11月といえば15日にボジョレーヌーヴォーが解禁されます。
そんな時節にDVDにて鑑賞しました。
原題“The Vintners Luck ”ニキ・カーロ監督作
フランスのワイン産地ブルゴーニュの葡萄農園が舞台のニュージーランド映画です
本当はワイン・・・というよりも天使さんに興味を持って映画をみたので、感想も天使さん中心に書きたいと思います。
以下ストーリーはネタばれで書きます。これから見る方はご注意ください。
19世紀はじめフランスブルゴーニュ、葡萄を栽培しワインを作る農園を経営するヴリー伯爵の小作人のなかにワインへの鋭い味覚と葡萄栽培に深い洞察力をもった青年がいた
彼の名はソブラン・ジョドー
老いた父と暮らしている。ソブランは可愛い小作人の娘と恋仲である。
名をセレストという。
でも彼女の父は狂人でソブランの父は二人の仲を反対している。
また、葡萄栽培やワイン作りもシャトーのヴリー伯爵と意見があわない。
ソブランは経験や知識や感覚を使って自分なりのワインを作りたいと嘆き、ある夜シャトーからくすねたワインをラッパ飲みしながら葡萄畑をあるいていたら・・・
酔っ払って幻を見たのか天使の姿が見える。
思わず倒れそうになった彼をさっと受け止めたのが
天使ザス
大柄でかなりマッチョです。
天使さんというと白くて足首まであるローブを着ているイメージですが、ザスは白いズボンを履いています。
上半身には白い布がちょっとかかっている。胸板が厚い天使なのでなんだかドキドキしました。
そして黒髪で左頬にくぼみのある顔立ちは端正だけど上品にも下品にも見える顔立ち。
そして思った以上に羽が大きい。大柄な体を飛び立たせるにはこれくらいの大きさが必要ということかな。
その羽でフワッと包むように酔っぱらって気絶したソブランを囲ってしばらく見つめている。
気付いたソブランにセレストに手紙を書くようにアドバイスし1年後に会う約束をする。ソブランはザスの残した羽をペンにして手紙を書く。
1年後念願かなって結婚したソブランに天使ザスは土の成分を吟味させ、痩せた土地で育たないと思われ続けた尾根で栽培するように天使の農園の苗を与え助言する。そして毎年同じ日の夜に会う事を提案する。
その後ソブランはナポレオン軍の過酷なロシア遠征に入隊して父の死に目にあえず、自らも命からがら帰還する。
そんな自分の試練を天使ザスに怒りを向けるが、ザスは
「父親は従軍してなくても死ぬ運命だった。セレストはソブランが従軍するのを許し、一人で家を守ったんだ」と答える。
そして
「ソブラン、あなたのことをもっと知りたい」と言う。
これは事実上愛の告白のようです。
ソブランはそっと家に案内し生まれたての次女をザスに見せる。
あらためてワイン作りへの覚悟を確認するザス。
その後尾根で栽培した葡萄が実り、家庭で妻セレストと協力してワインを作り、家族を連れてシャトーのヴリー伯爵に自信作を渡しに行くと、伯爵の姪の男爵夫人オーロラがシャトーに到着した。黒衣を来ているので多分未亡人なのでしょう。知的で上品なオーロラはソブランに興味を感じる。セレストは察知して嫉妬を感じる。
そんな時幼い次女が病死してしまう。天使ザスの胸に顔をうずめ悲しむソブランは、天国に行って娘の様子を見に行って欲しいと頼む。戸惑うザス。
そしてヴリー伯爵も病死。跡を継いだオーロラは遺言に従いソブランにワイン作りのパートナーに任命する。
ワインは満足のいく出来になり、シャトーで重用されているソブラン一家はようやく余裕が出来てきた。
次に天使ザスに会ったとき、ソブランは有頂天。自分の運の良さを嬉しそうに言う。
「天使の君が証拠さ」
だがザスはとまどいながら言う。
「天国に住まない天使もいる。地獄に住む天使も。そこに僕の庭がある」
驚き、狼狽し逃げて病になる。
ザスは駄天使だったようです。でも、そんなに毛嫌いしなくてもいいのに。ザスはワイン作りのアドバイスをしたりいつも穏やかに接してソブランの話にもじっと聞いて、一度も悪い事はしてないじゃない。
地獄というのは、私見では何にも報われない不毛と苦痛な場所だと思ってますが、農園を作り畑を耕し(地獄の異形の住人が働いているのかな?)収穫し美味しいワイン作りをする成果のある所なら存外いい所かもしれません。そして地獄の住人にそんな幸せを与えているザスはやはりいい天使さんじゃないかな。
