ホース排気式AS650について
イタリアで流行している、排気バルブを廃止して、ホースを排気口に直結して排気する方式を真似して1年半に亘って使ってきた。
もう元の排気バルブ式に戻す気は無いほど快適だが、有利な点ばかりではないので、ここで簡単に“傾向と対策”のまとめをしてみた。なお、今回の写真は再掲の物が多いので悪しからず。
改造方法は Blog第14回に紹介した。 第26回では予備機の改造も紹介した。
この方式の利点は:
排気口からの浸水が無くなる
バルブの排気抵抗が無く始動させ易い
バルブの交換費用が不要になる
排気ホースから簡易式のエアポンプで加圧するだけで水密性を簡単に確認可能
本体を押沈めると排気抵抗増加で回転が変化するが、ホース排気式では回転に影響しない。
欠点としては:
①ホースを伸ばして水中排気にすると、自分が排気を吸ってしまい易い
②水面での周囲への騒音が大きくなる
③ホースに穴が開いて浸水することがある
④陸上では始動時に廃液が飛び散り、周囲を汚す事が有る
⑤ホース接続部とその保護枠を付けるので本機の高さが3~4cm増加してしまう。
⑥収納時にホースが結構邪魔になり、ホース端の汚れが衣類に付き易い
なお、空中排気にすると水面走行中の本機からは泡が出なくなる。しかし鮫を追い払う場合などは少し上へ向けると前から空気を吸込んで盛大な泡を排出して威嚇?することができる。
対策は・・・・
①排気を吸ってしまう点について:
イタリアのお手本どおり当初はこの旧形式!写真の如く水中へ排気する方式にしたが、
排気を吸ってしまうのでホースを短く切って、冒頭の写真の如く、頭上で放出するようにして解決した。却って簡単になった。
頭上排気方式は前掲(第19回)のこの写真でも明らかなように、イタリアで現在は主流らしく、水中排気方式は最早忘れて構わないだろう。
②騒音増加について
周囲へ極端な音が出る訳ではなく、5mも離れると気付かないと私は思っている。海水浴客がいるような場所は元々避けるべきものだし、釣人の近くから入水するなら今迄通りの、多少の気遣いは当然だ。
③排気ホースに穴が開いてしまう
これは最近の離島遠征で経験した。陸上で始動させる時などには挿込部のホースが地面に擦れて破れやすくなる。これからはホースに保護テープを巻付ける積りだ。ホースが地面に接触しない様に設計すれば安心だろう。初めは普通の水道ホースで試作したが、これは耐ガソリン性が無いので、あっという間に溶けて穴が開いてしまった。
ホースとしては、蛇腹式の強力な物が有るのだが、たまたま寸法が合わないので、今のところは使っていない。
少々長くなるが、実例を紹介する:
この写真では、何となくホースの挿込部が擦れていることは判っていたのだが・・・・
実際にはペンチの先端が通るほどの穴が開いていたが、加圧試験では泡が出ず、気付かなかった。
この時はエンジン不調で3日間というもの散々悩まされたが、少量の浸水が有ったり無かったり・・・・なかなか原因を特定できなかった。プラグの締付を点検したり、海岸でキャブ交換までしても、行きは良い良い、帰りはさっぱり掛からない。
そうこうする内に帰途やはり始動出来ず、途中の荒磯に強行上陸しようとしてうねりに叩かれ、ひどい目に遭った。その後プラグギャップだけでなくネジにまで(写真右)多量浸水時に特有の茶色液体(乳化したガソリンとオイル)が附着してやっと穴に気付いた。
そこでホースの穴の開いた部分を切捨て、プラグを交換してこの時の遠征最終日は無事使用出来た。
なお当初の計画では、本機を油封止して次の遠征まで宿に残置の積りだったが、これでは全く信頼できないとばかり、持帰らざるを得なかった。そしてそれは正解だった・・・・
さて、その遠征後の整備として、排気ホースの調整とマフラの洗浄をしようとしたところ、またもやホースに穴が開いていることに気付いた。遠征先で1日使っただけでこんな状態になっていた。挿込部のパイプの縁に沿ってホースに亀裂が走っている。
一応気にはなっていたのだが、写真の様にホース挿込部の保護枠が低いため差込んだホースが地面に当って簡単に擦れてしまったようだ。初めからテープを巻くなどしてホースを保護しておく必要がある。パイプの切口が角張っていることも問題にすべきかもしれない。
なお、このホース挿込部にはホースバンドをネジで締付けただけでは振動で緩んでしまう。緩み止めを施すか、針金で捩じっておくのが安心だ。
更に気が付いたのは、ホースを本機の先端に保持するために金属枠と“リピートタイ”の留具を使っているが、これのせいで赤枠で示したホースに深い傷が付き、ここにもすぐに穴が開きそうだ。
留具を改善するかホースが当たる部分の保護をしっかりしておく必要がある。
④周囲に廃液が飛び散る悩みについて:
これはロープを引くときはホース先端の向きに注意すれば足りる
⑤本機の高さが増加してしまう点
3~4cmも高くなると運搬用のケースに入らないと言う事も起こる。どうしてもという場合は、改造に当り排気口にエルボパイプを取付けず、まっすぐ後ろへ出すように設計出来る。但しその場合は噴流を多少遮ってしまうことになるかと思う。
素人考えだが、例えば丸パイプを潰して後ろから挿入し接着すれば簡単に出来るかもしれない。
⑥ホースが邪魔になる・・・・:
ホースをぶらぶらさせておくと、廃液が垂れて周囲と衣類を汚す事が有る。また、ガソリン臭もかなり漏れてしまうので、ホース端に栓をしビニ袋などを被せておくと安心だ
この様な対策を施せば、ホース排気式は良い性能を発揮すると思う。
陸上での始動が簡単にはできないが、排気バルブを外せば始動し易いなら、ホース式を取入れることで始動が容易になるだろう。
追加:
今回海岸で交換したキャブレタの状態
今回のエンジン不調は、ホースからの浸水の筈だった・・・・ のだが、本日キャブを分解したらそうとも言へないことが判明した。このキャブはちょうど1年前に分解整備し、最近頻繁に使用して来たもので、30時間以上使ったと思う。
上部燃料溜りと流量調整膜は良い状態だった
ところが、下側燃料ポンプ部には全体にかなりの塩が析出していた。本体表面の塩と錆は本Blog第23回で紹介した、 本品とは別のキャブで経験した塩詰まりを思い出させる。
水洗いしてもかなりの錆や塩がこびりついており、その様子から塩は燃料に混入してきたというより、ポンプ部のカバーから浸み込んだ感がある。大ネジ1本で固定しているだけなので、或いはそちらを疑う必要があるかもしれない。取敢えず、ガスケットの中心ネジ穴周辺だけ薄く液体ガスケットを塗布して組立てた。
今後キャブの取付後は底部ポンプ部の合せ目(縁)に液ガスを塗布しようと考えている。
・・・・と言う訳で、妙な雲行きになってしまった。
「ホース排気式のまとめ」の一部として紹介した、直近の遠征で「ホースの穴から浸水でエンジン不調」という実例が、実はキャブの不調が先に起きていた?!のかもしれない。
諸兄の場合もこんな不調と無縁とばかりは言えないかもしれない。
こんなことで、ゆっくりまとめようとしていた本篇を些か慌てて投稿する次第です。
以上
Blog 第36回 ホース排気式改造のまとめとキャブ 終り =小坂夏樹=