清朝末期の実在の武闘家霍元甲(フォ・ユエンチア)の生涯を事実と脚色を絡めた作品となってます
天津の武闘の名門である霍拳の息子の霍元甲(フォ・ユエンチア)は体が弱く父の霍恩第(フォ・エンディ)から武闘の稽古を禁止され勉学に励むよう諭されていたのだけど、武闘家の血が流れている元甲はやはり武闘が好きでたまらない。幼馴染の農勁蓀(ノン・ジンズン)に代筆を頼んで自分は武闘のけいこをこっそりやっていました。
ある日、街中の公開試合で父霍恩第が他流の武闘家と対戦した。
父は素早い動きで相手のすきを突き決定的なダメージを与えるチャンスを得たが寸止めする。相手はもうだめかと思ったが寸止めして勢いを止めた霍恩第にこれ幸いと場外に跳ね飛ばして勝ってしまう。そして自分の方が強いと観客に誇示。霍恩第も場外に跳ね飛ばされたことで負けを認める。
面白くないのは霍元甲。さらに相手の息子が自分の父ちゃんの方が強いと威張るので二人は喧嘩になる。
そんな負けず嫌いの元甲に母は優しく諭す
「いいかい、武術の第一の目的は人を倒すことではなく、自分に打ち克つことなの。
道義をわきまえて修養を積まなくては。自分の体を鍛え、人の役に立つためよ。
ケンカや復讐のためではないわ、お互いを思いやることが大切よ。
尊敬される優しい人になってね。」
元甲は不満げに言い返す
「強ければ皆尊敬するよ」
母は答える
「強い人は怖がられるの。尊敬とは違うわ」
成長した元甲は天津に轟く強い武闘家になっていた。
次々と公開試合に勝ち、腕自慢の男はこぞって弟子入りして、みなにちやほやされて驕り高ぶる。
自分が一番強いと認められなくては気がすまず、自分のメンツにこだわる。
彼を心より心配する者の言葉は耳に入らない
ああ、そういう人っているよね、自分が絶対正義だと思っている人。周りは誰も太刀打ちできないので言うことを聞くから自分の間違いを気づけない。自分が絶対正義と思っているから自分に対立する人が許せない、許せない相手は悪だから徹底的に打ちのめして潰してしまえばよい。相手の命を奪う決定的な拳もためらわず平気で撃つ。
あまりの傲慢さに親友の勁蓀は怒り絶交を宣言。
そして元甲の傲慢さが取り返しのつかない悲劇を生んでしまう。
深い喪失感で漂流し自殺をはかるも流れ着いた村で拾われた元甲は、おばあさんと目の不自由な月慈(ユエヅ)に助けられる。
そこで体を休め少し元気になって、村の人と田植えをすると持ち前の負けず嫌いで皆よりたくさん稲の苗を乱暴に植えるけど、それでは育たないと月慈は植えなおす。
「苗は生きているの。間が詰まりすぎると育ちにくいわ。互いに敬えば仲良く暮らしていける。」
村の人たちは田んぼで仕事をしているときも、風が吹くと一旦仕事を止めて全身で風を感じる。目をつぶり葉がなびいて音がするのを聞いている。
そのうち元甲も一緒に風を全身で感じるようになっていく。
心や魂にも風を感じてゆく。
大地の気を感じて
季節とともに暮らしてゆく
何気ない日常に奥義が潜んでいた
何年か経て
心を通わすようになった月慈に必ず帰るからと別れを告げ、天津に戻った。家は絶交したはずの勁蓀が援助して守ってくれていた。
元甲は両親の墓前で非を詫びる。父が戦いの場で寸止めした意味も、母が優しく諭してくれた強さの意味も今ならわかる。
更に遺恨の残る場にも心より礼拝します・・・
そして、西洋化が進む上海にゆき、西洋人が中国人を見下す中、武闘によって中国人の誇りをよみがえらせる。
髪の毛は白髪交じりとなったが、その表情は澄んだ瞳で微笑む。
それは見事なフェアプレイで、敵対した相手すら感嘆して元甲の勝利を祝福する。
こういう微笑みながらもきりっとしたジェット・リー(李連杰)さん素敵♪
そして再び友情を取り戻した勁蓀も上海に追ってきて私財をなげうって援助。
2人して拳法の流派にこだわらない「精武体育会」を設立。
その元甲の勢いに危惧を感じた西洋人と日本人は彼を叩きのめすため新しい戦いの場を設ける。
そこで対戦する相手が日本人の田中安野。
彼は武士道を持った礼儀正しい武人で元甲に挨拶に行き共に茶を飲み、元甲の考えに共鳴する。
この田中安野役の中村獅童さんはとても爽やかで素敵でした♪
そして戦いの当日
西洋人と日本人の興行主は不公平な戦いを設定
元甲は一人で4人の格闘家と順番に戦うことになる
元甲のとても速く見事な動き、そして対戦する人との激しい戦いに圧倒されます
現場で初めて知った戦いの不公平さに田中安野は改めて戦い直すことを提案するが元甲は続行を希望、そして・・・・
