古森病院@福岡市博多区です。
昨年 当院で初めて導入したフルミスト(インフルエンザ経鼻生ワクチン)ですが
CDC(アメリカ疾病予防管理センター Centers for Disease Control and Prevention 日本の
国立感染症研究所みたいなところです。)が
先月22日付で 2013-2014 and 2014-2015におけるアメリカでの小児の成績が
不活化ワクチンに比べてフルミストが良くなかったことを
理由に 今年のフルミスト接種に関して「勧奨しない」という声明を出しました。
http://www.cdc.gov/media/releases/2016/s0622-laiv-flu.html
ちょうど6月20日に フルミストの輸入申し込みをしていた当院でしたが
薬剤師さんに「勧告が出ています」とのことで、うーーん困った
キャンセルできないみたいだし・・・と思っていたところ、輸入業者さんから
CDCの声明が出たので、キャンセルしても構わない旨の連絡があり
ろくろくCDCの勧告を見ていなかったのですが、一旦キャンセルいたしました。
アメリカの成績が日本で当てはまるか
わからないのですが、何分 日本では認可されていないので
成績の出しようがありません・・・。
去年は一昨年同様
少なくとも福岡市ではかなりの大流行でしたので
不活化ワクチンもいまいちの感じでした。
まあ、わからないものは わかるまで
様子をみるというのが、この手の話題のセオリーですので
(ヒトパピローマウイルスワクチンの如く)
今年は見送るか・・・・
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昨年度シーズンの日本におけるインフルエンザウイルス流行株の内訳
http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/iasr/Byogentai/Pdf/data95j.pdf
昨年度はA型が前半はやって、B型が立ちあがって だらだら流行しました。
A型は Influenza virus A H1pdm09 2009年に大流行した新型インフルエンザウイルスがまた昨年度流行したようですね。
B型は Influenza virus B/Victoria
Influenza virus B/Yamagata が流行したようですね。
昨年購入したフルミスト2015-2016のワクチン株は
A/Bolivia/559/2013 (H1N1) (an A/California/7/2009 (H1N1)pdm09-like virus),
A/Switzerland/9715293/2013 (H3N2)
B/Phuket/3073/2013 (B/Yamagata/16/88 lineage)
B/Brisbane/60/2008 (B/Victoria/2/87 lineage)
http://www.azpicentral.com/flumistquadrivalent/flumistquadrivalent.pdf#page=1
一方で昨年度の国内不活化ワクチン株
A/カリフォルニア/7/2009(X-179A)(H1N1)pdm09
A/スイス/9715293/2013(NIB-88)(H3N2)
B型株
B/プーケット/3073/2013(山形系統)
B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2319-related-articles/related-articles-429/6071-dj4298.html
これを見ると、生ワクチン、不活化ワクチン共に
ワクチン株と流行株はまあまあ当たっているように
見えますが、系統が一致してもサブグレードまで一致しないと
インフルエンザワクチンはあたらないとよくいいますね。Bの流行株の詳細はいつも発表されませんが
(ビクトリアと山形までしか発表なし)何か詳細が発表できない理由があるのでしょう。
少し前から卵馴化という ワクチン効果が乏しくなる現象が知られるようになり
インフルエンザワクチンウイルスが鶏卵を用いて培養されることから トピックスとなっています。
http://medical.radionikkei.jp/kansenshotoday_pdf/kansenshotoday-151111.pdf#search=%27%E5%8D%B5%E9%A6%B4%E5%8C%96%27
肝心のCDCが成績の参考にした、一昨年度とその前の年度の
ワクチン株と流行株の違いがどれくらいあったのかについては 見つけられませんでした。
一方 第一三共株式会社はフルミストの日本での独占販売権を フルミストを製造している会社の親会社である
アストラゼネカ社と締結したようです。
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http://www.astrazeneca.co.jp/media/pressrelease/Article/2015
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インフルワクチン、鼻にスプレー 第一三共が申請へ
2016/2/19 23:23
日本経済新聞 電子版
第一三共は鼻にスプレーして使うインフルエンザワクチンを今春に承認申請する方針だ。英製薬大手のアストラゼネカから導入したワクチンで、主に子供向けの接種を想定している。欧米では注射のような痛みを感じなくて済むスプレー式のインフルエンザワクチンが普及している。承認されれば日本で初めてとなるスプレー式のワクチンとして広く使われそうだ。
承認申請を予定しているのは米国で「フルミスト」という製品名で使われて… (以下電子版のため なし)
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日本での成績は 認可後にはっきりわかるものと思われます。
うーーん、やっぱり 輸入どうしようかな・・・。
結構 キャンセルしているクリニックも多いし、逆らって輸入するという
手も・・・などと悩んでおります。
病院ホームページ http://komori-hp.cloud-line.com/
追記 その後、カナダからフルミストがインフルエンザ発症予防に効果があったという論文も出まして(3価ですが)
フルミストを結局 発注することといたしました。
Annals of internal medicine.Aug 16.2016
No difference between Flu Shot and Nasal splay in study of hutterite children.