なんとなく仏教で地獄に落ちた人間までも面倒みてくれるというお地蔵さんとも近い存在なのかしらと思いました。
ザスは綺麗な顔だちだけど、一般的な天使像のような崇高で近寄りがたい雰囲気ではないのは天国の天使じゃなかったからなんですね。
その年のワインは不作になり、オーロラは病気になり手術をうける。
この手術が麻酔が時代的にないのです。オーロラは手足を侍女たちに抑えられ手術をうけます。・・・実は私も似た経験があります。私は看護師さん二人にがっしと抑えられました。このシーンはその時の痛みを思い出してしまいました。
ソブランはあらためてザスに会う。そして何者かを問う。
「君の天使だ」
そして
「天使であり悪魔だ」
ザスは天国は善、地獄は悪と割り切れない中間に世界があると信じ自ら駄天使となったという。
2つは背中合わせ、喪失なしに愛はなく、絶望なしに喜びはない。凶作があるから豊作がある。ワインを飲めば解る事だ。
ソブランのワイン作りへの情熱に引き寄せられたと、そしてソブランもまたザスに惹かれていると言う。
その気持ちを認めるソブラン。
その様子を二人の女性が目撃していた。
一人はオーロラ。彼女はいそいで書斎の本を読み、「天国と地獄の間に真実が存在する」という文章を読み二人の関係を認める。
もう一人はセレスト。夫をたぶらかし病気にさせ、娘を奪った張本人と思い、急いで家にかえりナイフを持つ。
一方ザスは自分の気持ちを受け入れてくれた嬉しさに、ソブランへの愛情を表現するのです。これが、短いシーンながらすごく印象深い。人目をしのんでソブランの仕事部屋で大きな羽をはためかせ宙に舞いソブランを抱きしめる。いつも冷静なザスの気持ちがあふれていて一番好きなシーンです。
これだけでも見る価値があります。
そこへセレストがやってきてザスを切りつけようとし、気がふれてしまう・・・。父親の血がこんな時に現われるとは。ソブランはザスを再び拒絶する。
ワインが不作なだけでなく葡萄畑に病気が蔓延し、ほぼ全滅してしまう。
落胆するソブランに対しオーロラはすぐに次の苗を注文。いつの間にかたくましい農園主になっていた。
泣きながら思い出の多い尾根の葡萄の木を掘り起こすソブラン。ただ一本だけが生き残り小さいけど健やかな新芽が顔を出し成長し、やがて新しい苗もやってくる。再び活気がもどってくる。
オーロラはソブランに天使ザスに会うよう促す。
「あなたに必要な存在よ」
そして会ったザスにソブランはこれまでの感謝の言葉を述べる。そう、恋人との結婚を促し、ワイン作りのアドバイスをしたり良質の苗木を与えたり、彼の幸せを導いてきたのです。
かつてザスは言いました。
「生きるには喜びも悲しみも必要だ」
人間より遥かに長い時間を生きてきた天使だからこそ、深い理解をもって言えるのでしょう。彼の視線の先は天上じゃなく、ずっと地上に蠢く人々だったのでは。だから愚かな振る舞いで地獄に落ちた人も見捨てなかったのじゃないでしょうか。
ソブランもそんな人生を生きてきました。これは私達も同じ事。良いこともそうでない事も混ざり合って人生の味わいとなりやがて芳醇なワインができあがる。
農園の次のワインは良き味わいとなるでしょう。
ソブランはあらためていてほしいと頼む。
その言葉をうけてザスはソブランに一つ頼む・・・。
ザスはやっぱりかなり優しい人柄(天使柄?)のようです。
私としてはずっと不思議な存在でいてほしかったので、残念。
それほどソブランを愛してるのでしょうが、ずっと地獄で地獄の住人に労働し収穫する喜びを与える存在でいてほしかったなぁ。
ソブランはセレストに献身的に愛され、天使に愛され、領主オーロラに愛され、ワイン作りにも才能を発揮しました。
原題の“The Vintners Luck ”とはまさにその通り。
チャーミングな天使さんの役を演じたのはフランス人俳優ギャスパー・ウリエル。
「ハンニバル・ライジング」では若き日のレクター博士を演じたそうです。まさに天使であり悪魔でもありますね。
左頬のくぼみは小さい頃ドーベルマンに噛まれた傷跡だそうです。
セレストを演じたニュージーランドの俳優ケイシャ・キャッスル=ヒューズの情念の演技も印象深いです。特に嫉妬心を露にする表情が迫力ありました。
シャトーと農園の風景が美しく、実は下戸ですが(汗)そんな私でもワインを飲みたくなる映画でした。
