
昨日のことである。
通路でエレベーターを待っていた。
おじいわんを抱っこして待っていた。
しばらくして、先に3人の方が乗っているエレベーターが下りてきた。
ひとり二人ならあれだけれども、3人も乗っていたら、
密接しちゃってちょっとあれだなあ、なんて、遠慮して、
「どうぞ」
と乗りませんよ宣言をしたら、奥のご夫妻が身を乗り出して「乗れ乗れ」手招き。
ちなみに手前は工事関係者(まだ大規模改修工事は続いている)のお方。
いいのかなあ、と思いつつ、
「じゃあ、お言葉に甘えて」
と、乗り込ませてもらうと、

「この子、この子よ!こないだ話したでしょう?」
「ああ、この子」
「ねえ、かっわいいね~」
「ほんとだなあ~」
「吠えないわね~」
「大事にされてるからなんだろうなあ~」
「なんてやさしそうな顔してるのかしら~」
「ほんとだなあ」
なていう会話が始まって、びっくりしているうちに、
無視してるわけにもいかなくなり、とはいえ、いきなりこのことで、
絡み方も難しく、はあ、とか、まあ、とか、はっきりしない返事をし、
せめて降りるときには礼を尽くそうと、ありがとうございました、と、
感謝をこめて挨拶をしたけれど、なんなんだろう、おじいわんよ。

あなた知らずのうちに人気者ね~。
いや自分ではかわいいかわいいと思っていますよ。
でもね、ひいき目抜きに冷静に考えると、ですよ。
おじいわん、おそらく、若いころには十人並の器量だったかと思う。
まるちゃんみたいに愛そうがいいわけではないし、顔についても、
誰もが振り向くような、特別にかわいらしい部類ではない気がする。

ごく普通のどこにでもいるタイプの柴犬だ。
それがねえ、老犬になるとねえ、こんなにみんなから、
かわいいかわいい言われて、道行く人にも、かわいいかわいい言われて。
おじいさんやら、おばあさんやら、おじさんやら、おばさんやら、
わらわらわらわら集まってきて、かわいいねえ、かわいいねえ、って、言ってくださる。

こないだも、人の好さそうなおじいさんがもう本当に可愛くて仕方ない、っていうふうに、
おじいわんをみつめて、はなしかけてくれていて、わたしより、おじいわんと話していた。
これなんでしょうねえ。老犬マジックなんでしょうかねえ。

人様に自分から自慢したりはしないけど、ひそかに、
「うちの老犬かわいいんだから~」
というでれでれした気持ちを持っています。

おれこももちろん、かわいいですけど。
ああ、そういえば、おれこには、わかい人たちが来るなあ。
こどもさんとか、幼児と一緒のお母さんとか。
駐車場からマンションに入る扉を開けた瞬間、
女の子たちが「かわい~~~!!!」って、叫んだものだから、
オレコがじたばたして(抱っこしてた)大変な目にあったんだった。

残念ながら、オレコもおじいわんも、
かわいいといわれても、それほどうれしくないみたい。
あんたたち、もったいないねえ。
せっかく人が褒めてくださってるのに。
せめてうれしいな、くらい、思えたらいいのにね。
オレコにはその余裕がないし、おじいわんときたら、
ほめられていても、「?」なんだからねえ。
耳が遠かったり、目が悪かったりっていうのは、
「感じ方」も、ややうっすらしちゃうものらしい。
そういうところもかわいいんですけどさ。