ネットを徘徊していたら、次のような論文があることを知りました。
この論文、表題のとおりの内容ですが、本題のラフマニノフの記述の前に「ロシア正教における音楽のあゆみ」(第1章)、「聖歌旋律について」(第2章)がまとめられており、これらはロシア聖歌を学習するうえで大変参考になるものでした。
そして、第2章第6節が「リムスキー=コルサコフ」として譜例込みで10ページほどが割かれており、《ロシアの復活祭》で用いられている聖歌に関して詳しい言及がされています。
詳細は本論文をご覧いただくとして、個人的に大収穫だったのは、<聖歌1> "Да воскреснет Бог" (主を呼び起こそう)と、<聖歌3> "Христос воскресе" (キリストは復活した)の旋律の原型の譜例が記載されていたことでした。
さっそく、これらをMIDIで入力してみました。
リムスキー=コルサコフが《ロシアの復活祭》で用いた旋律とは少し違いますが、いかがでしょうか?
<聖歌1>については、例えば以前ご紹介した次の動画とも違っていますが、本論文に掲載された方が古いものということなのでしょうかね。
時代や地域、教会によって同じ(ような)聖歌も様々に歌われていたようです。
"Да воскреснет Бог" Стихиры Пасхи Зосимовой пустыни гарм. иером. Нафанаил
https://www.youtube.com/watch?v=Z76baGeei9M
さて、<聖歌2>については、本論文では「パスハの早課第九歌頌のカタワシヤ『神の使い』ギリシャ聖歌」と記載されていましたが、その脚注に「この聖歌はオビホードに収録されておらず、出典は不明である。」とあり、特定することができなかったようです。
そもそもこの<聖歌2>なるものは、作曲者が存命中に出版された《ロシアの復活祭》の楽譜の扉絵に掲載されておらず、自伝中に「『主を呼び起こそう』に基づいたテーマを主体に、(中略)教会の典礼聖歌『嘆く天使』と交替するように書いた」との記述があるものの、このくだりはもう少し吟味した方がよさそうな気がします(「交替するように書いた」ってどういうことでしょう?)。
この謎解きはまだまだ続きそうです。
増田 桃香 (2016)
S.ラフマニノフのピアノ作品におけるロシア正教聖歌の要素 : ロシア正教聖歌の変遷と《徹夜禱》作品37からみるラフマニノフの一音楽書法
東京藝術大学 学位論文 博士(音楽)
https://geidai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=709&item_no=1&page_id=13&block_id=17
S.ラフマニノフのピアノ作品におけるロシア正教聖歌の要素 : ロシア正教聖歌の変遷と《徹夜禱》作品37からみるラフマニノフの一音楽書法
東京藝術大学 学位論文 博士(音楽)
https://geidai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=709&item_no=1&page_id=13&block_id=17
この論文、表題のとおりの内容ですが、本題のラフマニノフの記述の前に「ロシア正教における音楽のあゆみ」(第1章)、「聖歌旋律について」(第2章)がまとめられており、これらはロシア聖歌を学習するうえで大変参考になるものでした。
そして、第2章第6節が「リムスキー=コルサコフ」として譜例込みで10ページほどが割かれており、《ロシアの復活祭》で用いられている聖歌に関して詳しい言及がされています。
詳細は本論文をご覧いただくとして、個人的に大収穫だったのは、<聖歌1> "Да воскреснет Бог" (主を呼び起こそう)と、<聖歌3> "Христос воскресе" (キリストは復活した)の旋律の原型の譜例が記載されていたことでした。
さっそく、これらをMIDIで入力してみました。
譜例2.18 パスハのトロパリ≪ハリストス死より復活し Христос из мертвых≫
(ズナメニィ聖歌)
♪<聖歌3> "Христос воскресе"(キリストは復活した)MP3ファイル
(ズナメニィ聖歌)
♪<聖歌3> "Христос воскресе"(キリストは復活した)MP3ファイル
リムスキー=コルサコフが《ロシアの復活祭》で用いた旋律とは少し違いますが、いかがでしょうか?
<聖歌1>については、例えば以前ご紹介した次の動画とも違っていますが、本論文に掲載された方が古いものということなのでしょうかね。
時代や地域、教会によって同じ(ような)聖歌も様々に歌われていたようです。
"Да воскреснет Бог" Стихиры Пасхи Зосимовой пустыни гарм. иером. Нафанаил
https://www.youtube.com/watch?v=Z76baGeei9M
さて、<聖歌2>については、本論文では「パスハの早課第九歌頌のカタワシヤ『神の使い』ギリシャ聖歌」と記載されていましたが、その脚注に「この聖歌はオビホードに収録されておらず、出典は不明である。」とあり、特定することができなかったようです。
そもそもこの<聖歌2>なるものは、作曲者が存命中に出版された《ロシアの復活祭》の楽譜の扉絵に掲載されておらず、自伝中に「『主を呼び起こそう』に基づいたテーマを主体に、(中略)教会の典礼聖歌『嘆く天使』と交替するように書いた」との記述があるものの、このくだりはもう少し吟味した方がよさそうな気がします(「交替するように書いた」ってどういうことでしょう?)。
この謎解きはまだまだ続きそうです。