そんな時節にDVDにて鑑賞しました。
原題“The Vintners Luck ”ニキ・カーロ監督作
フランスのワイン産地ブルゴーニュの葡萄農園が舞台のニュージーランド映画です
本当はワイン・・・というよりも天使さんに興味を持って映画をみたので、感想も天使さん中心に書きたいと思います。
以下ストーリーはネタばれで書きます。これから見る方はご注意ください。
19世紀はじめフランスブルゴーニュ、葡萄を栽培しワインを作る農園を経営するヴリー伯爵の小作人のなかにワインへの鋭い味覚と葡萄栽培に深い洞察力をもった青年がいた
彼の名はソブラン・ジョドー
老いた父と暮らしている。ソブランは可愛い小作人の娘と恋仲である。
名をセレストという。
でも彼女の父は狂人でソブランの父は二人の仲を反対している。
また、葡萄栽培やワイン作りもシャトーのヴリー伯爵と意見があわない。
ソブランは経験や知識や感覚を使って自分なりのワインを作りたいと嘆き、ある夜シャトーからくすねたワインをラッパ飲みしながら葡萄畑をあるいていたら・・・
酔っ払って幻を見たのか天使の姿が見える。
思わず倒れそうになった彼をさっと受け止めたのが
天使ザス
大柄でかなりマッチョです。
天使さんというと白くて足首まであるローブを着ているイメージですが、ザスは白いズボンを履いています。
上半身には白い布がちょっとかかっている。胸板が厚い天使なのでなんだかドキドキしました。
そして黒髪で左頬にくぼみのある顔立ちは端正だけど上品にも下品にも見える顔立ち。
そして思った以上に羽が大きい。大柄な体を飛び立たせるにはこれくらいの大きさが必要ということかな。
その羽でフワッと包むように酔っぱらって気絶したソブランを囲ってしばらく見つめている。
気付いたソブランにセレストに手紙を書くようにアドバイスし1年後に会う約束をする。ソブランはザスの残した羽をペンにして手紙を書く。
1年後念願かなって結婚したソブランに天使ザスは土の成分を吟味させ、痩せた土地で育たないと思われ続けた尾根で栽培するように天使の農園の苗を与え助言する。そして毎年同じ日の夜に会う事を提案する。
その後ソブランはナポレオン軍の過酷なロシア遠征に入隊して父の死に目にあえず、自らも命からがら帰還する。
そんな自分の試練を天使ザスに怒りを向けるが、ザスは
「父親は従軍してなくても死ぬ運命だった。セレストはソブランが従軍するのを許し、一人で家を守ったんだ」と答える。
そして
「ソブラン、あなたのことをもっと知りたい」と言う。
これは事実上愛の告白のようです。
ソブランはそっと家に案内し生まれたての次女をザスに見せる。
あらためてワイン作りへの覚悟を確認するザス。
その後尾根で栽培した葡萄が実り、家庭で妻セレストと協力してワインを作り、家族を連れてシャトーのヴリー伯爵に自信作を渡しに行くと、伯爵の姪の男爵夫人オーロラがシャトーに到着した。黒衣を来ているので多分未亡人なのでしょう。知的で上品なオーロラはソブランに興味を感じる。セレストは察知して嫉妬を感じる。
そんな時幼い次女が病死してしまう。天使ザスの胸に顔をうずめ悲しむソブランは、天国に行って娘の様子を見に行って欲しいと頼む。戸惑うザス。
そしてヴリー伯爵も病死。跡を継いだオーロラは遺言に従いソブランにワイン作りのパートナーに任命する。
ワインは満足のいく出来になり、シャトーで重用されているソブラン一家はようやく余裕が出来てきた。
次に天使ザスに会ったとき、ソブランは有頂天。自分の運の良さを嬉しそうに言う。
「天使の君が証拠さ」
だがザスはとまどいながら言う。
「天国に住まない天使もいる。地獄に住む天使も。そこに僕の庭がある」
驚き、狼狽し逃げて病になる。
ザスは駄天使だったようです。でも、そんなに毛嫌いしなくてもいいのに。ザスはワイン作りのアドバイスをしたりいつも穏やかに接してソブランの話にもじっと聞いて、一度も悪い事はしてないじゃない。
地獄というのは、私見では何にも報われない不毛と苦痛な場所だと思ってますが、農園を作り畑を耕し(地獄の異形の住人が働いているのかな?)収穫し美味しいワイン作りをする成果のある所なら存外いい所かもしれません。そして地獄の住人にそんな幸せを与えているザスはやはりいい天使さんじゃないかな。
