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空海 ーKU-KAIー 美しき王妃の謎  妖猫傳

2018-03-04 02:10:59 | 銀幕

陳凱歌(チェン・カイコー)監督作品。原作:夢枕獏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。日本中国合作映画。

空海と、宮廷で知り合って行動を共にする白楽天は、まるでコナン・ドイルのシャーロック・ホームズとワトスンのようでした。空海はのちに密教を極めた人物だけあって、表面に現れる幻想に騙されずにその奥の真実を白楽天と共に解明していく。

そして、エドガー・アラン・ポーの「黒猫」にも通じるものがあると思いました。先ずは黒猫、眼、壁、そして死の真相。怪奇な彩り。

 

この映画の空海(染谷将太)は、これまで教科書や絵や木像などを見て感じた空海の男性的なイメージとは違いましたが、いい感じなんです。立ち居振る舞いが優雅で、上半身をあまり動かさずささっと速足で長安を歩く。堅物な人ではなく世間の喧噪にも順応し、しなやかに妓女と舞もする。それでいて俗に染まらないで凛とした雰囲気がありました。丸顔の優しいお顔の感じが陳凱歌の過去の作品「花の生涯 梅蘭芳」の主人公梅蘭芳(メイ・ランファン)の青年時代を演じた余少群(ユイ・シャオチュン)と似ていて、更に「さらば我が愛 覇王別姫」の主人公でレスリーが演じた京劇女形の程蝶衣(チャン・ティエイー)にも通じるものを感じました。

知り合ってすぐに唐の皇帝の死を看取ることになった空海と白楽天(黄軒ホアン・シュエン)は二人して不可解な死の原因を調べ始める。白楽天はちょうど玄宗皇帝と楊貴妃の愛を物語る詩を書き始めていて、でも自分の詩に確信が持てないでいました。

二人は謎の黒猫が関係していることに気づく。

 

黒猫によって呪われ破滅する人々・・・

 

その謎を解いてゆくと、30年前の玄宗皇帝と楊貴妃の真実の物語が現れてくる

 

その楊貴妃(張榕容チャン・ロンロン)は西洋系の顔立ちで、やはり以前から思っていた楊貴妃のイメージと違ってました。映画の初めに楊貴妃は西方の人であると語られているので辻褄はあっていますが。エキゾチックな顔立ちがさらにミステリアスな雰囲気を作っていました。

そして本当に美しいのです。玄宗皇帝が長安の民衆に楊貴妃を披露するとき、趣向を凝らしてかなり高いところから吊り下げたブランコに乗せ、楊貴妃は怖がりもせずにこいでみます。

 

空高く衣を風で翻えしている姿はさながら天女のよう。さらに母性的な優しさもあって彼女を見たり接した男の人はみな惹かれていく。

 物語は詳しくは書きませんが、切なくなったのは黒猫が枝垂れ桜の花の下で穏やかに微笑む楊貴妃を見て喜んで近寄ると、楊貴妃の姿が花びらとなって散ってきえてしまい黒猫がポツンと残るシーンです。黒猫の悲しいくらい一途な気持ちが感じられました。

 

映画には他に安倍仲麻呂を演じた阿部寛が群衆の中にいて楊貴妃を見てやはり心奪われるのですが、ついローマ人に見えてしまいました。当時の長安は国際都市だしローマ人が中にいてもおかしくないですしね(^_-)-☆

松坂慶子はしっとりとした日本女性を演じていました。

宮廷の護衛官の夫婦は気の毒でした。自分たちは恨まれることはしてなかったのに。二人はセクシー担当でもあったです☆

そして、空海が乗る遣唐使船が嵐の海にもみくちゃにされている時に、船の中で赤ん坊を抱きしめて穏やかな様子だった母子がその後どうなったのかが気になりました。嵐が過ぎ去った後、大海原に浮かぶ小さな板の上で座っていて、やはり赤ちゃんを抱きしめていたけど・・・何か超然とした風情がありました。

