現状の課題解決と「あったらいいな」の実現というのは、言い方を変えると、アウトプットとアウトカムの違いなのかもしれません。
たとえば、「地元の農業を活性化させる」というのは、現在元気のない地元農業を活性化させることが課題解決になります。指標としては、農業売上高の増加とか、農業従事者の増加などになるかもしれません。しかし、地元の農業を活性化させることが自分たちの生活にどう結び付くのかが見えないので、多くの人の心をその気にさせることはできないかもしれません。
これに対し、「子ども達に安全・安心な食べ物を食べさせたい」というのが「あったらいいな」の実現に当ります。そのためには、たとえば、輸入品では不安だ、遺伝子組み換えでは不安だ、農薬や除草剤などを沢山使ったものは不安だ・・・などとなり、地産地消で顔の見える生産・流通にしようということになります。草取りが大変だったら、市民が手伝うというようなことになるかもしれません。結果として、その地域の農業が活性化することになり、現状の課題も解決されることにもつながる可能性があります。この場合の指標は、本当は、そうでない地域に比べて、子ども達の発達が良いとか、病気になりにくいとかが良いと思いますが、そういうデータは取りにくいかもしれません。給食に占める地元産品の比率とか、農薬投与の少なさなどが次の指標になるかと思われます。
あるいは、地元に大きな病院がないので、お年寄りが隣町まで出かけなければならないという課題を解決するために、地元に大きな病院を作ろうというのが課題解決型です。
これに対し、「あったらいいな」というのは、住み慣れた場所で、最後まで元気で友達に囲まれて生きたいというのを実現することです。それには、必ずしも大きな病院が必要とは限りません。健康体操を普及させる、かかりつけ医をつくる、医療と介護を一体化させる・・・というようなことがあったらいいなの実現になります。
我が町にも新幹線を通したい、そうすれば、観光客も来るだろうし、地元産品を東京などの大消費地に販売しやすくなるというのも、課題解決型です。その場合、地元の若者が東京に出て行ってしまうという逆効果が働かないとも限りません。
「あったらいいな」が田舎の良い空気や人情の温かみを残し、住みやすいまち、訪れて心地よいまちにしたいということなら、新幹線を通さず、むしろ陸の孤島のような場所の方が来たかいがあって喜ばれるのかもしれません。
課題解決と「あったらいいな」の実現は、似ているようで違うのです。
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