残念ながら我が家にキョンキョンはいないが、別のかわいい生き物がいる。
こんこん。
老犬アイドルとして、看板犬として、地道に活動中である。
近頃おとうさんが長期不在で会えなくて、犬たちはとてもさびしい。
朝晩のお散歩とごはんはもちろんだが、こういうときはちょっとでもいいので、
一日の終わりに、それぞれと、ふたりきりの時間をつくる。
オレコは体を使う遊びがいいらしいので、
おさる棒、ぺんちゃん(ぺんぎんぬいぐるみ)、ごまちゃん(あざらしぬいぐるみ)など、
オレコが好きなお人形を投げたり、とったり、そういうのを繰り返して遊ぶ。
そんなときのオレコは黒い目がさらに黒々、キラキラ輝く。
うちに来たばかりの1歳未満のころは『ぬいぐるみぽん遊び』のほかに、
オレコが自主的にぐるぐると部屋の中を何周も走り回って見せてくれた。
とっても速くて、ソファからソファへは、横っ飛びで移動する。
猫の身体能力も素晴らしいけれど、犬もすごいなあ~、と感嘆。
5年も前のオレコが小さなころの話で、今はもうしないのだけど。
ひとしきり遊んで、ぎゅうぎゅう抱っこして、いいこいいことなでて、次。
今度はこんこん。
気のないそぶりを見せることもあるけれど、
私とオレコが遊んでいる間、耳をそばだて、
こちらの様子を伺っていたりするのだ。
そうして、そろそろかな、そろそろかな、
と、わたしが来るのを、待っているのだ。
わたしが姿を見せると、1ミリくらい笑う。
私がルーチンワークをこなしている間は、
ねむろうかのう、でもまだねむくないのう、
そうじゃおかあさんとあそんでもいいのう、
というような感じで、いったりきたりする私を、
ゲージの中で寝そべりながら、不自然な形に、
顔だけこちらに向けて、じーっと見つめている。
そのままいつの間にか眠ってしまうこともあり、
そういうときは部屋のあかりをまめ電球に変える。
ところがいつまでもじーっと待っていることもあり、
そんなときはちゃんと話を聞いてあげないと悪い。
ゲージの前に行くと、くるりんと身を起こし、
うにゅーん、と手足を伸ばしながら、出てくる。
大きな(くさい)頭を垂れて、こちらの顔や、
おなかに押し付けてきたり、何を伝えたいのか、
目の前を、行ったり来たりすることもある。
ゲージの中にあるピンクのひつじのぬいぐるみ。
これをくわえて出てくるときは、ころころ転がしてもらいたいとき。
転がすと、とてとてとてとて、と走っていって、くわえて戻ってくる。
そして私の目の前に置き、鼻でクイっと押して、こちらに寄越す。
何回か繰り返すと、飽きる。青いボールでやることもある。
こんこんのほうがオレコよりずっと飽きっぽい。年令もあるのかも。
だけど以前、こんなふうに誰かにあそんでもらったことがあるんじゃよね。
そしてきっと、とっても楽しかったんじゃよね。
この日はちょっと眠かったみたい。
ゲージの中で寝ながら応対していた。
お話していても、すぐに寝てしまうので、
よし寝た、と、立ち上がろうとすると、
うーん、まだまだ!と起きだし、
もっとお話しして、もっとお話しして、
と無茶をせがむ幼児のようだった。
犬同士でるすばんの間に仲良く遊ぶ子たちもいるのだろうが、うちの場合はそれがない。
しぜん、遊ぶ(コミュニケーションをはかる)のは人間だけなので、どんなに忙しくても、
ほんのわずかでも、(5分でも)こういう時間が必要なのだ。
あるのとないのとでは、ふたりのあしたの元気が違う。
もちろん私も満足度が違う。
くうねるのむだす、だけじゃいやだよねえ~。