古森病院@福岡市博多区です。
コロナ感染も、インフル感染も
立ち上がりつつある今日この頃。
当院でも散発的に職員が罹患していますが、
皆さんの協力(動線分離、欠勤カバー、N95マスク、フェイスシールド、
早めの体調不良申告)で、クラスターには発展していません。今の段階では。
ワクチンも少なくとも入院患者さま方は 接種券が来ている方は
随時 着々と接種しており、備えはバッチリです。
中には一度も打たれてない方もおられ、来年三月までに打たないと
オミクロン対応ワクチンが打てなくなる可能性あり、患者さまはじめ
職員とご家族さまの協力をいただいております。
ところで、先日 管理人が調べたわけではありませんが、
当院外来で インフルエンザ抗原検査とコロナPCRが
陽性の方がおられました。
管理人はインフルエンザが陽性なら
コロナまでは調べない(治療方針に差がない、費用対効果も
ないため)のですが、確かにコロナは待機期間の事もあるし、、
全く意味がない訳ではないです。
かといって、全員調べるのはお金の無駄な気も。
タミフルで反応しなかったときに、考えよう。。と
思います。
ちなみにちょっと調べたら、大阪大学の感染症内科の忽那教授の
記事にフルロナの話が書いてありました。
論文を引用すべきところ、すみません。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221029-00320655
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
今年はオーストラリアで新型コロナとインフルエンザの同時流行がみられました。
これらのウイルス性呼吸器感染症について「同時に感染したらどうなるの?」と周りの方によく聞かれるのですが、そもそも同時感染は起こり得るのでしょうか?同時感染するとしたら重症化しやすくなるのでしょうか?
ウイルス干渉とは?
複数の呼吸器系ウイルスが同時に流行している時期に、人が同時に、あるいは連続してウイルスに感染することでお互いの感染に影響を与えることがあります。
例えば、新型コロナウイルスに感染した人が、その後にインフルエンザに感染すると、新型コロナウイルス感染症の経過がインフルエンザウイルスによる影響を受けるということです。
これは「ウイルス干渉(Viral Interference)」と呼ばれ、1960年代から複数のウイルス間の相互作用について研究されています。
例えば、あるウイルスに感染すると一時的に自然免疫によりインターフェロンが誘導され、次に感染するウイルスの増殖を抑える作用が起こると考えられています。
すごく簡単に言うと、人があるウイルスに感染すると免疫が活性化するので、その時期に他のウイルスが入り込んできても追い払われることがある、ということです。
これは、マウスの実験や人でも証明されていますし、疫学的にもRSウイルス感染症とインフルエンザの流行時期がずれることはこの「ウイルス干渉」が関係しているのではないかという報告もあります。
新型コロナとインフルの同時流行は起こらないのか?
ではウイルス干渉があるから新型コロナとインフルの同時流行は杞憂に過ぎないのでしょうか?
残念ながら、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスとのウイルス干渉については研究がまだ十分ではなく、相互に与える影響については未知の領域です。
しかし、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスとの間のウイルス干渉は、少なくとも人にとって良い方向には働かなさそうという報告が増えてきています。
2017年から2022年までのオーストラリアにおけるインフルエンザ患者数の推移(オーストラリア保健省の資料より)
今年の5月から6月にかけて南半球のオーストラリアで新型コロナ発生以降初めてのインフルエンザの流行がみられました。
この時期、オーストラリアでは1日あたり2万〜6万人の新型コロナの感染者が報告されており、まさに同時流行が起こっています。
つまり、新型コロナとインフルエンザのウイルス干渉により同時流行は起こりにくい、という期待は現時点では楽観的すぎるかもしれません。
新型コロナが出現してからの数年間、ほとんどの地域でインフルエンザが全く流行しなかったのは、新型コロナの感染対策が徹底して行われたこと、海外からのウイルスの流入が激減したことなどが原因であり、感染対策も緩和が進み、海外からの旅行者が急増している今シーズンは同時流行の可能性は低くないと考えられます。
新型コロナとインフルの同時感染では重症化しやすくなる
ウイルス干渉には疾患の重症度や病原性を悪化させるものもあり、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの組み合わせは、この悪い方のウイルス干渉に当てはまる可能性が指摘されています。
ハムスターを用いた実験では、それぞれのウイルスに単独で感染させた場合よりも、同時にあるいは連続して感染させた方が重症度が高くなるという結果でした。
イギリスでの調査では、新型コロナに感染した6965人について呼吸器系ウイルスとの同時感染を調べたところ、227人がインフルエンザウイルスと同時感染していました。
インフルエンザと同時感染していた患者は、新型コロナ単独感染の患者よりも4.1倍人工呼吸管理となりやすく、2.4倍死亡しやすいという結果でした。
これらの結果からは、新型コロナとインフルエンザのウイルス干渉は、悪い方に働く可能性が高いと言えます。
