介護保険法等の一部を改正する法律案の成立について(談話) |
2017年5月26日
「地域包括ケアシステムの強化のための
介護保険法等の一部を改正する法律案」の成立について(談話)
社会民主党幹事長
又市 征治
1.本日の参議 院本会議で、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が成立した。今回の改正で、「医療保険の現役並み所得」がある場合の利用者負担が3割に引き上げられるが、2割負担認定者の生活実態等の把握や検証がないままの引き上げは、一層の利用抑制をもたらし、介護する子世代の家計圧迫や家族の無償の負担の増加につながり、介護離職や家族などのストレス増、ひいては高齢者虐待や介護心中・介護殺人等の要因が増えるなど懸念は尽きない。また、今後の3割負担の範囲の拡大への懸念もあり、社民党は断固反対した。能力に応じた負担を目指すための「高所得者への3割負担導入」というのなら、税・保険料の方で対応すべきである。
2.介護保険の被保険者は、認定を受けなければサービスを利用する権利(受給権)を認められないが、今回の改正案では、介護保険料の抑制を目指し、認定率を低下させるため、国、都道府県が市区町村への「支援」を強化しようとしている。「自立支援・重度化防止」の目的のため、厚生労働省が作成する「適切な指標」の名のもとに、一律に「目標達成」を目指すものとなっている。さらにインセンティブとして交付金を組み合わせ、自治体を誘導しようとしている。これらによって、認定申請を受けつけないなどのいわゆる「水際作戦」を行う事態が増加しかねず、被保険者の権利を大きく損なう可能性がある。
3.今回、療養病床の移行を想定した「介護医療院」の新設が予定されているが、介護保険を必要としているのは、「医療ニーズ」の高い「中重度者」だけではない。特にひとり暮らしや高齢夫婦世帯の生活の維持には、ホームヘルパーによる生活援助が大きく貢献している。しかし、社会保障審議会介護保険部会は、「生活援助中心のサービス提供の場合の緩和された人員基準の設定については、2018年度介護報酬改定の際に改めて検討を行う」と意見をまとめている。人員基準の緩和により、介護報酬を下げることは、実質的にサービス提供事業者によるサービス提供が低下することを意味する。
4.社民党は、高齢者の尊厳が守られ、住み慣れた地域で安心して生活できる、利用者本位に基づく持続可能な社会保障制度の確立、そして介護労働者が安心して働き続けられるための仕組み作りに向け、今後とも全力をあげる。
以上