映画 Great Absence を観てきた。タイトルに惹かれ、いろいろな賞をもたった映画ということで選んだにすぎない。特に監督や出演者に興味があったわけではない。
観た後の印象では、この映画はなんとも要領の得ない映画だった。宗教映画、哲学映画ではない。少しスリラー性が入った娯楽映画とでも言えるか。認知症者が増えた高齢社会への警鐘の意味が込められているのかも知れない。
ストーリーは、例えば以下のように紹介されている。
あらすじ・ストーリー ある日、卓は幼い頃に家族を捨てた父親の陽二が、警察に逮捕されたという報せを受ける。しかし、久しぶりに再会した父は認知症を患い、別人のように変わり果てていた。再婚した女性の行方も分からなくなっており、卓は父親と再婚相手のに生活を調べ始めることに。
解説・第67回サンフランシスコ国際映画祭で最高賞に輝いた他、各国の映画祭で高く評価された近浦啓監督によるヒューマンサスペンス。近浦監督の実体験に着想を得て、父の逮捕の報せを受けた男性が、認知症を患う父と再会する。主演は森山未來。共演は第71回サン・セバスティアン国際映画祭で最優秀俳優賞に輝いた藤竜也、真木よう子、原日出子ら。
要は、認知症になった親と子の親子間の愛、夫婦間の愛の「形」の話なのだが、認知症と言ってもせいぜい中核症状が出始めた程度の頃の話だ。施設の描写も出てくるがわずかだ。認知症ってこんなもの、という印象を残すとしたら残念だ。一部は監督の自伝でもあるというが、主人公(父親)が物理学者だったとか、アマチュア無線に凝っているとか描かれているが、本当だったかはわからない。
役者の演技力についてはよくわからない。みなさん、演技と言うよりはおそらく地のままでは、という印象を受けた。それはそれでよかった。
でも 不在、Absence とは何のことだったのだろう。親子の関係が25年間切れていたということなのか。認知症が25年間の夫婦間の愛情を切り裂いた、という意味なのだろうか。この映画は、認知症を描いているというよりは、家族内の愛情の形、あり方(豊かさと残酷さ)を描いているように思えた。それにしてもなんとも要領を得ない映画だった。
【大いなる不在】