古森病院@福岡市博多区です。
管理人は研修を九大呼吸器科で行い、その流れもあって
当院には呼吸器科からの医師が非常勤で勤務しています。
そのせいか、
「長引く咳」を主訴として 当院受診される方が最近
増えてまいりました。
長引く咳の裏には様々な疾患があり、
咳の理由はケースバイケースですので、問診しながら治療方針を
決定していきます。
長引く咳の原因疾患の1つに百日咳があります。
百日咳とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/pertussis/392-encyclopedia/477-pertussis.html
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/sannkou10.pdf
*******************************************
上記2つめの資料より 引用
臨床症状 百日咳の潜伏期間は 6〜20 日(通常 7〜10 日)である。発症から回復までに数週間以 上を必要とし、病期によりカタル期(感冒症状、1〜2 週間) 、痙咳期(乾性咳嗽と発作 性の咳、3〜6 週間)、回復期(6 週間以降)に分けられる。なお、排菌はカタル期に多 い。 ワクチン未接種の乳幼児では、2 週間以上の咳以外に連続性の咳(staccato:スタッカ ート)や特徴的な吸気性笛声(whoop:ウープ) 、これら咳嗽発作の繰り返し(レプリ ーゼ)、咳込みによる嘔吐(vomiting) 、相対的リンパ球増多が特徴的である。発熱はな いかあっても微熱である。咳嗽は夜間に多く、何らかの刺激で咳嗽発作が誘発される。 息を詰めて咳込むことから顔面浮腫や眼球結膜出血、点状出血がみられることもある。 0 歳早期では、無呼吸発作やチアノーゼ、けいれん、呼吸停止から突然死に至る場合も ある。合併症として肺炎や脳症が報告されている。 一方、青年・成人の臨床症状は非典型的であり、主に 2 週間以上の長引く咳と発作性 の咳だけのことが多い(表1)。厚生労働省研究班(研究代表者 岡部信彦、研究分担者 蒲地一成)の調査では、成人患者の 1〜5 割に吸気性笛声、約 5 割に周囲の者に咳(家族歴など)が認められている 28,29)。
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名前の通り「百日くらい続く咳(まさに長引く咳)」ということで
この病名がついているわけですが
百日咳は乳児がかかると命にかかわることがあるため
百日咳と診断した場合、小児科定点報告(指定された病院で診断された場合のみ
保健所に報告する)の対象疾患(感染症法 5類感染症)でしたが
この度、内科(成人)も含め 確定診断となった場合
全数報告の対象となる方向で、話が進んでいます。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/shiryou3.pdf
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日経メディカルオンラインより
成人含む百日咳患者の発生動向を正確に把握
百日咳、定点から全数把握へ変更、来年1月から
2017/6/21
厚生労働省の厚生科学審議会感染症部会(部会長・倉根一郎・国立感染症研究所長)は6月19日、百日咳の届出基準などの改正案を了承した。5類感染症の定点把握疾患から全数把握疾患に変更するもので、厚労省は今年秋をめどに感染症法等施行規則の改正を行い、2018年1月の施行を目指す。改正により、成人を含む百日咳患者の発生動向が正確に把握できるもと期待されている。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201706/551745.html
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現在 百日咳は 定期予防接種(母子手帳についたタダ券)の対象となっており
DTaP-IPV(四種混合)ワクチンを3か月から打てるようになっています。
ワクチンスケジュールでは0歳代で3回打ち、1歳3か月になったら追加で1回DTaP-IPVを打つことになっており
計4回打つことで、無料で行う分は終了します。
しかし百日咳は不活化ワクチンのため、予防接種の効果が長続きせず、小学生くらいになると
自然に感染するケースが増えてきます。この年代になると死亡することはほぼないのですが
産まれて半年以内の乳児に接触すると、乳児が感染する可能性が出てきます。
百日咳の死亡率が高いのは 0歳児です。