今シーズンは新型コロナ、インフルエンザの両方に備えよう
このように、今年は新型コロナとインフルエンザの同時流行が起こる可能性があり、また万が一同時感染ということになれば重症化につながるかもしれません。
すでに同じ北半球のアメリカでも増加傾向にあり、日本国内でも大阪府などで報告数が増えてきています。
これらが必ずしも同時に流行のピークを迎えるというわけではありませんが、それぞれの感染症についてしっかりと備える必要があります。
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの接種間隔(厚生労働省資料より)
インフルエンザワクチンについては10月から全国の医療機関で接種が開始されています。
また、新型コロナワクチンについては、オミクロン株対応ワクチンが接種できるようになっています。
当初は新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは同時に接種することで副反応の増強や有効性の低下が懸念されていたことから、同時接種はできませんでしたが、同時接種を行ってもそれぞれのワクチンの有効性が損なわれることはないことが分かったこと、そして副反応についても特に増強することがないことが分かったことから、今シーズンから同時接種が可能となりました。
また、同じ日でなくとも、14日空ける必要はなく「接種間隔についても問わない」となりました。
例えば今日インフルエンザワクチンを打って、明日新型コロナワクチンを接種する、ということも可能になりました。
これにより、柔軟に接種スケジュールを立てることが可能となります。
同時接種にこだわる必要はありません。流行期の前にそれぞれのワクチンを接種して流行に備えましょう。
※大阪大学大学院医学系研究科では、新型コロナに感染したことのある方の後遺症の症状について継続的に調査を行っています。研究の詳細はこちらからご覧ください。これまでに新型コロナと診断されたことのある方は、こちらからアプリをダウンロードいただきぜひ研究にご協力ください。
記事に関する報告
忽那賢志
感染症専門医
感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp
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参考まで。
https://komori-hp.cloud-line.com/
コロナ感染も、インフル感染も
立ち上がりつつある今日この頃。
当院でも散発的に職員が罹患していますが、
皆さんの協力(動線分離、欠勤カバー、N95マスク、フェイスシールド、
早めの体調不良申告)で、クラスターには発展していません。今の段階では。
ワクチンも少なくとも入院患者さま方は 接種券が来ている方は
随時 着々と接種しており、備えはバッチリです。
中には一度も打たれてない方もおられ、来年三月までに打たないと
オミクロン対応ワクチンが打てなくなる可能性あり、患者さまはじめ
職員とご家族さまの協力をいただいております。
ところで、先日 管理人が調べたわけではありませんが、
当院外来で インフルエンザ抗原検査とコロナPCRが
陽性の方がおられました。
管理人はインフルエンザが陽性なら
コロナまでは調べない(治療方針に差がない、費用対効果も
ないため)のですが、確かにコロナは待機期間の事もあるし、、
全く意味がない訳ではないです。
かといって、全員調べるのはお金の無駄な気も。
タミフルで反応しなかったときに、考えよう。。と
思います。
ちなみにちょっと調べたら、大阪大学の感染症内科の忽那教授の
記事にフルロナの話が書いてありました。
論文を引用すべきところ、すみません。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20221029-00320655
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今年はオーストラリアで新型コロナとインフルエンザの同時流行がみられました。
これらのウイルス性呼吸器感染症について「同時に感染したらどうなるの?」と周りの方によく聞かれるのですが、そもそも同時感染は起こり得るのでしょうか?同時感染するとしたら重症化しやすくなるのでしょうか?
ウイルス干渉とは?
複数の呼吸器系ウイルスが同時に流行している時期に、人が同時に、あるいは連続してウイルスに感染することでお互いの感染に影響を与えることがあります。
例えば、新型コロナウイルスに感染した人が、その後にインフルエンザに感染すると、新型コロナウイルス感染症の経過がインフルエンザウイルスによる影響を受けるということです。
これは「ウイルス干渉(Viral Interference)」と呼ばれ、1960年代から複数のウイルス間の相互作用について研究されています。
例えば、あるウイルスに感染すると一時的に自然免疫によりインターフェロンが誘導され、次に感染するウイルスの増殖を抑える作用が起こると考えられています。
すごく簡単に言うと、人があるウイルスに感染すると免疫が活性化するので、その時期に他のウイルスが入り込んできても追い払われることがある、ということです。
これは、マウスの実験や人でも証明されていますし、疫学的にもRSウイルス感染症とインフルエンザの流行時期がずれることはこの「ウイルス干渉」が関係しているのではないかという報告もあります。
新型コロナとインフルの同時流行は起こらないのか?
