桟橋で釣りをしている人が「久しぶりだね。」と声をかけてきた。
小さな島に住んでいても生活パターンが違うと、
なかなか出会わないものだ。
声をかけてきたのは「ワシャーヤーのアバサー」
と呼ばれているオジサン。
ワシャーヤーとは肉屋さんのことで、アバサーは
おしゃべりな人のことをアバサーと呼ぶ。
いつも口をパクパク動かしているから。
長い付き合いであるが本名は知らない。
そしてなによりもアバサー汁が大好物。
フグの仲間であるハリセンボン、ヒトズラハリセンボン、
ネズミフグ、イシガキフグのことを沖縄ではまとめて
「アバサー汁」として賞味してきた。
フグ類については、食中毒を防止するため厚生労働省による
調理法の規制がある。
その中で、アバサーの筋肉、精巣は食べてもよいことに
なっていた。
それでも安全に配慮してか、
沖縄では「県フグ取り扱い要網」にもとづき、調理
加工する処理者、販売する取り扱い者には、毒を持つ
フグ並みの講習会受講を義務付けてきた。
1994年、県衛生研究所は沖縄近海産アバサーについて、筋肉、
肝臓は無毒との研究結果を発表した。
これで安心して食べられるということになったが
卵巣についてはその毒性が依然として不明だという。
県内ではこれまで中毒の報告例はない。
沖縄に住んでいると身近なアバサー料理であるが、
本土からきてアバサーを食べようにも
アバサー料理を出している店はあまりない。
沖縄では「ヌチグスイ」と呼ばれている。
高血圧、更年期ののぼせを下げるといわれているが科学的に
証明されているわけではない。
臭みが気になる人は「肝抜き」で注文してください。