(乳児は3か月たったらワクチンを打ちますが、ワクチン効果が現れ、感染をブロックするには
2回は打たないといけません)
また、臨床現場の感覚から言えば、百日咳をきちんと診断することは少なく
臨床症状だけで抗生物質投与を行ったり、咳喘息として治療していく中で
時期が過ぎて、何となく治っていく例が大半を占めており
百日咳が小児科のみの定点報告ということもあって、百日咳患者さんの全貌は明らかになっておりません。
こういうこともあって、内科も含め百日咳は全数報告とし、全貌に少し近づこうというのが
今回の審議の趣旨のようです。
過去に行われた厚労省研究班の報告では、成人遷延性咳嗽(長引く咳症状の)患者さんの
約3割に百日咳菌の保有が見られたとのことでした。
平成 20 年度厚生労働科学研究費補助金 新興再興感染症研究事業「予防接種で予防可能疾患の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究」:わが国の咳嗽成人患者を対象とした百日咳保菌率調査(研究代表者 岡部信彦、研究分担者 蒲地一 成). 2009. 29
百日咳の治療は百日咳と同じく咳が主症状のマイコプラズマ肺炎などと同様
マクロライド系と言われる種類の抗生剤投与が主流の治療法です。
今回 仮に全数報告が決定したとして
前述しましたように、長引く咳を主訴として来院される方は多く、
確定診断のために手間暇かからないが、検査代がお高い遺伝子検査を
いちいち行うのは明らかに非効率的であり、百日咳患者さんの全貌に
どこまで迫れるかが 今後の臨床的な課題だと思います。
ちなみに・・・
2016年から今まで青年や成人は薬機法上 対象になっていなかった
DTaPワクチン(三種混合 ジフテリア、破傷風、百日咳)の効能が追加承認されて、
現在は青年や成人の追加接種が可能になっています。
トリビック(阪大微研)
【用法・用量】 初回免疫:通常、1 回 0.5mL ずつを 3 回、いずれも 3~8 週間の間隔で皮下に注射する。
追加免疫:第 1 回の追加免疫には、通常、初回免疫後 6 か月以上の間隔を置いて、 0.5mL を 1 回皮下に注射する。以後の追加免疫には、通常、0.5mL を 1 回皮下に注射する。
http://komori-hp.cloud-line.com/
管理人は研修を九大呼吸器科で行い、その流れもあって
当院には呼吸器科からの医師が非常勤で勤務しています。
そのせいか、
「長引く咳」を主訴として 当院受診される方が最近
増えてまいりました。
長引く咳の裏には様々な疾患があり、
咳の理由はケースバイケースですので、問診しながら治療方針を
決定していきます。
長引く咳の原因疾患の1つに百日咳があります。
百日咳とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ha/pertussis/392-encyclopedia/477-pertussis.html
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/sannkou10.pdf
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上記2つめの資料より 引用
臨床症状 百日咳の潜伏期間は 6〜20 日(通常 7〜10 日)である。発症から回復までに数週間以 上を必要とし、病期によりカタル期(感冒症状、1〜2 週間) 、痙咳期(乾性咳嗽と発作 性の咳、3〜6 週間)、回復期(6 週間以降)に分けられる。なお、排菌はカタル期に多 い。 ワクチン未接種の乳幼児では、2 週間以上の咳以外に連続性の咳(staccato:スタッカ ート)や特徴的な吸気性笛声(whoop:ウープ) 、これら咳嗽発作の繰り返し(レプリ ーゼ)、咳込みによる嘔吐(vomiting) 、相対的リンパ球増多が特徴的である。発熱はな いかあっても微熱である。咳嗽は夜間に多く、何らかの刺激で咳嗽発作が誘発される。 息を詰めて咳込むことから顔面浮腫や眼球結膜出血、点状出血がみられることもある。 0 歳早期では、無呼吸発作やチアノーゼ、けいれん、呼吸停止から突然死に至る場合も ある。合併症として肺炎や脳症が報告されている。 一方、青年・成人の臨床症状は非典型的であり、主に 2 週間以上の長引く咳と発作性 の咳だけのことが多い(表1)。厚生労働省研究班(研究代表者 岡部信彦、研究分担者 蒲地一成)の調査では、成人患者の 1〜5 割に吸気性笛声、約 5 割に周囲の者に咳(家族歴など)が認められている 28,29)。
