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殿、利息でござる!

2016-06-12 01:18:08 | 銀幕

6月7日に友人と鑑賞しました
江戸時代、仙台藩は赤字経営と官位を薩摩藩と競うための資金などで財政が苦しく、農民は重税に苦しんでいた。特に吉岡宿は仙台藩からの援助もないのに天馬役というお上が前の宿から次の宿まで移動する時の馬や人足を雇って運ぶ負担を負わされ重税に苦しみ夜逃げする家族が続出、そうなるとますます村の個人の負担が増えてしまいさらに苦しむという悪循環に陥っていた。

その現状を変えるべく立ち上がった人たちがいた。
これは実話なんだそうです。
自分たちでお金を出し合って財政難の殿さまにお金を貸して利息で天馬役の費用をあてて吉岡宿の人々の負担を減らして村の生活を立て直す計画を立てる。
税を納めるお上から利息をとる立場になる発想の転換。

その資金は自分たちの私財を全て売り払い、利息は村のために役立てるので自分には戻ってこない。その上、そのことは人に言わず目立たない生活をしていこうという「つつしみの掟」をたてているんです。凄いね昔の人の慎み深さは、横柄になるのを恐れ寄付をする方が遠慮した生活をするのだから。
その有志の中には周りに誤解されていてもひっそりと村を思って、そのために大変な犠牲を払うことをためらわない人もいる。その笑顔が美しくて泣けます。
ちょっとは下心のあった人もいたけど、でもちゃんと資金をだしたのだもん立派だよ!


でも、封建社会で庶民の必死で絞り出した生き残り策がお殿様まで届くのだろうか。
その前に何人もの役職を持ったお役人を通らなくてはならない。
中には事なかれで、めんどくさがってたらい回しにしたり、こんなの単なるもうけ主義の企みだと言って却下する役人もいるんです。

映画を見て思い出したのは同じ江戸時代の佐倉藩の惣五郎。やはり重税に苦しんでいた農民のために将軍に直訴して処刑された人物です。
正しい事を訴えて処刑されるのだからそれがその時代の仕組みとはいえ理不尽です。
その危険を覚悟しながらの彼らの行動はやはり凄い事だと思います。本当は庶民の治める税によって国が成り立ってるのに、上の立場の人はその自覚が足りず覚悟を知ろうともしない


仙台藩重臣の萱場(松田龍平)
表情も言葉にも抑揚が無くて更にこの目つき、冷血な雰囲気がもりもりあってもうほんっとうに憎らしかった。つまり好演してるんです。とても印象に残りました。

さて話のクライマックスに仙台藩の殿様が現れます
その殿さまは仙台繋がりで羽生結弦くんがなってましたが、若いのにさすがの貫禄でした。お歳より若く見えるけど、世界トップのアスリートで多くの人の目標になってる人は王者の風格をもってるんですねえ。撮影当日まで他の役の人にも誰が演じるか知らせてなかったので、みんなの驚きの表情は本物だったそうです。
お殿様は彼らの行動に自分も救われたのじゃないかな。あのままあの村をつぶしてしまったら一番困るのは参勤交代をする殿さまたちだし、殿さまの失政を書き残されるところだった。江戸に参勤交代で参上した時も追及されてしまうところだったのでは。財政が苦しい時なのに薩摩藩と官位を競うために税金を使うなんてよくないよ。それをわかったから現れたのだよね。


現代は名前を名乗って寄付をする事があるけど、勿論立派だと思ってます。実行するには勇気がいるし、救われる人がいるのだから。
名を残さずただひたすら人を助けようとした吉岡宿の人たちだって、あのまま知られないで消えて行かずに、誰かがこの記録を残してくれて救われたと思ってます。
江戸時代の吉岡宿の人々の心意気を現代の私たちに伝えてくれたのだから。

茶師で知恵者の菅原屋篤平治(瑛太)、造り酒屋の穀田屋十三郎(阿部サダオ)、肝煎(村の取締役)の遠藤幾衛門(寺脇康文)など人情の機微に味わいがあって良かったです。
それから造り酒屋で質屋も営む浅野屋陣内(山崎努)の重厚な存在感、そして人生哲学に襟を正す思いをもち、妻(草笛光子)と息子甚兵衛(妻夫木聡)の静かな佇まいがとても綺麗でした。

・・・一つ疑問なのは、「我ら農民」と主人公たちは言ってたけど、お店を構えている人もそうなのでしょうか。


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