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熊見曽根から茶臼岳
毎年の事だが、ジャストの時期に花を見に行くのは難しい。
ましてや今年のように、残雪が多かったり、天候不順だと尚更である。
本来ならもう少し早く行くつもりだったが、会津・檜枝岐に出かけたのが響いて
少し遅れた。
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紅花一薬草・イチヤクソウ科イチヤクソウ属 ・ピークをすぎていた。
那須では、南月山が紅花一薬草の生育地で知られているが、隠居倉の
尾根もそれなりに有る。
7月2日(土曜日)、会津も片品も雨である。
会津駒ヶ岳の山開きの参加はあきらめた。3日は自治会の行う草刈りがあるので
尾瀬の燧ヶ岳の山開きも参加できない。
那須は奇跡的に昼間の雨のマークが無い。
と言うことで、那須の隠居倉に紅花一薬草を尋ねる事にした。
那須には、5月19日のブログで書いたように、残雪期に登ったので
今年二回目の登山である。
コースとしては、熊見曽根の分岐までは、全く同じなので説明は省略する
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熊見曽根の尾根から望む隠居倉と尾根の崩落地
7月2日(土曜日)、那須の峠の茶屋駐車場に着いたのは8時30分過ぎだった。
奥の方には結構車が駐まっていて、準備している人たちの声が賑やかだ。
山を見上げると、濃い霧に包まれて山容は見えなかったが、しきりに鳥が鳴いていた。
今日は単独なので、ゆっくりと準備して8時50分頃登山開始
登山口で登山届けを書いてポストに入れた。
備え付けの登山届けの用紙が新しくなっていて、コースは印刷してある地名に
丸印をつけるだけの方式になっていた。
出発地も下山地も地名に丸印をつけるだけ。
できるだけ多くの人に登山届けを出して貰う為に、かなり工夫されたものになった。
これは他の山でも見習って欲しいやり方だ。
前回残雪が残っていた登山道も、カラカラに乾いて、真っ赤なベニサラサドウダンの
花が、敷き詰めたように散っていた。
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ウラジロヨウラク・ツツジ科ヨウラクツツジ属 別名ツリガネツツジ
葉の裏側が白色を帯びて、花の形が寺院や仏像の装飾に使う
瓔珞(ようらく)に見立てて名付けられたという。
登るにつれて、登山道の両側にウラジロヨウラクの花が咲き乱れ
実をつけ始めたハンノキの甘い香りがかすかに漂う。
ハンノキやツツジの樹林帯から抜け出ると、いつもは展望が良くなる
のだが、今日は霧が覆って山が見えなかった。
しきりにウグイスの谷渡りの声が響き、カッコウののどかな鳴き声がする
汗っかきの私は、すでに汗が噴き出ていた。
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マルバシモツケ・バラ科シモツケ属 茶臼岳から朝日岳にかけて多い
5弁花で枝先に多数集まって咲く
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ウラジロタデ・タデ科オンタデ属 葉の裏に白い毛が密生して白っぽく見えるので
ウラジロの名がついた。雌雄異株
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霧に覆われた登山道
マルバシモツケやウラジロタデの咲く登山道を登っていたら
小さいザックがデポしてあった。
見ると可愛い男の子が、デジカメで何かを撮っている。
後で追いつかれたとき、ご一緒に来られた方に聞くと
小学1年の孫だという。前日は宿に泊まって茶臼にも登ったという
「孫をダシにして登っているんですよ、そのうち大きくなったら
一緒に歩いてくれないでしょうけれど。」と言って笑っている。
うらやましい話しである。私も孫を連れて歩きたい。
孫娘が遠くに住んでいるのが残念だ。
中の茶屋跡を9時23分に過ぎ、峰の茶屋跡避難小屋に9時44分に
到着した。
ベンチで一休みして、喉の渇きを潤した。
振り返ると、大勢の登山者が登ってきている。
そのうち団体登山と思える中高年グループが到着した。
ベンチを開ける為、私が出発すると、孫を連れたあの人も
同じ剣が峰に向かって歩き出した。
今日は朝日岳に登ると言っていた。
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アカモノ・ツツジ科シラタマノキ属 別名イワハゼ 赤い実がなる
中部や近畿地方で、木の実を「モモ」と言い、赤い実なので
「アカモモ」と呼ばれたのがなまって「アカモノ」になったという
なんだか怪しい説だがとりあえずそういうことで。(笑)
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ネバリノギラン・ユリ科ソクシンラン属 花の部分が粘つく
剣が峰に多いアカモノやネバリノギランを撮って、回り込んだら
あの男の子が、土手の上で一生懸命写真を撮っていた。
何を撮っているのかと、のぞき込んだらオノエランが草むらに咲いていた。
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オノエラン・ラン科オノエラン属 唇弁の内側に黄色いW型の模様が入る
