Aquascooter Maintenance for Spearfishing アクアスクーターで魚突き 全76回

使いこなそう、アクアスクーター整備ノートby KosakaNatsuki

**全76回で終了済み**

Blog第42回 キャブレタからの浸水と整備 =小坂夏樹=Carburettor Water Leakage

2016年10月25日 | マニュアル
キャブからの浸水
前月に整備したばかりの1号機(Blog第41回)が遠征先で浸水してしまった。プラグを外して排水という応急処置だけで始動できるようになったが、原因不明のまま翌日も浸水してしまった。エアタンクにも少量の海水がたまっていたので、スノーケル辺りか、あるいはエルボかと疑った。そこで両日とも、排気ホースに簡易ポンプを接続して加圧水密試験をしたのだが泡も出ず原因不明のままだった。
しかし、ふと排気ホースを塞ぎ、今度はスノーケルから加圧したところ、キャブレタのアクセル軸あたりから盛んに泡が出る。こんな珍しい所からも漏れるのかと驚いてキャブを交換し、今度は排気側・吸気側両方から加圧して漏れの無いことを確認し、3日目は問題なく使用できた。とはいえ、安心してはいられない。停止して魚突きをしている間は曳航しているボディボードに載せるようにしていた。

帰宅後の確認・整備
キャブ自体からの漏れであることを確認するため、持帰ったキャブの空気流路を簡易的にポンプで加圧してみることにした。ビニテープを貼って何とか手で押さへる方法だ。



軽く加圧するだけでやはり写真の如くアクセル軸のレバーから泡がどんどん出てくる。ここから少しずつ浸水し、短時間では分からないが、長時間水面に浮かせておくと内部にたまってしまうのだろう。



軸にはゴムパッキングが嵌めてあるので、それが切れたのかとばらしてみたが、原因となりそうな亀裂などがない=写真右側。このパッキングはOリングではなく、断面がひょうたん型のような特殊形状だ。
ジャンク箱のキャブから同じパッキングを外してみたが、これは既にボロボロで使い物にならない=写真左側。そこで、このまま現品を再利用することにした。ゴムは弾性を保ってはいるが、ある程度硬化しているのかもしれない



キャブのアクセル軸受部の溝は正常だが、塩が固着していたので削り取った。




軸受部にシリコーングリスを塗布し、組立するのだが、端部のパッキングを軸と溝の間に正常に嵌めるのが結構難しい。やはり硬化しているのか? 矢印の様に、中々うまく嵌らずはみ出している。このままネジ止めしたりすれば、パッキング偏りで水密性が失われる可能性がある。パッキングを溝に嵌めてから軸を通すのが正解らしい。
もしかしたら私の過去の組付が失敗だったかもしれない。あるいは何らかのゴミが挟まったりしていたのだろうか?それとも上記の如く、析出した塩でパッキングが押し上げられていたのかもしれない。





ダイアフラム交換
一応アクセル軸は再組立で大丈夫そうなので、ついでながら上下の流量調整膜とポンプ膜を確認した。

流量調整膜は、本機を殆ど使っていなかったにも拘らず次の写真の様にわずかに変形・硬化している。この点に関しては、ゴム面が燃料に触れていないと逆に硬化するとの指摘が PescaSubApnea の記事にあったので、あるいは燃料に漬けておけば戻るのか???ま、手っ取り早く新替した。




なお、交換した調整膜は放り出してあったのだが、1日経てからふと観察すると、分解取り外し直後に比べて歪がよりひどくなっていた。



それではというので、これをまたガソリンに数時間浸して置いたが、歪はそのままで変化はなかった。長いこと使っていてこんなことも理解していなかったのかと非難されそうだ。
この様子では、保管時に無理にキャブ内を乾燥させる必要は無いのかも知れない。あるいは却って悪いかもしれない。
これまでも紹介してきたように、毎週始動させるのが適切なのかもしれない。私としては未だに判断できない。


調整膜とポンプ膜には浸水防止で液体ガスケットを塗布してあったのだがこちらははみ出したりガソリンで剥がれたりして内部のフィルタに引っ掛かったりしていた。




こちらも新替したが、こうなると液体ガスケットを使うのは失敗ということで、今後は避けなければならないだろう。はみ出して脈動圧通路を塞いでしまった経験も以前紹介した。

これで分解前と同様にポンプで加圧してみたが、泡漏れは無く、ほっとした。

以上で取外したキャブの整備は完了し、予備品として遠征時は常に携帯することになる。

なお、この1号機本体はオイル・ガソリンを滴下し、何度もロープを引いて内部を洗浄した。始動には問題ない状態だ。しかしながら、いままでもこんな処置だけで放っておいてトラブルになったことが何度もある。余裕ができたら更なる整備をしたい。


水密検査
水密検査をする場合は、スノーケルまたはプラグ孔に圧力をかけるのが普通だろう。
私の場合は排気ホース方式に改造後は、ホースから加圧していた。しかしピストンの位置によっては圧力がかなり遮られてキャブの方まで十分伝わらないことがあると今回の出来事で判った。
そこで今後は排気ホースからも、またスノーケルからもポンプで加圧することにした。


今回のアクセル軸からの浸水は、パッキングに塩が析出したか、恥かしながら私の組立不良が原因と思うが、それにしてもこんな部分からも不具合が発生してしまうとは恐れ入る。やはりエンジンそのものを水に曝すのは技術的にも難しい事なのだろう。

数十年前にスズキが50ccのウオータージェットエンジンを製造し、それを組込んだジェットスキーのミニ版の様なものと一人用ゴムボートを市販したことがある。直接水に接しないので、信頼性はマシだったと思われるが、すぐに姿を消してしまった。
そんなものがまた出現するとは思われないが、安心して使える何かを切望する次第だ。

以上

Blog第42回 キャブレタからの浸水と整備 終わり =小坂夏樹=