っているんじゃなかろうか。
足の甲に乗り上げるのは、ちょっと困るけど、
あの子もよく、私の両足に乗り上げて、
「さあ、いけ、歩け」
と、ロボに命令する指揮官みたいにしていたな。
こんちゃんとそっくり。
そうか。
今日は命日だったんだなあ。
もうこうなったら、こんちゃんの中に入っているとして、
今日はいっぱい、いいこ、いいこしてあげようかなあ~。