７月は、全国に豪雨が襲いかかりました。息が詰まるような光景が報道され、自然の驚異に人間の無力さを感じました。
ここ佐世保でも全国ニュースで洪水の様子が報道され、友人知人から心配のメールをいただきましたが、学校や学生たちには大きな被害はなく、幸いでした。公共交通機関がストップしたため、本校は二日間休校、市内の小中学校も大事を取っての決定でした。
学校では、コロナで延期になっていた上級公務員試験が実施され、合格の知らせが少しずつ届いています。順調に一次を突破して、二次試験の面接に備えています。
面接練習では、大きな声を出すことが、元気とやる気を表します。選ばれる人になるよう、自分の持てるすべてのものを出して取り組んでいってもらいたいです。
文章理解という科目の授業で、名作や名文が出てくることがあります。
文章を読むとき、黙読と音読があります。黙読は、目だけで文字を追い、文章を読んでいきます。音読は、目で文字を追い声に出して読んでいくことで、自分の声を耳で聞くことができます。耳に聞こえる自分の声のリズムやテンポは、いつの間にか記憶に残っていきます。幼い時の童謡を今でも思わず口ずさんでしまうように、小学校や中学校の時に暗唱した詩歌や名文は、数十年経っても口をついて、次の文言が呪文のように出てきます。その時にその文章の意味がきちんと解っていたのかは疑問ですが、今になってから、覚えている名文の意味が理解できることもあります。
宮沢賢治の「雨ニモマケズ」は全文を暗唱しました。高校になると、高村光太郎の『智恵子抄』の中の「檸檬哀歌」や「あどけない話」なども多感な思春期の背伸びした思いで暗唱していました。中原中也の『サーカス』なども「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」と今でも口をついて出てきます。
詩の内容も完全に理解できなかったけれど、暗唱することが嬉しかったのだろうと思います。それが今も記憶にあることに驚いてしまいます。
人は老いていきます。老いていく中で、幼少期に覚えた童謡や童話が口をついて出てくると言うのは、懐かしさとともに喜びでもあります。
自分が重ねてきた年月とともに、暗唱した様々な言葉によって自分の過去と現在が結び付けられているような気がします。幼少のころの自分が数十年の時を隔てても、自分の中に生き続けていることは、自分の人生を肯定する力になるのだと、教育学者の齋藤孝氏は著書『声に出して読みたい日本語』の中で述べています。
授業の中で取り上げた古文解釈に出てきた『平家物語』の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。」は学生のほとんどが暗唱していました。最初の一文だけだとしても、私は驚きを隠せませんでした。自分が覚えた文学を、今の学生も覚えていることに感動すら感じました。
日本の暗唱文化として「日本語の宝石を身体に埋めておく」と表現した先の齋藤氏は、「年齢を重ねていく自分への贈り物として、日本語の宝石を身体に内在させて、生涯にわたって折に触れてその輝きを味わうことができる」と述べています。
私も、今回、「檸檬哀歌」を暗唱してみました。忘れているところもありましたが、一生懸命覚えたその時間を昨日のことのように思い出してしまいました。
先週行われたオープンキャンパスには、卒業生に来てもらって「合格体験発表会」を開催しました。佐世保市役所、川棚町役場、長崎県職員・教育事務、長崎県警、佐世保市消防から、勤続１０年から２年目の人たちが、後輩のために快くオファーを受けてくれました。
それぞれ、現在の部署や仕事内容、やりがいなど。次に勉強の仕方や試験への向き合い方、最後にどんな後輩に来てほしいか、などしっかりと丁寧に話をしてくれました。毎年のことですが、社会人としての言葉遣いや振る舞いも本当に立派になっていました。感無量です。その成長に親心にも似た感動を覚えます。
印象に残ったのは、どんな人に来てほしいか、という問いに対して、やる気がある人、面白い人、真面目な人、そして気が利く人、との答えでした。学生たちも生の声にきっと刺激を受けたことと思いました。私たち職員にとっては、懐かしく嬉しい時間になりました。
今月の花は、梅雨時期から夏にかけて花開くアガパンサスです。「紫君子蘭（ムラサキクンシラン）」という和名もあり、青紫色や白の清涼感ある花色が印象的で、すっと長く伸びた茎の先にたくさんの小さな花がつき、その姿は優雅で独特の存在感があります。丈夫な性質で、植えっぱなしでも育つため、つい先日も、街中の公園で見かけました。
Photo by mizutani
