大腸がんの再発リスクを腫瘍浸潤免疫細胞の密度から予測するイムノスコア(免疫スコア)を開発~新たな分類体系として国際合意~医学誌『Lancet』より
以下コピペです。
今まで少々古いデータではありますが、Stage Ⅲ大腸癌における病理学的因子の再発危険因子として,壁深達T4,リンパ節転移4個以上,PN1,EX 陽性が有意な独立因子として抽出された.というものを信じていたのですが他の要素に起因しているという論文を見つけました。
術後大腸がん患者の再発可能性を予測できる「Immunoscore(免疫スコア;イムノスコア)」と呼ばれる指標が開発された。イムノスコア は、TNM分類や腫瘍細胞の分化など、従来の解剖学的特徴から得られる情報を元に予測するよりも、高い予後予測精度を持つことが検証された。フランス国立保健医学研究機構(INSERM)のJerome Galon氏らが全世界的規模で実施した研究成果で、2018年5月26日Lancet誌(391巻10135号2128ページ)に発表された。
がん免疫学会(SITC)の支援を受けて13カ国の国際的コンソーシアム14機関で行われた研究で、TNM分類でステージIからステージIIIの大腸がん患者2681例から摘出された腫瘍の病理組織検体が解析対象とされた。トレーニング群、内部検証群、または外部検証群(アジア人患者)の3つに振り分け(各700例、636例、1345例)、腫瘍と浸潤境界部分の検体(パラフィン切片)の免疫組織化学染色により、CD3陽性T細胞、および細胞傷害性CD8陽性T細胞の密度をデジタル病理学の手法で定量した。主要評価項目は、術後から再発までの時間に対するイムノスコアの予後予測値で、密度0%から25%を低スコア、25%から70%を中スコア、70%から100%を高スコアのカテゴリーに分けた。
その結果、イムノスコアが高いほど5年再発率が低かった。つまり、抗腫瘍免疫で活躍する免疫細胞が腫瘍や浸潤部に多く存在するほど再発する可能性が低くなることが統計学的に検証された。その傾向に群間差はなく、例えば、トレーニング群では、イムノスコア高スコア集団の5年再発率が8%(14例)、中スコア集団では19%(65例)、低スコア集団では32%(51例)で、高スコア集団は低スコア集団よりも再発リスクが80%有意に低下することが示された(p<0.0001、ハザード比[HR]0.20)。
こうしたイムノスコアと再発率の関係は、年齢や性別、腫瘍深達度を示すT分類ステージ、リンパ節転移の程度を示すN分類ステージ、マイクロサテライト不安定性、またはその他既知の予後因子の影響を受けなかった。さらに、イムノスコアは再発までの時間、無病生存期間、全生存期間といったあらゆる臨床指標と有意な相関関係を示し、イムノスコアスコアが高いほど予後が良好であった。
腫瘍に浸潤する免疫細胞は多彩で、細胞の種類やそれぞれの細胞が発現する抗原、機能や役割などの解明に向けた研究が世界中で行われている。本研究では、現時点の知見を踏まえ、染色の質や抗原の安定性を考慮してCD3とCD8をマーカーとして選択し、これらを発現するT細胞を染色した。北米、欧州、およびアジアのコンソーシアムの各機関が、フランスのリファレンスセンターの指揮・監督の下で施設ごとに解析し、結果は独立した外部機関が評価した。定量化されたイムノスコアは複数の品質コントロールを用いることで厳格に評価され、高い再現性や客観性などを達成した。
本研究は、イムノスコアと術後予後との関連解析の最終結果であり、TNM分類システムと連関する強力な予後因子として再現性と頑健性が示されたことから、新たな分類体の標準として「TNM-Immune」と命名し、支持することが表明された。
この記事の4つのポイント
・術後大腸がん患者の再発可能性を予測できる「イムノスコア」と呼ばれる指標が、がん免疫学会の支援を受け開発された。
・イムノスコアは、腫瘍組織へのCD3陽性T細胞および細胞傷害性CD8陽性T細胞の密度をデジタル病理学の手法で定量したもの。
・驚くべきことに、イムノスコアはTNM分類などの従来の解剖学的特徴よりも、高い予後予測精度持つことが示唆された。
・Lancetはこのイムノスコアを「TNM-Immune」と命名し、支持することが表明した
以下参照
英語版
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)30789-X/fulltext