元甲と田中の試合は見ていて気持ちのいい見事な試合だったのに
日本人の興行主の三田は決定的に汚い工作をする。
田中安野がフェア精神に則った武人であるのが個人的に救いになりました。
田中は三田に「日本の恥だ」と言います。
その分霍元甲の魂の気高さが浮かび上がっていきます。
考えてみれば、武闘映画は当たり前ですが、群を抜いて強い人を主人公とする。
ピラミッドの頂点の人。
もちろん中途半端な人や間違った使い方をしている人もいて淘汰されるべき人もいると思うけど、頑張ってもなかなか強くなれず涙した人や、才能があっても病気や事情で強くなれなかった人もいて、数えきれない多くの人の痛みや悔しさやいろんな思いの上に達人がいる。人はそんな達人に自分の夢も乗せる
強い人だけが焦点を浴びる世界。私には遠い存在なのですが、
霍元甲は最初間違いを起こしていた。そして報いを受けてしまう。こんな達人でもそうなんだ。だけど、さらなる憎しみを作らず自分を見つめなおしてゆく。その先に見えた境地の中で戦う者としての矜持と怒りや復讐心を捨てる強さ潔さを持った。人は生き直せると主人公が示しているように思えました。
霍元甲が最後に見せた戦う者の凄み、真の強さには涙が出ました
そして彼の魂の行方は・・・
霍元甲が設立した「上海精武体育会」は現在は世界中に学校が建てられているそうです。
そして、もう一つ
これは日本人として書くのだけど、
史実は三田の不正はなかったそうでフィクションだそうです。これはご家族がそう明言しているそうで
霍元甲は日本人と生涯友好的な関係だったそうです。
良かった。この映画の感想を書くときに実在の人物なので少し調べてみたらそう書かれてあって、ちょっとほろ苦い気持ちになりました。
追記
コメントを頂いた方に触発されて映画のエンディングテーマのMVを見てみたら、曲も映像もかっこよくて、こちらにも載せます
主演したジェット・リー(李連杰)さんがこの映画のエンディングを熱望して実現したというジェイ・チョウ(周杰倫)さんの「霍元甲 Fearless」
歌のかっこよさと共にMVに挿入された劇中の李連杰のアクションも見れます。
Jay Chou 周杰倫【霍元甲 Fearless】-Official Music Video
じぇるんの主題歌が大好きで(笑)
himariさんの観たことない人が観たくなるよな語り、素晴らしいレビューを読むと、自分の感想がどあふぉ~に思えます(爆)
あの当時(2006年ですって!)、いろいろありましてね~(;^ω^)
なんだか、ホントありがとうございました!(笑)
2006年にはもう中華映画のファンだったのですね!私は11年前はまだ中華に目覚めてなくて、この年の暮れに「覇王別姫」を見てレスリーに魅了されたのが始まりでした。
そしてP子さんのコメントを読んで改めてじぇるん(周杰倫 )さんの「霍元甲」のMVを見てみたら、歌がかっこよくていいじゃないですか
そしてMVの中に挿入されている映画の李連杰さんの動きが見事なんで改めてすごい人なんだと思いました。
映画の中で最初の傲慢さから後半の崇高さへと変化してゆく姿や、それによって戦い方が変わってゆくところがまた見事で凄い俳優さんですね
映画感想を忘れないうちにと一気に書いた文章をほめていただきありがとうございます
そして、私は実際はとろいやつでして(汗)打てば響くP子さんのウイットのセンスにウケてしまったり感心したり♪
P子さんレビューがすごく好きです
この映画は良いですよね~。私、DVDも購入しました。
しばらく観ていないので、himariさんの記事を読んで久しぶりに観たくなりました。
物語は結構重たいものですが、テーマも深いし、何よりジェットのアクションが見惚れるほど素晴らしいんですよね。
中華映画ファン、カンフー映画ファン以外の方にも観ていただきたい秀作映画だと思います。
ジェイ・チョウ君のMVかっこ良いですね~。ジェイ・チョウ君、「頭文字D THE MOVIE」っていう日本が舞台の香港映画に出てるんだけど、広東語喋ってるけど一応全員日本人っていうトンデモ映画でした。大した映画じゃないけどこっちも機会がありましたら是非、おもろいので。(笑)
https://www.youtube.com/watch?v=8-5BfO7xmZw
この映画、リンチェイ迷様のご好意で鑑賞しました♪
この映画の華はなんといっても速くて見事な拳法ですね!
