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南シナ海問題と自衛隊 (元自衛官 泥 憲和さん)

2015-12-23 21:21:46 | 平和 戦争 自衛隊

泥 憲和さんFBより転載

    【南シナ海問題と自衛隊】

 昨日の「自衛隊を活かす会」は面白かった。
 テーマは南沙諸島問題。
 これまでで一番議論が噛み合ったのではないかな。...
 気になったのは元海将・太田文雄さんの考え方だった。

◇ ◇
 太田さんはいう。
 日本は国際社会の意思を知らなくてはならない。
 米国は中国が主権の範囲だという海域に海軍艦艇を送る「航行の自由作戦」を実施し、中国による公海の囲い込みを認めない行動をとった。
 オーストラリアも対潜哨戒機を飛ばすことで、そこが中国のものではないことを現実をもって知らしめる活動をしている。
 オーストラリアがそれをする理由は、弾道ミサイルだ。中国本土から豪州大陸まで届くミサイルはないが、南沙諸島にミサイル基地を置けば豪州が射程内に入るのだ。
 海はグローバルコモン(世界の公共財産)だ。
中国の身勝手な振る舞いを許さない国際社会の一員として、日本も行動すべきだ。
 日本にとって南沙諸島はどういう意味を持つのか。南沙諸島はオイルロードだ。日本のライフラインだ。ここに軍事基地など作られたら日本のエネルギー輸送路の安全が脅かされる。
 また南シナ海で中国の行動を許せば、それは必ず尖閣列島のある東シナ海と連動する。
 尖閣のみならず、沖縄までも中国は日本の主権を認めないと言い始めている。
 日本は、南シナ海で活動するアメリカ海軍艦船を防護すべきだ。
 ◇ ◇

 以上が太田さんの意見のあらましだが、どうにも納得できなかった。

【戦略目標はなにか】

 分からなかったのは、戦略目標だ。
 その軍事行動で達成すべき目標は何か。中国にどんな行動を求めるのか、《現状は認めるがこれ以上の現状変更を許さない》という抑止なのか、
《これまでの現状変更は不当だから原状復旧しろ》という撤退要求なのか。
 目標をはっきりさせないと、戦略が立てられない。やみくもに軍事行動を起こせばどうにかなるというものではないはずだ。

 中国に撤退しろというなら、環礁の領有を不当だといわねばならないが、それはどういった国際法を根拠にそういえるのか。中国を撤退に追い込める道筋はあるのか。一戦交える覚悟なのか。
 抑止なら、サンゴ礁の領有はよいが軍事基地建設は認めないというのか、そういった主権制限にまで日本は踏み込むのか。
 それとも国際法に基づいてサンゴ礁の周りに領海を設定することを認めないという立場なのか。そうすると環礁を埋め立てて軍事基地を作りつつある中国の行動を認めてしまうことになるが、それでよいのか。
 こういった戦略目標の話が皆無だったのがとても気になった。

【戦略目標の正当性の担保】

 南シナ海問題は多国間問題だ。
 中国にのみ譲歩を要求するということでよいのだろうか。
 中国の領有が不当だというなら、フィリピンもベトナムも同じことだろう。
 中国の場合、南沙諸島がかつて台湾高雄市の管轄地域だったという法的根拠がとりあえずはあるのだが、フィリピンとベトナムは歴史的にそこを領有したことが一度もないのだ。その両国の支配を認めるのに中国に認めないのは、ダブルスタンダードで筋が通らない。
 ではフィリピンやベトナムにも同様の要求をすべきなのか。

 こういった点についての説明が一切なく、中国の脅威を述べて諸外国と共同作戦せよというばかりでは説得力がないと思う。 

【中国の脅威はどの程度に真実なのか】

 細かい問題としては、オーストラリアは本当にミサイルを気にしているのか。
 中国はすでにミサイル搭載原子力潜水艦を保有しているのだから、いつでもオーストラリアを攻撃できる。いまさらミサイルの射程を気にするだろうか。
 中国が実効支配したのは水の出ない環礁だから常駐するのは大変だ。埋め立てはしたけれども津波が来たら洗われてしまうような人工島だ。脆弱性は隠しようもない。移動先もないこんな所に剥き出しの長距離ミサイル基地を置くだろうか。それは夢想ではないのか。
 オーストラリアの監視活動は、中国の軍事力が距離的に接近することに対する警戒でもあろうけれど、いつもやっている対米協力の範囲内かも知れない。
 どうも話が盛られている印象を受けた。

 さらに、アメリカ海軍は自衛隊が守らなければ自己防護できないような弱い存在なのかということ。そんなことはなかろう。アメリカ機動艦隊は世界で最も自己完結能力の高い部隊だ。スーパータスクフォースだ。護衛艦が何隻か加わることにさほど意味があろうとは思えない。

【日本は軍事的対決路線に進むべきではない】

 私は中国を敵視するより、むしろ中国を国際的共同のパートナーとして引き入れ、公海を世界の公共財産として共同で治安を守ろうと呼びかけるのが良いと思う。国際の平和と安全の中で、中国は経済的発展を遂げてきた。それを失って困るのは中国自身だ。
 中国の強圧的な外交と一方的な主張で現状変更しようという軍事的冒険路線を黙視することはできない。
 平和的な話し合いだけで譲歩を得るのは困難だから、中国の目論見は成功しないと思わせるだけの軍事的圧力が必要には違いない。
 しかし軍事的対決だけを解決策とする元海将の選択は危ういと思い、質問した。

 【質問】
 自衛隊が出ていくことでむしろ中国は妥協しづらくなるのではないか、直接的に関与するのではなく、局外中立の立場で、他の中立諸国とともに南シナ海を法治の海にしていく環境づくりに努めるのがよいのではないでしょうか。

 これに対する太田元海将の回答は、「日米両国の海上戦力が合同すれば、中国を封じ込めることが出来る」というものだった。
 問いと答えが合致しないのが残念だった。

 

 

 


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