FPの胃袋 ~FP・社労士 川部紀子のブログ~

ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士 川部紀子の腹の内。

FP・社労士事務所 川部商店

過労自殺とマスコミの功績

2017-09-30 | ブログ
電通に勤務していた高橋まつりさんの過労自殺が労災認定されて1年が経ちました。

広告代理店の最大手での事件で労災認定となったこと。
亡くなったのは東大新卒で美人。
家族が公表に踏み切ったこと。
これらの理由からか、メディアでも大きく扱われました。

でも、この事件は氷山の一角です。
勤務問題を原因の 1 つとする自殺者は年間2,000人以上もいるのです。



その昔、自殺が労災認定を受けることはありませんでした。

潮目が変わったのは1999年。
「精神障害・自殺の労災か否かの判断指針」が策定され、うつ病による過労自殺も労災として位置づけが明確化したのです。

年齢によっては、この事件をご存知の方は多いはず。

当時、プロ野球オリックスの敏腕スカウトマン三輪田勝利氏が、
指名した選手に入団を拒まれ、球団からは圧力をかけられ、板挟み状態に。
身心ともに追い込まれ投身自殺を図りました。

この事件をマスコミは大きく報道し、
「これは労災ではないか?!」との声も。

その後、「入団交渉を巡る過重なストレス」が自殺の要因であったとして、労災認定されました。

実は、この事件、過労自殺が労災認定された第1号なのです。

マスコミが世の中を大きく動かした事件といってもいいかもしれません。



それ以来、自殺が労災認定される例は起こり続けています。

過労自殺が「労災認定」されるという意味では、1999年の事件は非常に大きな意味がありましたが、そこで終わってはいけないと思います。

自殺が労災認定されやすくなったから「良かった」とはならないからです。
過労による自殺者が減ることに繋がっていかなければ意味がないのです。

最近、メディアに取り上げられた例として、
電通の事件の後、ゼリア新薬の研修中に自殺、三菱電機のいじめ自殺があります。

この共通点は、「新卒の若い社員」ということ。
これは、まさに、最近の過労自殺の傾向です。

少し前は中年男性の比率が高かったのですが、
今は、若年層や女性の過労自殺も増えています。
これも、過労自殺を撲滅するヒントになり得ると思います。

長時間労働が原因の1つになるのは今も昔もありますが、
責任を与えられるプレッシャーによるものから、ハラスメントによるものにシフトしてきた感があります。
国も会社側もハラスメント対策に動き出しているのですが、改善に繋がっている気がしません。

思うに、ハラスメントに関しては、耐性も人それぞれで、指針も曖昧になりがちで、
国や会社は助けたくても、助けることがとても難しい問題なのです。
時間をかけて助けを待っていては、心と身体が蝕まれていくばかり…。
自分の身は自分で守らなくてはいけないという気持ちで会社と付き合うべきでしょう。



「まだ大丈夫」のうちに判断しないと判断自体ができなくなってしまいます。

これは、昨年、イラストレーターの汐街コナさんがTwitterに投稿した過労自殺についてのマンガ「昔、その気もないのにうっかり自殺しかけました。」に書かれている言葉です。

「死ぬくらいなら辞めれば」ができない理由 1/2

「死ぬくらいなら辞めれば」ができない理由 2/2

待っていても助けはやってきません。
判断できるうちに判断してほしいと思います。

次なるマスコミの功績は、特に若年層に向けて、自分を過労自殺から守る啓蒙であることを期待します。