窓辺の小太郎

野付半島の渡り鳥や動植物の生き生きした「瞬間の美」を目指します。

若きオスジカ

2019-08-21 18:58:40 | 日記

夕方になると森の中からエゾジカがぼつりぼつりと出てきます。ほとんどがオスです。

10数頭の群れ、3、4頭の小さな群れ。大小様々です。

おばんです。小太郎でごじゃります。

              ◆  若きオスジカ  ◆ 

天敵がいない環境とはいえ、ニホンオオカミやヒグマがたくさんいた頃からまだ150年

ほど、遺伝子に組み込まれた本能はそう簡単には抜けるものではありません。

シギを探しに森の横にある湿地に行ってみると頭に角を生やしたオスたちが移動して

来ていました。私が気づかないうちに見つけ、動きを止め、じっと見つめています。

森にいるときは「キュイッ」と甲高い声を出し、周りの連中に警戒させる声を出しますが、

草原では無声です。

遅れて私が気づくと動きで察知するのか、あわてて走り出します。ある距離感を維持し

ようする本能が働くのです。

下はぬかるんでいるのに滑ることなくホップ、スッテップ、ジャンプ的に走って遠ざかり

ます。そして私を見ることができる距離をおいて止まります。捕食者ではないことは

よく解っているのです。

どんな行動を起こすのか、見極めようとしているのです。銃を持っていれば、違う行動を

取るはずです。カメラは命を狙わない。これだけは分かるようです。

 


ビロードの角を持つエゾジカ

2019-07-03 10:56:26 | 日記

5月、6月のエゾジカの角は美しい。艶めかしい。産毛がいっぱい。艶々している。

これまでエゾジカの角に関する論文や一般の記載文を調べてみましたが、毎年生えてくる

若き角に関心を寄せている研究者はあまりいません。

おばんです。小太郎でごじゃります。

 

           ◆  ビロードの角を持つエゾジカ  ◆

おそらくこの時期のエゾジカは警戒心が強く、林の中で生活するシカはひっそりと暮らし、

人目に付きにくいのです。

海岸の草原で暮らすエゾジカも日中は谷部の林に身を隠すように暮らしていて、近寄って

行くとすぐに逃げていきます。これが本来の野生のシカの行動です。

ところが野付半島のシカは外敵であるハンターがいないせいで、道路わきの草地にいること

がしばしば。鹿の子色の毛色になり、目立たないこともあります。

おかげでとても観察しやすい。20メートルの距離に寄っても、いたってのんびり草を食べて

います。オスの群れは、メスの群れに比べ警戒心が少なく、寄りそって行けばじっくり観察

ができます。

夏の毛に変わり、鹿の子模様がはっきりと出て、とても美しい毛並みになっています。

そして耳と耳の間に角が新芽のように生えてきています。

若者から大人のシカが一緒なので、年齢によるシカの角の出方が変化に富んでいるのに

気づされます。4歳以上の成人のオスの角は、すでに三尖二又になっています。角は黒光

りして、艶々しています。

柔らかな肌触りと深みのある色つや、黒光りのする光沢感はまるで繊維のビロードを思わ

せます。触るときっと柔らかで上品な手触り、皮下を流れる血管の拍動が伝わってきそうです。

まだ若いオスたちの角はカタツムリの眼みたいな形をしています。毛が生えた皮膚を押し

上げた風で、色気はさっぱりありません。

三歳と思われるシカの角は黒ずみ、オスらしい色気が漂い始めています。先が分かれ始め、

男らしさが出てきています。

オスの群れを見ているとさまざまな形の角を楽しめます。その角の形から年齢を推察できます。

それにしても四歳以上のオスの角の成長ぶり。太くて艶々、皮膚の下を流れる動脈の鼓動

が振動してくる迫力があります。