まるで早稲田のマークのようだ。
「この唇弁のダブルの模様がきれいですよね。」と言うと「そこまで見なかった」
と言って、わざわざ戻ってきてのぞき込んだ。
いつもは早稲田大学卒業の「オノエラン」くんですと馬鹿を言うのだが
まあ今日はやめておこう。
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剣が峰の道を行くお孫さん連れの登山者
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剣が峰の鞍部から隠居倉方面を見る
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朝日岳の登山道のクサリ場
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横移動のクサリ場だが、下は断崖
10時03分 第一のクサリ場に到着
10時19分 朝日の肩に到着
先客が多いので、そのまま朝日の肩を通過して、熊見曽根の分岐に向かう。
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ツートンカラーのウラジロヨウラク
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ピークを過ぎかかっていたが、サラサドウダンの更紗模様があでやかだ
筆者注 この花は、もしかするとサラサドウダンの変種と言われる
ベニサラサドウダンかもしれないが、筆者には明確な違いを示す
資料がない。
たいていの図鑑には、色の濃淡しか書いておらず、明確な違いが
判らない為、母種のサラサドウダンとした。ごめんなさい。
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熊見曽根分岐の頂を見上げると、誰かが方位盤に乗っているようだ
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振り返ると、あのクサリ場を登っている登山者が見えた
熊見曽根の分岐に上り詰めると、二人の青年が挨拶してきた。
一人が私のカメラを見て「どんな風に景色を撮っているのですか」と聞いてきた。
私が「景色より山の花を撮っている」と答えると
一人が携帯で撮った画像を見せて「この花の名前が判りますか」という。
見ると「ウラジロヨウラク」の写真だった。
一人に「どこから来たの?」と聞くと「日立」だという。
「エーツ、俺はつくばだよ」と答えると「いばらきですね」
と言って笑う。
私はこれから隠居倉に行って花を撮ると言って、別れを告げた。
二人は爽やかな笑顔を残して、1900メートルの無名峰に向かって行った。
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熊見曽根から隠居倉に続く尾根は、ガンコウランの青い実が沢山なっていた。
この実は、熟すと黒色に変わる。
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普通は高山の森林限界付近に生育するハイマツが、ここ那須では
遙かに標高の低い場所で生育している珍しい所である。
写真は、ハイマツの雄花
大きな崩落地をすぎると、このコースのハイライト、お花畑となる。
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最初に出迎えてくれたのはヤマオダマキだった
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ピークは過ぎかかっていたが、白山千鳥も沢山有る。
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斑の模様がはっきりしている白山千鳥
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テガタチドリはまだ蕾だったが、数は有る。
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まだ咲き始めだったが女峰山で発見されて命名された女峰千鳥も草むらの
中にいくつもあった。
この花を見たさに、あのきつい女峰山に登って、ついに見ることができなかった花である。
この花を見るたびに、私は思わずニンマリとしてしまう。
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カラマツソウの花も咲き始めていた。
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隠居倉からの帰りに見つけた「コメツツジ」ほんの数輪が咲き始めていた
自作パソコンの電源が600ワットなので、真夏に暖房している状態で
長くはブログを書けません。
と言うわけで、この項は終了!! ゴメン。
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追加 ハクサンシャクナゲ・ツツジ科ツツジ属 花の内側に黄緑色の斑点が有る
一株のみ開花していた。今回は確かめなかったが、那須には葉の裏に
毛の無い「ケナシハクサンシャクナゲ」があるという。