ビスクドール・雛人形店・オーディオ販売 佐久市 ヤナギダ店長ブログ

ビスクドール64体他お節句雛人形をフランスへ輸出128年、軽井沢方面がお店の場所。

愛よりも優しく

2018年09月18日 23時38分13秒 | owarai
あれから、十二年という歳月が
流れた。

あの日、あの夜、闇の底を生き
物のように流れる河のほかには
何もない、

閉散とした駅のプラットホーム
に、おそらく永遠に取り戻すこ
とのできない何かを置き忘れた
まま、わたしはもうすぐ、三十
五歳になろうとしている。

こうして、スピードを上げながら
西へ西へ向かう新幹線の中でひと
り、遠ざかってゆく景色を眺めて
ると、記憶の虚空(こくう)から、

はらはらとこぼれ落ちてくるのは
あの年の記憶だけだ。あの年その
ものが、わたしにとって八番目の
曜日であり、十三番目の月だった
のかもしれない。

今はもう、痛みは感じない。そこ
にはひと粒の涙も、ひとかけらの
悲しみ宿っていない。あのひとの
記憶は愛よりも優しく、水よりも
透明な結晶となって、わたしの心
の海に沈んでいる。

この十二年のあいだに、わたしは
いくつかの恋をした。

出会いがあって、相手を求め、求
められ、愛しいと感じ、結ばれた。
二十七の時には、結婚もした。
不幸にも、夫に好きな人ができ
てしまったため、その結婚はた
った二年で壊れてしまったけれ
ど、それでも二年間、わたしは
とても幸せだった。

ただ、どんなに深い幸せを感じ、
それに酔い痴れている時でも、
わたしの躰の中に一ヶ所だけ、
ぴたりと扉の閉じられた、小
部屋のような領域があった。

扉を無理矢理こじあけると、
そこには光も酸素もなく、
植物も動物も死に絶えた、
凍てついた土地がだけが
広がっている。

だからうっかりドアをあけた
人たちは、酸素と息苦しさに
身を縮め、わたしから去って
いく。離婚の本当の原因は、
もしかしたらわたしの方に
あったのかもしれない。

こんな言い方が許されるな
らば、わたしは誰かに躰を
赦(ゆる)しても、心を救
したことはなかった。




YouTube
alan / BALLAD ~名もなき恋のうた~

https://www.youtube.com/watch?v=YTuiEbkXJS0

『言葉を捨てることにより・・・』

2018年09月18日 09時30分12秒 | owarai
言葉を捨てることにより、
明瞭な答えを
得られることもある。

あなたは言葉によってこの世界を
体験している。あなたに向かって
発せられた言葉や、あなたが発した
言葉で喜んだり悲しんだり怒ったり、

ジェットコースターのように想いが
上下する毎日を過ごしているのでは
ないだろうか。

内的な言葉であっても、声に出した
言葉であっても、書いた言葉であっ
ても、あなたはつねにこの現実を
言葉によって構成した体験している
のだ。

でも、とても大切なことをひとつだ
けを覚えてほしい。それは、あなた
が本当は言葉を介さなくてもこの
世界を直接感じ取ることができる
ということを。

本当に大切なフイーリングは言葉
に置き換える必要などないという。

そう、沈黙は場を制す。

わたしは風

2018年09月18日 08時50分02秒 | owarai
わたしを束ねないで
あらせという花のように
白いネギのように
束ねないでください

わたしを止めないで
高原からきた絵葉書のように

わたしを名付けないで
娘という名 妻という名
重々しい母という名でしつけ
られた座に
座りきりにさせないでください

わたしは風
りんごの木と泉のありかを知って
いる風

わたしを区切らないで
コンマやピリオド いくつかの段落で

そしておしまいに「さよなら」が
あったりする手紙のようには
こまめにけりをつけないでください

わたしは終わりのない文章
川と同じに
はてしなく流れていく 拡がっていく
一行の詩