そして根幹はリンチェイさん(李連杰)のメッセージが込められていました。
前半ことさらに傲慢になって、なぜか気の触れた男が傍につきまとっている。
その愚かさが強調されているから後半の生き直した元甲のたたずまいの美しさが際立ってました。
どん底に落ちても生き直せる。
もちろん心から変わろうと本気で思わなくてはだけど・・・
中盤、茫然自失になっているリンチェイさんのかっこよさを捨てた姿はむしろすごみを感じました。
本当に見ごたえがあり秀作ですね!若い人にもっと見てほしいと思いました☆
そして「頭文字D THE MOVIE」の紹介をありがとうございます。MV見てみました♪日本が舞台の中華映画だというのは聞いていたのですが、どんなのか見てみたくなりました
と思っていました。《SPIRIT》見るまでは死なぬ!!と
呪文の如く毎日唱えていました(←傍から見ると相当危険)
腕っぷしだけ強くなっていって大切な物を完全に見失って
いた霍元甲@りんちぇの姿がまるで薄氷を踏むが如く、
日本刀の刃を踏むが如くで見ていられなかった…
(←それが、りんちぇの演技力よ♪)
親友の顔に泥塗るような事をするワ、ロクでもない取り巻き
引き連れてお山の大将気取ってるワで見ていて胃が痛くなった。
(←それが、りんちぇの演技力よッ♪♪)
お山の大将時代長続きせず終いにゃ元甲、あ~~んな事に
なって呆然自失→コツジキ化→復活!!
この作品、『老子道徳経』33章に通じている気がする…。
他人を理解することは普通の知恵の働きであるが
自分自身を理解することは更に優れた明らかな知恵の働きである
他人に勝つには力が必要だが、自分自身に打ち勝つには本当の
強さが必要だ。
(老子道徳経第33章・抄)
私、あんな感じの演出に弱いのネ
りんちぇに落城してから、私、本来はこうだったのネ…的な
気づきが増えました。
遵命さんにとっても忙しい時に見るのを楽しみにして乗り越えた作品を見せていただきありがとうございます。
いつもさりげない感じで借していただくので、私もあまり構えずに見てみると思わず感動したりしみじみしたりと新鮮な気持ちで堪能しています
好きな俳優さんが映画の中で間違った行動を起こし、その先に破滅を感じてしまうとき、ハラハラしてしまいますよね。もう、やめて目を覚まして、と祈るような気持ちになり胃が痛んだときが私も何回か経験あります。自分の知ってるその俳優さんはこんな人じゃない、心の中で叫んだことも。それこそが言われる通り演技力のなせる技であり業でもあるのですが・・・
そして中盤の!おお!そうですねコツジキ姿ですね!そのコツジキ姿から颯爽とした武人に再生する展開は否応なく心惹かれてしまいますね
それから『老子道徳経』の言葉を教えていただきありがとうございます。
他人に勝つには力が必要だが、自分自身に打ち勝つには本当の強さが必要だ。
まさにこの映画の根幹を指してますね。
この映画は拳法だったけど、それ以外のスポーツや学問、もしくはごく身近な仲間内でも立場の強い人も言えると思います。
そして人は間違ってしまうのだけど、生き直していくこともできると言っているようにも感じました。
リンチェイさんの映画では「少林寺」が今も好きです!素敵な俳優さんですよね