角灯と砂時計 

その手に持つのは、角灯(ランタン)か、砂時計か。
第9番アルカナ「隠者」の、その俗世を生きる知恵を、私にも。

#080 「豊かだが抑圧の強い社会」?

2015-08-02 07:04:53 | そうなの?
突然ですが、質問です。

人生は自分の思い通りに動かすことができるという人もいれば、どんなにやってみても自分の人生は変えられないという人もいます。あなたは、ご自分の人生をどの程度自由に動かすことができると思いますか。「1」は「人生は全く自由にならない」を、また「10」は「人生は全く自由になる」を示すとします。1から10までの数字で当てはまるものを1つお答え下さい。 

どうでしょう。
何の前提もなく、イキナリこう聞かれたら・・・

「5」? 「6」?

万事控えめ、
もしくは中庸を良しとして育った善良な日本人なら、
まあ、そんなところだと思います。

前にも一度取り上げたことがありますが、
(#014 何で外国特派員協会なの?→http://blog.goo.ne.jp/kawai_yoshinori/e/56eafb13588ff7daf21ae5cb71ee975d

世界価値観調査(World Values Survey)というものがありまして、
世界中で様々な「価値観」についての調査を行っています。

その中のひとつ、

variable 55:How much freedom of choice and control over own life
「自分の人生をどれほど自由に動かせると思うか」

についての調査が、冒頭の質問でした。
(世界価値観調査:Online Analysis→http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp

(↓)日本での結果はこうだったそうです。


さて、米国ではどうでしょう。

良くも悪くも素直に楽観的な米国人。
(↓)こういう結果です。


みごとに日米の差が出ているわけですが、
これを元ネタにした、
まあ、よく有る日本論を目にいたしまして・・・

〈豊かな日本で「自由」を実感できないのはなぜか
 年齢が上がるとともに自由を感じられなくなる傾向が顕著な日本社会〉

(Newsweek日本版:ワールド→http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/07/post-3803_1.php

というんですが、

(↓)日米の結果を合わせてグラフにしてみせて、


〈日本は10段階の5点周辺にピークがあるが、アメリカは高評価に多く分布している。8点以上の割合は日本では20%だが,アメリカでは62%にもなる。国別の平均点を計算してみると日本が5.76点、アメリカが7.73点となる。アメリカのほうが、自分の人生を自由に動かせると考えている人が多いようだ。「自由の国」の看板に偽りなし、と言えそうだ〉

と、調査結果をそのまんま受け止めているわけです。

そして、

〈日本の暮らしは快適で便利だが、それは人々を高度に管理・統制することで成り立っている。貧しいが自由な社会と、豊かだが抑圧の強い社会。大きく分ければ社会には2つのタイプがあり、現存する国々はこの両極の間に位置している。この統計から分かるのは、日本は後者の極点に近いということだ。こうした偏りを是正し、成熟社会にふさわしい姿に近づけていくのが理想だろう〉

という結論に至るのですが、
率直に言って、それでイイの?な感じです。

と、いうのも世界価値観調査、
とてもオモシロイものなんだけれども、
単純に比較はできないと思うんです。

米国での質問文はこうです。

English:
Some people feel they have completely free choice and control over their lives, while other people feel that what they do has no real effect on what happens to them. Please use this scale where 1 means "no choice at all" and 10 means "a great deal of choice" to indicate how much freedom of choice and control you feel you have over the way your life turns out (code one number):

Spanish:
Algunas personas sienten que tienen total libertad de elección y control sobre sus vidas, mientras que otras sienten que lo que hacen no tiene un efecto real en lo que les ocurre. Por favor, use esta escala en la cual 1 significa “ninguna posibilidad de elección” y 10 significa “amplias posibilidades de elección” para indicar cuánta libertad de elección y control siente usted que tiene sobre la forma en la cual su vida se va desenvolviendo


日本語の、
〈「1」は「人生は全く自由にならない」を、また「10」は「人生は全く自由になる」を〉
という部分が、

英語では
〈1 means "no choice at all" and 10 means "a great deal of choice" 〉
になってます。

「全く自由にならない、なる」と「選択の余地なし、たっぷりある」とでは、
その意味するところ、似て非なるモノでしょう。

(スペイン語については、私分からないので省略)

〈人生の自由度評点の平均を年齢別に出すと、右上がり、つまり加齢とともに自由度が増す社会が多いのだが、日本はその反対になっている。年齢が上がるほど、選択肢がなくなっていく〉

というのも、
そういう傾向が見られる、程度には頷けるけれども、

だから日本は「豊かだが抑圧の強い社会の極点に近い」と、
そう結論づけるのはどうなんでしょう。

〈高校卒業後に約半数が大学に進学する。新卒で就職後は、毎日オフィス勤めの生活が待ち構えている。雇用の流動性が低いため、職場を移ることには実際、様々な困難がある。起業には多大なリスクを伴う。壮年期や中年期になってから人生の転換を図るのは、それ程簡単なことではない〉

そういう「日本の社会」から、
一歩も二歩も離れたところを生きてきた自分としては、

ラクだけど面白くない人生を選ぶのも、
踏み外してるけどオモシロイ道を行くのも、

どちらも「自由」な「選択」の結果だろうと思いますよ。
そういう知り合いも大勢いますし。

とにかく社会の在リようにケチ付けとけばイイ、
みたいな仕事はあまり感心しませんなあ。

もちろん、そんな生業を続けるも辞めるも、筆者さんの「自由」ですけどね。


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