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名前の通り「百日くらい続く咳(まさに長引く咳)」ということで
この病名がついているわけですが
百日咳は乳児がかかると命にかかわることがあるため
百日咳と診断した場合、小児科定点報告(指定された病院で診断された場合のみ
保健所に報告する)の対象疾患(感染症法 5類感染症)でしたが
この度、内科(成人)も含め 確定診断となった場合
全数報告の対象となる方向で、話が進んでいます。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/shiryou3.pdf
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日経メディカルオンラインより
成人含む百日咳患者の発生動向を正確に把握
百日咳、定点から全数把握へ変更、来年1月から
2017/6/21
厚生労働省の厚生科学審議会感染症部会(部会長・倉根一郎・国立感染症研究所長)は6月19日、百日咳の届出基準などの改正案を了承した。5類感染症の定点把握疾患から全数把握疾患に変更するもので、厚労省は今年秋をめどに感染症法等施行規則の改正を行い、2018年1月の施行を目指す。改正により、成人を含む百日咳患者の発生動向が正確に把握できるもと期待されている。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/201706/551745.html
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現在 百日咳は 定期予防接種(母子手帳についたタダ券)の対象となっており
DTaP-IPV(四種混合)ワクチンを3か月から打てるようになっています。
ワクチンスケジュールでは0歳代で3回打ち、1歳3か月になったら追加で1回DTaP-IPVを打つことになっており
計4回打つことで、無料で行う分は終了します。
しかし百日咳は不活化ワクチンのため、予防接種の効果が長続きせず、小学生くらいになると
自然に感染するケースが増えてきます。この年代になると死亡することはほぼないのですが
産まれて半年以内の乳児に接触すると、乳児が感染する可能性が出てきます。
百日咳の死亡率が高いのは 0歳児です。
(乳児は3か月たったらワクチンを打ちますが、ワクチン効果が現れ、感染をブロックするには
2回は打たないといけません)
また、臨床現場の感覚から言えば、百日咳をきちんと診断することは少なく
臨床症状だけで抗生物質投与を行ったり、咳喘息として治療していく中で
時期が過ぎて、何となく治っていく例が大半を占めており
百日咳が小児科のみの定点報告ということもあって、百日咳患者さんの全貌は明らかになっておりません。
こういうこともあって、内科も含め百日咳は全数報告とし、全貌に少し近づこうというのが
今回の審議の趣旨のようです。
過去に行われた厚労省研究班の報告では、成人遷延性咳嗽(長引く咳症状の)患者さんの
約3割に百日咳菌の保有が見られたとのことでした。
平成 20 年度厚生労働科学研究費補助金 新興再興感染症研究事業「予防接種で予防可能疾患の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究」:わが国の咳嗽成人患者を対象とした百日咳保菌率調査(研究代表者 岡部信彦、研究分担者 蒲地一 成). 2009. 29
百日咳の治療は百日咳と同じく咳が主症状のマイコプラズマ肺炎などと同様
マクロライド系と言われる種類の抗生剤投与が主流の治療法です。
今回 仮に全数報告が決定したとして
前述しましたように、長引く咳を主訴として来院される方は多く、
確定診断のために手間暇かからないが、検査代がお高い遺伝子検査を
いちいち行うのは明らかに非効率的であり、百日咳患者さんの全貌に
どこまで迫れるかが 今後の臨床的な課題だと思います。
ちなみに・・・
2016年から今まで青年や成人は薬機法上 対象になっていなかった
DTaPワクチン(三種混合 ジフテリア、破傷風、百日咳)の効能が追加承認されて、
現在は青年や成人の追加接種が可能になっています。
トリビック(阪大微研)
【用法・用量】 初回免疫:通常、1 回 0.5mL ずつを 3 回、いずれも 3~8 週間の間隔で皮下に注射する。
追加免疫:第 1 回の追加免疫には、通常、初回免疫後 6 か月以上の間隔を置いて、 0.5mL を 1 回皮下に注射する。以後の追加免疫には、通常、0.5mL を 1 回皮下に注射する。
http://komori-hp.cloud-line.com/