風薫る5月、新緑が目にしみる季節になりました。学校横の公園の木々も若草色の新芽を付けているのを見ると、命の勢いをまぶしく感じます。
学校では、入学してひと月が過ぎ、学生たちは学校にもすっかり慣れた様子で、日々の勉強に力を注いでいるところです。
4月の末には、2時間ほど歩いて「森きらら」という動植物園に遠足に行ってきました。
たまには童心に返って動物と触れ合ったり、春の花々を愛でたり、学生たちともふざけ合ったりと、楽しい時間を過ごすことができました。
園内では、大勢で見て回る人や、2,3人で仲良く笑い合っている人たちや、一人であっちのグループ、こっちのグループと渡り合っている人など様々です。
新しくできたペンギン館が一番の人気で、かわいらしいその泳ぎに、私は小一時間ほどくぎ付けになってしまいました。
園内ですれ違う学生たちは、私に一言掛けていってくれます。「先生、キリン見ましたか?」「植物園に、パピルスありましたよ。」パピルスは、私が授業で説明した古代エジプトの植物です。そんな声掛けで、まだ知り合って日が浅い関係が少しずつ深まっていくようでした。
NHKのEテレで、芸人の又吉直樹さんが出ている「オイコノミア」という番組を時々見ます。「オイコノミア」とは、古代ギリシャ語でエコノミクス(経済学)の元になった言葉だそうです。その又吉さんの風貌と「経済学」というミスマッチな組み合わせに興味をそそられました。
公務員試験の科目にもなっている「経済学」は、一見難しそうな名前ですが、私たちの日常にとても関わりの深いものだと思います。生活の仕方や、モノの捉え方など私たちの周りには経済学の視点から考えることがたくさんありそうです。
最近よく「インセンティブ」という言葉を耳にします。番組でもこのことを取り上げていました。仕事のやる気が出ない、勉強にも身が入らない、そんなときに経済学の観点からアプローチする、やる気を引き出すごほうびの与え方の工夫です。東京都で実施している、健康診断に行ったら100ポイント、禁煙したら100ポイントを与えることで、健康に関心を持ってもらい医療費の削減につなげる政策などもインセンティブです。溜まったポイントは健康器具などと交換できるので楽しみだと言います。
この学校に来ている学生たちは、公務員になるという目標を持って日々勉強に取り組んでいます。私たちは、模擬試験の上位者の成績を貼り出したり、体育を行ったりと、いろんな面からの効果を期待して、学生の最終目標達成をサポートしています。
勉強を頑張った人は、教室に名前を掲示されて誇らしげです。全く関係のないことのような体育でも、気持ちがリフレッシュできることでやる気を誘引したり、励みを与えたりとしているのです。希望の仕事に就けるように応援していくことは、うまくインセンティブを与えて、学生自らのモチベーションを引き出していくことに繋がるからです。
先日、数年ぶりで学生時代の友人と会って食事をしました。今の生活から、子供のこと、これからのことなど話は尽きず時間を忘れて話し込んでしまいました。友人は、私が今の仕事が21年目に入ると言うと、「よく頑張ったね!達成感あるよね。」と驚きながら言ってくれました。そう言われると、今までの大変だったことなど思い出して、自分でも何となく充実したものを感じることができました。この数週間、仕事が忙しく疲れ果てていた私でしたが、これからも頑張ろうというエネルギーが湧いてきました。
人から褒めてもらったその嬉しさが、次へのエネルギーへと確かに繋がりました。これがインセンティブ効果なのでしょうか。
人の心は、お金や物ではなく、たったの一つの言葉で動き出すことがあるのだと思います。それがオイコノミア的(経済的)な効果を上げることになるのですね。
最終内定までの道のりは、今始まったばかりです。これからもあらゆる視点から学生のサポートをしていきたいと思います。
このブログも、今月号で11年目に突入しました。たくさんの方に読んでいただいて、感謝いたします。私のもう一つのインセンティブになりました。
今月の花は、黒法師。原種は、スペイン・モロッコ・ポルトガル・シシリーに自生しているそうです。春から夏にかけて成長しますが、夏場に成長がとまり、お休みして冬になると元気になって成長します。肉厚で、ビロードのような黒い色も形も神秘的な植物です。
Photo by mizutani