古森病院@福岡市博多区です。
当院には認知症の患者さんが多数入院されておられます。どこの高齢者施設もそうですが
認知症の方のなかには 夜間不眠(ついでに叫ばれたり、徘徊されたり)
しかし昼間は寝ておられ・・と昼夜逆転傾向を示し、人の少ない夜勤時の
職員が非常に大変な状況になることが少なくありません。
管理人は精神科医ではありませんが
高齢者の認知症の方の昼夜逆転の不眠治療薬は
「とにかく」
①ベンゾジアゼピン系は絶対ダメ(ふらつく上に効果なし、却ってせん妄を起こされることもあり、問題が拡大する)
②メジャートランキライザーもダメ(メジャーはもし副作用がでたら命に関わる上、翌日は確実に効果が持越し、どうかすると2日くらい寝てしまわれることもあり、経口摂取の場合 起きれなくて食事が取れなくなることも。
また長期的には錐体外路症状を起こし、嚥下障害その他を来たす。)
③非定型抗精神病薬のリスペリドンは
比較的 嚥下障害を起こさないと言われているが、長期的(半年以上)な使用の印象は今ひとつ(管理人の経験です)。クエチアピンは効く方には割りと良い印象。
④バルビツール酸系は論外。
⑤メラトニン系は副作用は少ないが、効果も乏しい。
⑥抑肝散や抗認知症薬もすでに不眠を来たしている認知症高齢者の方には効果がない。
抑肝散は粉で量も多い、苦い などで拒薬の引き金になることもある。
2014年にスボレキサント(商品名はベルソムラ)が発売されたことは知っていましたが、
スボレキサントの添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/170050_1190023F1024_1_09.pdf
スボレキサントの紹介記事
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201410/538959.html
日本が世界で一番最初に発売された不眠治療薬であること(ということは症例件数が少なく、未知の副作用が出てくる可能性があるということ)
当初は認知症高齢者の方への成績が明らかでなかったこと
から使用しておりませんでした。
最近神経内科の先生に当院の入院認知症患者さんの不眠について問い合わせたところ、スボレキサントを勧められ
半信半疑で15㎎の半量(割線はないですが、はさみで切れます)から使用したところ、かなり効果が高く
数名の方に使用しています。
スボレキサント作用機序の論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/148/1/148_46/_pdf
半減期(薬の体内の濃度が半分になる時間)が10時間 血中濃度ピークが1.5時間と
かなり持越しが長い薬なので、当院の夕食は18時であることから 夕食後(食後は吸収が悪くなるらしく
あまり推奨されていませんが 高齢者の方には丁度良いと思います。)に内服してもらい、20時前には入眠、
朝食時(朝7時)はまずまずすっきり目覚められておられます。
朝食も召し上がっておられますし、
日中持越しもなく、会話も通常通り可能です。(ほかの薬だと日中持越し、ボーッとしておられたり・・・)
ふらつきや呼吸抑制も少なく、少量でかなり効果のある薬なので 薬価が高めですが
半量使用なら半額で済みますし、「今のところ」かなり効果の高い眠剤と思います。
頭痛、悪夢の副作用があるようですが、うなされているとか頭が痛いとかそういう報告は受けていません。
ちなみに外来患者さんの感想ですが
認知症の患者さんでない、単なる不眠症の患者さん(精神疾患併存なし)には
やはりベンゾジアゼピン系が人気でした。
以前ベンゾジアゼピン系が効かない方(男性でした)で
スボレキサントを飲んでおられる方に感想をお伺いしたところ、その方は「眠れるが・・・」と言われた後に
管理人に「以前よりも早朝勃起が著しくなったのはこの薬のせいか」と聞かれました。
早朝勃起はレム睡眠により惹起されることが知られています。スボレキサントは
上記に紹介した作用機序の論文で、レム睡眠とノンレム睡眠を動物実験上 増やすことが
証明されており、スボレキサントの添付文書には書いてありませんが
その可能性は高いのかなと思い、「おそらくそうでしょう」と申し上げました。
今 発売されているシルデナフィル(商品名バイアグラ)は もともとは狭心症の治療薬として
開発され、狭心症の治療はうまくいかなかったものの、治験時にシルデナフィルの治験協力者が
治験薬を返さないことから理由の聞き取りで
ED治療薬としての発売となったことは
業界では有名な話ですが、
もしかしたらスボレキサントも
そういう利用方法があるのかもしれません。
話が脱線していますが(笑)、認知症の方の昼夜逆転でお困りの方で
スボレキサントを使用されておられない方は 少量からトライしてみてもいいと思いますので
主治医に相談してみてください。
スボレキサントと認知症
http://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/DST2016.pdf
http://umibeno-mori.com/sickness/8439.html
http://komori-hp.cloud-line.com/
追記
スボレキサントは半錠で当初はよかったのですが、そのうち足らなくなり
一錠でコントロール中です。スボレキサント+クエチアピンで今のところ
まずまず食事もとれています。
追記
レンボレキサント(商品名 デエビゴ)が
過日 エーザイさんから発売されました。
副作用が軽減されているようです。
https://www.eisai.co.jp/news/2020/news202036.html