ではウイルス干渉があるから新型コロナとインフルの同時流行は杞憂に過ぎないのでしょうか?
残念ながら、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスとのウイルス干渉については研究がまだ十分ではなく、相互に与える影響については未知の領域です。
しかし、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスとの間のウイルス干渉は、少なくとも人にとって良い方向には働かなさそうという報告が増えてきています。
2017年から2022年までのオーストラリアにおけるインフルエンザ患者数の推移(オーストラリア保健省の資料より)
今年の5月から6月にかけて南半球のオーストラリアで新型コロナ発生以降初めてのインフルエンザの流行がみられました。
この時期、オーストラリアでは1日あたり2万〜6万人の新型コロナの感染者が報告されており、まさに同時流行が起こっています。
つまり、新型コロナとインフルエンザのウイルス干渉により同時流行は起こりにくい、という期待は現時点では楽観的すぎるかもしれません。
新型コロナが出現してからの数年間、ほとんどの地域でインフルエンザが全く流行しなかったのは、新型コロナの感染対策が徹底して行われたこと、海外からのウイルスの流入が激減したことなどが原因であり、感染対策も緩和が進み、海外からの旅行者が急増している今シーズンは同時流行の可能性は低くないと考えられます。
新型コロナとインフルの同時感染では重症化しやすくなる
ウイルス干渉には疾患の重症度や病原性を悪化させるものもあり、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの組み合わせは、この悪い方のウイルス干渉に当てはまる可能性が指摘されています。
ハムスターを用いた実験では、それぞれのウイルスに単独で感染させた場合よりも、同時にあるいは連続して感染させた方が重症度が高くなるという結果でした。
イギリスでの調査では、新型コロナに感染した6965人について呼吸器系ウイルスとの同時感染を調べたところ、227人がインフルエンザウイルスと同時感染していました。
インフルエンザと同時感染していた患者は、新型コロナ単独感染の患者よりも4.1倍人工呼吸管理となりやすく、2.4倍死亡しやすいという結果でした。
これらの結果からは、新型コロナとインフルエンザのウイルス干渉は、悪い方に働く可能性が高いと言えます。
今シーズンは新型コロナ、インフルエンザの両方に備えよう
このように、今年は新型コロナとインフルエンザの同時流行が起こる可能性があり、また万が一同時感染ということになれば重症化につながるかもしれません。
すでに同じ北半球のアメリカでも増加傾向にあり、日本国内でも大阪府などで報告数が増えてきています。
これらが必ずしも同時に流行のピークを迎えるというわけではありませんが、それぞれの感染症についてしっかりと備える必要があります。
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンとの接種間隔(厚生労働省資料より)
インフルエンザワクチンについては10月から全国の医療機関で接種が開始されています。
また、新型コロナワクチンについては、オミクロン株対応ワクチンが接種できるようになっています。
当初は新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは同時に接種することで副反応の増強や有効性の低下が懸念されていたことから、同時接種はできませんでしたが、同時接種を行ってもそれぞれのワクチンの有効性が損なわれることはないことが分かったこと、そして副反応についても特に増強することがないことが分かったことから、今シーズンから同時接種が可能となりました。
また、同じ日でなくとも、14日空ける必要はなく「接種間隔についても問わない」となりました。
例えば今日インフルエンザワクチンを打って、明日新型コロナワクチンを接種する、ということも可能になりました。
これにより、柔軟に接種スケジュールを立てることが可能となります。
同時接種にこだわる必要はありません。流行期の前にそれぞれのワクチンを接種して流行に備えましょう。
※大阪大学大学院医学系研究科では、新型コロナに感染したことのある方の後遺症の症状について継続的に調査を行っています。研究の詳細はこちらからご覧ください。これまでに新型コロナと診断されたことのある方は、こちらからアプリをダウンロードいただきぜひ研究にご協力ください。
記事に関する報告
忽那賢志
感染症専門医
感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp
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参考まで。
https://komori-hp.cloud-line.com/