原作では謎を解明するのは空海ともう一人の日本人だそうですが、この映画の空海と白楽天のコンビがとてもいい感じでした。

国の違いなんて気にしない、二人協力して謎を解明してゆく。それが新たな道を拓けていく

日本ともつながりの深い陳凱歌監督の意向が感じられる取り合わせだと思いました。

エンディング曲は日本ではRADWIMPSの歌で、映画の雰囲気と結構あってました。エンディングを聞きながら感じたのですが、あの「君の名は。」と同じように多くの人に、特に若い人達に見に来ることを願っているのでしょう。中国映画というと何となく見ないでしまう人も。日本の俳優を前面に出して、角川映画らしく宣伝も華やかに邦画のイメージを強くしたのも観客動員の作戦の一環なのだなと思ったのです。映画の内容は同じですしね。中国のタイトルは「妖猫傳」だそうですが、おそらく中国では空海という人物が日本ほど有名ではないのでこのタイトルになったのでは(私だって中国の高名な僧侶のお名前を知らないでいる)。だとすれば邦題の「空海 美しき王妃の謎」もありだと思うのです。映画の中では両方のタイトルも出ますし。

でも字幕版がないのは、やはり残念でした。

ある程度観客が動員できたなら、是非字幕版の上映もしてほしいです。中国語で聞いてみたい。染谷君の中国語も聞いてみたいし、李白の詩も原語で聞いてみたいです。

中国映画で度々これでもか!というくらい現実ではありえないほど豪華絢爛な舞台や衣装で完璧な美の世界を作り上げた作品を見ますが、私は実は、完璧な画面に跳ね返されて物語に気持ちが入れないでいました。装飾過多に思えたのです。が、陳凱歌監督のこの作品は唐の時代の長安の街や行き交う人の服装も再現されて見ている自分も街に入り込むような気分になれて、宮廷では思いっきり最新技術を使い幻想的な宴や豪華な舞台や衣装にも情感やはかなさも感じて美しさを堪能しながら物語に入ってゆけました。

黒猫も可愛かった!です

 


2 コメント

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にゃ~ (ごみつ)
2018-03-07 01:16:23
こんばんは。

先日は楽しい時間を有難うございました。
中華街も楽しいけど、映画を見るのもホントに楽しいですね!
また是非、集いましょう~。

himariさんらしく、とても細かいところまで見ていて、素晴らしい記事です!
そう言えば確かにちょっとポーの「黒猫」っぽい感じもありましたね。

この映画をきっかけに、中華映画の面白さを発見してくれる人が増えると良いな。
そういう意味では日本語吹き替え版をメインにしたのは正解だと思うけど、せめて1日に1回でも良いので中国語版があると嬉しかったですよね~。
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ぐるぐる~ (himari)
2018-03-08 00:06:37
ごみつさん
私こそ先日は楽しかったです。
中華迷同志で中華映画を見るのは楽しいです!(やっぱり私たちにはこの映画は中華映画ですよね)そのあとの中華ランチも楽しかったです♪是非またご一緒に☆

確かにちょっとポーの「黒猫」っぽい感じもありましたね。

そうなんです。そっくりではないけど、キーワードは共通していると思いました。
映画の中の黒猫はよく威嚇しながら喉をぐるぐる鳴らしていて不思議でした。猫の不気味さを醸し出しているのだと思うのですが、ぐるぐる鳴らしているときは本来は甘える時やお乳を飲むときですもんね。
時に切ない表情になって見ていてキュンとなりました。
映画は面白かったし、長安の街の様子を見るのは楽しかったです。街並みが日本の江戸時代みたいで、服装が奈良時代のとそっくりで(いや日本が影響を受けている)太鼓橋もありました。
空海と白楽天のコンビもとっても良かったです。またこのコンビで怪事件を解明してほしいな、て思いました。中国も日本も両方から見ても気持ちのいいコンビですよね☆

上映が吹き替え版だけだと聞いて最初に不安だったのは、話題集めのためタレントさんが登場人物の吹き替えをやって、それが合わなくて映画を台無しにしてしまうのは嫌だなという事でしたが、自然に聞こえて良かったです。唯一、玄宗皇帝の声は最初から、あ、あのタレントさんの声だとわかってしまってセリフの度にお顔が浮かんでしまいました(^▽^;)
やはり字幕版が見たいですね。私は全然中国語を聞き取れる力はないけど、それでもわかる単語があると嬉しいし、役者さんの本来の声も楽しみたいです。字幕版が上映されたらまた見に行くつもりです☆
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