当院には認知症の患者さんが多数入院されておられます。どこの高齢者施設もそうですが
認知症の方のなかには 夜間不眠(ついでに叫ばれたり、徘徊されたり)
しかし昼間は寝ておられ・・と昼夜逆転傾向を示し、人の少ない夜勤時の
職員が非常に大変な状況になることが少なくありません。
管理人は精神科医ではありませんが
高齢者の認知症の方の昼夜逆転の不眠治療薬は
「とにかく」
①ベンゾジアゼピン系は絶対ダメ(ふらつく上に効果なし、却ってせん妄を起こされることもあり、問題が拡大する)
②メジャートランキライザーもダメ(メジャーはもし副作用がでたら命に関わる上、翌日は確実に効果が持越し、どうかすると2日くらい寝てしまわれることもあり、経口摂取の場合 起きれなくて食事が取れなくなることも。
また長期的には錐体外路症状を起こし、嚥下障害その他を来たす。)
③非定型抗精神病薬のリスペリドンは
比較的 嚥下障害を起こさないと言われているが、長期的(半年以上)な使用の印象は今ひとつ(管理人の経験です)。クエチアピンは効く方には割りと良い印象。
④バルビツール酸系は論外。
⑤メラトニン系は副作用は少ないが、効果も乏しい。
⑥抑肝散や抗認知症薬もすでに不眠を来たしている認知症高齢者の方には効果がない。
抑肝散は粉で量も多い、苦い などで拒薬の引き金になることもある。
2014年にスボレキサント(商品名はベルソムラ)が発売されたことは知っていましたが、
スボレキサントの添付文書
http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ph/PDF/170050_1190023F1024_1_09.pdf
スボレキサントの紹介記事
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201410/538959.html
日本が世界で一番最初に発売された不眠治療薬であること(ということは症例件数が少なく、未知の副作用が出てくる可能性があるということ)
当初は認知症高齢者の方への成績が明らかでなかったこと
から使用しておりませんでした。
最近神経内科の先生に当院の入院認知症患者さんの不眠について問い合わせたところ、スボレキサントを勧められ
半信半疑で15㎎の半量(割線はないですが、はさみで切れます)から使用したところ、かなり効果が高く
数名の方に使用しています。
スボレキサント作用機序の論文
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/148/1/148_46/_pdf
半減期(薬の体内の濃度が半分になる時間)が10時間 血中濃度ピークが1.5時間と
かなり持越しが長い薬なので、当院の夕食は18時であることから 夕食後(食後は吸収が悪くなるらしく
あまり推奨されていませんが 高齢者の方には丁度良いと思います。)に内服してもらい、20時前には入眠、
朝食時(朝7時)はまずまずすっきり目覚められておられます。
朝食も召し上がっておられますし、
日中持越しもなく、会話も通常通り可能です。(ほかの薬だと日中持越し、ボーッとしておられたり・・・)
ふらつきや呼吸抑制も少なく、少量でかなり効果のある薬なので 薬価が高めですが
半量使用なら半額で済みますし、「今のところ」かなり効果の高い眠剤と思います。
頭痛、悪夢の副作用があるようですが、うなされているとか頭が痛いとかそういう報告は受けていません。
ちなみに外来患者さんの感想ですが
認知症の患者さんでない、単なる不眠症の患者さん(精神疾患併存なし)には
やはりベンゾジアゼピン系が人気でした。
以前ベンゾジアゼピン系が効かない方(男性でした)で
スボレキサントを飲んでおられる方に感想をお伺いしたところ、その方は「眠れるが・・・」と言われた後に
管理人に「以前よりも早朝勃起が著しくなったのはこの薬のせいか」と聞かれました。
早朝勃起はレム睡眠により惹起されることが知られています。スボレキサントは
上記に紹介した作用機序の論文で、レム睡眠とノンレム睡眠を動物実験上 増やすことが
証明されており、スボレキサントの添付文書には書いてありませんが
その可能性は高いのかなと思い、「おそらくそうでしょう」と申し上げました。
今 発売されているシルデナフィル(商品名バイアグラ)は もともとは狭心症の治療薬として
開発され、狭心症の治療はうまくいかなかったものの、治験時にシルデナフィルの治験協力者が
治験薬を返さないことから理由の聞き取りで
ED治療薬としての発売となったことは
業界では有名な話ですが、
もしかしたらスボレキサントも
そういう利用方法があるのかもしれません。
話が脱線していますが(笑)、認知症の方の昼夜逆転でお困りの方で
スボレキサントを使用されておられない方は 少量からトライしてみてもいいと思いますので
主治医に相談してみてください。
スボレキサントと認知症
http://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/documents/DST2016.pdf
http://umibeno-mori.com/sickness/8439.html
http://komori-hp.cloud-line.com/
追記
スボレキサントは半錠で当初はよかったのですが、そのうち足らなくなり
一錠でコントロール中です。スボレキサント+クエチアピンで今のところ
まずまず食事もとれています。
追記
レンボレキサント(商品名 デエビゴ)が
過日 エーザイさんから発売されました。
副作用が軽減されているようです。
https://www.eisai.co.jp/news/2020/news202036.html