なんとなく仏教で地獄に落ちた人間までも面倒みてくれるというお地蔵さんとも近い存在なのかしらと思いました。
ザスは綺麗な顔だちだけど、一般的な天使像のような崇高で近寄りがたい雰囲気ではないのは天国の天使じゃなかったからなんですね。
その年のワインは不作になり、オーロラは病気になり手術をうける。
この手術が麻酔が時代的にないのです。オーロラは手足を侍女たちに抑えられ手術をうけます。・・・実は私も似た経験があります。私は看護師さん二人にがっしと抑えられました。このシーンはその時の痛みを思い出してしまいました。
ソブランはあらためてザスに会う。そして何者かを問う。
「君の天使だ」
そして
「天使であり悪魔だ」
ザスは天国は善、地獄は悪と割り切れない中間に世界があると信じ自ら駄天使となったという。
2つは背中合わせ、喪失なしに愛はなく、絶望なしに喜びはない。凶作があるから豊作がある。ワインを飲めば解る事だ。
ソブランのワイン作りへの情熱に引き寄せられたと、そしてソブランもまたザスに惹かれていると言う。
その気持ちを認めるソブラン。
その様子を二人の女性が目撃していた。
一人はオーロラ。彼女はいそいで書斎の本を読み、「天国と地獄の間に真実が存在する」という文章を読み二人の関係を認める。
もう一人はセレスト。夫をたぶらかし病気にさせ、娘を奪った張本人と思い、急いで家にかえりナイフを持つ。
一方ザスは自分の気持ちを受け入れてくれた嬉しさに、ソブランへの愛情を表現するのです。これが、短いシーンながらすごく印象深い。人目をしのんでソブランの仕事部屋で大きな羽をはためかせ宙に舞いソブランを抱きしめる。いつも冷静なザスの気持ちがあふれていて一番好きなシーンです。
これだけでも見る価値があります。
そこへセレストがやってきてザスを切りつけようとし、気がふれてしまう・・・。父親の血がこんな時に現われるとは。ソブランはザスを再び拒絶する。
ワインが不作なだけでなく葡萄畑に病気が蔓延し、ほぼ全滅してしまう。
落胆するソブランに対しオーロラはすぐに次の苗を注文。いつの間にかたくましい農園主になっていた。
泣きながら思い出の多い尾根の葡萄の木を掘り起こすソブラン。ただ一本だけが生き残り小さいけど健やかな新芽が顔を出し成長し、やがて新しい苗もやってくる。再び活気がもどってくる。
オーロラはソブランに天使ザスに会うよう促す。
「あなたに必要な存在よ」
そして会ったザスにソブランはこれまでの感謝の言葉を述べる。そう、恋人との結婚を促し、ワイン作りのアドバイスをしたり良質の苗木を与えたり、彼の幸せを導いてきたのです。
かつてザスは言いました。
「生きるには喜びも悲しみも必要だ」
人間より遥かに長い時間を生きてきた天使だからこそ、深い理解をもって言えるのでしょう。彼の視線の先は天上じゃなく、ずっと地上に蠢く人々だったのでは。だから愚かな振る舞いで地獄に落ちた人も見捨てなかったのじゃないでしょうか。
ソブランもそんな人生を生きてきました。これは私達も同じ事。良いこともそうでない事も混ざり合って人生の味わいとなりやがて芳醇なワインができあがる。
農園の次のワインは良き味わいとなるでしょう。
ソブランはあらためていてほしいと頼む。
その言葉をうけてザスはソブランに一つ頼む・・・。
ザスはやっぱりかなり優しい人柄(天使柄?)のようです。
私としてはずっと不思議な存在でいてほしかったので、残念。
それほどソブランを愛してるのでしょうが、ずっと地獄で地獄の住人に労働し収穫する喜びを与える存在でいてほしかったなぁ。
ソブランはセレストに献身的に愛され、天使に愛され、領主オーロラに愛され、ワイン作りにも才能を発揮しました。
原題の“The Vintners Luck ”とはまさにその通り。
チャーミングな天使さんの役を演じたのはフランス人俳優ギャスパー・ウリエル。
「ハンニバル・ライジング」では若き日のレクター博士を演じたそうです。まさに天使であり悪魔でもありますね。
左頬のくぼみは小さい頃ドーベルマンに噛まれた傷跡だそうです。
セレストを演じたニュージーランドの俳優ケイシャ・キャッスル=ヒューズの情念の演技も印象深いです。特に嫉妬心を露にする表情が迫力ありました。
シャトーと農園の風景が美しく、実は下戸ですが(汗)そんな私でもワインを飲みたくなる映画でした。