新しい年が始まりました。センター試験の前までは、例年になく極寒で一面雪に覆われた日もありました。
昨年は、私個人としては、体調管理ができず、あちこちの病院に通い詰めていました。体調管理も社会人としての必要条件だといつも学生たちに言っていたのに、大きい顔ができなくなりました。今年は、とにかく健康で一年過ごせるように、初詣で「健康第一」をお祈りしてきました。
最近は、昨年末から、ニュースで流れる将棋の話題が気になっています。
これまでも何度も聞いたことのある羽生善治さんの、ついに獲得した「永世七冠」達成のニュースは、皆を驚かせました。
私は幼いころ、父方の、比較的年の近い、まるで兄弟のようにして育った叔父とよく将棋を指していました。小学生の私は、駒が持つ決まりだけを覚えてのものでしたが、クイズのようなそのゲームに夢中になっていました。最近になって、中学生の藤井4段の話題から、一躍将棋がテレビでの話題になってきたことで、遠い昔の忘れていた思い出がよみ上がってきました。機会があれば、このブームに乗ってもう一度始めてみたいと思うくらいです。
19歳で初タイトルとなる竜王位を獲得し、今年、棋士30年目を迎え、名人戦防衛など、47歳になった今も将棋界で最強の名をほしいままにしている羽生善治さんは、就位式で「『初心忘れるべからず』という言葉があります。将棋を覚えた時、棋士を志した時、初タイトルを獲得した時、今日のような節目など、それぞれの一番最初の気持ちを忘れずに前に進んでいきたい」と謝辞を述べました。
15歳の中学生藤井4段と対決を控えても、羽生さんはいつもと変わりなく、「年齢による変化を自認し、それに合わせた戦い方を作り上げる。『彼を知り己を知れば百戦して危うからず』という孫子の教えに則り、正確な自己分析のもと、戦いのスタイルをリニューアルしている。」といいます。その結果が「永世七冠」という快挙だったのでしょう。常に変化し続ける柔軟性が羽生さんの強さではないかと多くの人は言います。
また、「三手先を読む」ことと同時に「鳥瞰・俯瞰して判断する」という二つのことをバランスよく使い分けることが大切だと羽生さんは言います。
「鳥瞰・俯瞰して判断する」ことは感覚的なため、「三手の読み」のようにロジックを積み上げることが必要だといいます。
羽生さんは、やはり年齢による記憶力やスピードの低下は否めないが、若いころと同じように、新しいものを追求していく探究心を持ち続け、またたくさんの経験を積んできたことで、現在の自分にあったペース配分も考えて対局に臨んでいる、そういうトータルな面でカバーしている、と言っていました。
学生たちに、羽生さんの生き方を説くのは、まだ難しいところもあるかもしれません。ある特殊な仕事を極めてきたプロフェッショナルの流儀は理解しがたいものもあることでしょう。しかし、羽生さんが言っていることは、これから仕事に就く学生たちにもわかるはずです。
絶対に警察官になると決意してこの学校に入学した時、合格内定の通知を受け取ってこれからの警察官としての仕事人生をイメージした時、地域の安全、安心をこの手で守るのだと決意した時、その時々の決意や感動は、何年たっても自分の心のよりどころとして、忘れてはいけないということです。
また、羽生さんが言う「三手の読み」は、未来をただ想像するのではなく、確固たる論理やロジックによって近い将来の予測を立てることです。それに加えて、鳥瞰すること、高いところから全体を見渡す視野の広さも必要なのです。
言えることは、とてつもない努力を重ねてきた人だけがそのタイトルを手に入れることができるということと、加えて、そのタイトルは個人の目指すものによって違っているということです。
学校では、今月、市町村役場の公務員試験が時期外れに実施されます。今年度結果が出せなかった学生にはチャンスです。これで決まれば、30年4月に一緒に採用となります。それぞれが目指してきた目標へのゴールへは、まだ間に合わせることができるのです。最後まで、初心を忘れず強い気持ちをもって頑張ってほしいと願っています。
写真は、実家の庭に咲いていた懐かしい寒椿です。灰色の冬景色の中に、ぱっと明るくアピールしています。
Photo by mizutani