私の散歩コースの折り返し地点に公園がある。
公園の目の前に古い大きな一軒家がある。
開けっ放しの玄関にはたくさんの汚れた長靴がある。
1階の部屋は丸見えで中の様子がおもいっきり見える。
男物ばかりの洗濯物は夜になっても外に干したまま。
今はそんか言葉は無いかもしれないけど、これ、多分“ハンバ”。
私はこの家が妙に気になる。
今日も長靴が並んでいるだろうか、たくさん洗濯物が干されているだろうか、何を食べているんだろう、みんな楽しくやっているんだろうか。
ただ、前を一瞬通る だけなのにいつもたくさんのことを考える。
そして、その一瞬にいつもドラマがある。
昨夜、私が玄関に近づくとアコースティックギターの音色が聞こえてきた。
見ると、玄関の外で上下ジャージの男性がタバコをくわえてギターを引いている。
私に気付くと、手を止めてタバコを吸う。
私も目線を反らし玄関の中をチラッとみる。
すると、軽く白いタオルで隠してはいるものの全裸のおじさんが玄関に向かって歩いて来た。
いかにもお風呂上がりで気持ち良さそうな表情、ぷっくりしたお腹…。
ああ、今夜は一番ドラマチックな夜だ。
ギターの音色をバックに見た、夕闇の中の白いタオルが本当に眩しかった。