安藤先生の月刊ブログ 「きらめき」

何気ない毎日に"きらめき"を感じていますか?

梅一輪

2013年03月04日 | 月刊ブログ
梅一輪 一輪ほどの暖かさ
 梅の花が、ひとつ二つ咲くごとに、暖かくなるという句です。本当に、日ごとに春の訪れを感じるころになりました。
 実家の庭の梅の木も、娘が卒業するときにいただいた1本の苗木を植えてから、5年が経ち、花の数を毎年増やしています。こんなに成長した梅の木にわが子の成長を重ね合わせて、感無量になります。

 学校では、佐世保校も長崎校も卒業式を迎えました。
 佐世保校では、3月1日に卒業式が挙行されました。公務員試験に合格するための、勉強が中心の学校生活でしたが、一つのことに打ち込んだ短い期間に、これまでにない充実感を覚えているようでした。目標を達成できたことに、自信と満足が伺えます。
 校長先生から一人ひとりに手渡される卒業証書に、緊張の中にも少し照れてる学生、誇らしげな学生など、それぞれの顔をじっと見つめると、これまで一生懸命勉強してきた全員がいとおしくなりました。よくがんばったね、「おめでとうございます」と心の中でつぶやきました。
 
 先日、郊外のレストランでお昼を取っていると、お店の庭の枯れ木に、半分に切ったみかんが突き刺してあって、それをメジロが食べに来ていました。もう慣れているのか、私の席の近くの窓際まで来ていて、ガラス越しに、かわいらしい丸々としたうす緑色の小鳥がみかんのかけらをついばんでいました。
 そういえば、実家でも父がよくみかんを庭の枯れ木に刺して、それを食べに来るメジロやヒヨドリを眺めていたのを思い出します。体の大きなヒヨドリが来ると、メジロが恐れて葉っぱの影にかくれて様子を見ています。食べずに飛んで逃げていくこともあって、かわいそうだと、父がよく言っていました。

 季節ごとの短い期間に訪れる命のうつりかわりは、気がつかなければ知らずに通り過ぎて行きますが、ちょっとだけ目を向けてみると、なんと不思議で美しい光景なのかと驚いてしまいます。

 日々の移り変わりは、自然の様子だけではなく、この学校にくる若い学生たちの中にも現れます。
 この学校で過ごす1年間、または2年間は、伸び盛りの青年たちに大きな心の変化をもたらします。
 佐世保校の卒業式の答辞を読む学生は、担任ではない私でも、その成長の著しさがわかります。目標を見つけ、それによって周りが見えてきて、優しさや思いやりが、その言葉や行動に出るようになりました。公務員試験に立ち向かう気力や、できないことをできるようにする努力、思うようにならないことを解決していく忍耐力など、公務員内定を勝ち取るまでには、本当に大変な道のりでした。
 しかし、目標を達成して卒業の日を迎え、長かった冬の次に来る梅一輪の春に、心も体も暖かくなったに違いありません。
 そして、彼の答辞には、両親への感謝の言葉がしっかりと記されていたことに、私は、なおさら、驚きに似た喜びを感じてしまいました。

 卒業のこの時期には、私たちは、いつも、たくさんの学生たちの成長を感じます。1年前は、2年前は・・・など、今では笑い話になる一人ひとりのエピソードを思い出しては、みんな大人になったね、と心の中でつぶやくのです。
 こんな心のうちを、私たちは卒業する学生に伝える術を知りません。この気持ちを学生たちは察してくれているかな。
 でもこの気持ちは、相手に伝える気持ちではなく、私たちが頑張ってきたことを、自分自身で確かめる「満足感」「充実感」そして「やりがい」として、また、次の年度につなげていくエネルギーになるのだと思います。

 今日は、長崎デュアルシステム専門学校の卒業式でした。学生数は少数で制限されていますが、厳粛な卒業式と、そして保護者の方も参加いただいての和やかな祝賀会でした。
 2年間を振り返って「ありがとうございました」と涙する卒業生の心のなかに、いつまで、この学校が拠り所として、残っていくのでしょうか。忘れてほしくはないけれど、忘れるぐらい成長してくれることを、祈っています。

 もうあと一月もすれば、新入生がやってきます。本当の春が訪れるのです。

photo by mizutani

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